ありがとう
私は扉によりかかり座り込んだ。
助かったのだ。
開放された恐怖感から私の目から涙が零れ落ちた。
怖かった。誰かが手を引いてくれなかったら私は殺されていた。
一体誰が私の手を引いてくれたのだろう・・・
顔をあげるとそこには女の人が一人立ってこちらを見ていた。
とても優しそうな顔。
私はその人の名前がわからない。
でもすごく懐かしい感じがする。
どこかで会った気がする。
「あなたは誰なの?」私は問いかけた。
女の人は優しく微笑むだけで何も言わない。
後ろを向くと光の中に消えていった。
私は遠ざかっていく女の人を必死追いかけた。
「待って!行かないで!あなたは誰なの?」・・・・・・
私は布団の中で目が覚めた。
そこはいつもと変わらない自分の部屋だった。
私の頬から一筋の涙が零れ落ちた。
あれは本当に夢だったのか・・・
私は自分に問いかけあの時必死に握り締めた手を見つめた。
手首にはあざ。
顔にはナイフで切った痕。
あれは夢なんかじゃない。
ふと窓の側にある写真を見た。
私は微笑んだ。そして、あの女の人が誰だったのか理解した。
「ありがとう」
私は写真に向かってお礼を言った。
そして、ベッドから起き上がりカーテンを開け日差しを浴びた。
窓の側に飾られていた写真には小さい時に亡くなってしまった母が写っていた。
どことなく母が微笑んだ気がした。 |