チートリックゲーム縦書き表示RDF


チートリックゲーム
作:木下 暈


「さあ、ゲームをしよう。」
初めに言ったのは誰だろう。



    Δ    Δ



キーンコーンカーンコーン
と、どの学校でもおなじみのこの曲。
《ウエストミンスターの鐘》が流れる。
しかし、この音がれっきとしたクラシック音楽ときづいている生徒は小数だろう。
いや、いないと思う。
期末考査3日目の最後のテストが終わりほとんどの生徒は達成感と疲労感の入り混じった顔で「終わったー」と歓声をあげているものや、まだ机に項垂れているものもいる。
そして俺はただ淡々と帰り支度をしている。
「なあなあ、須永この後暇?」
「え、あ・・・まあ、暇といったら暇、かな。」
と曖昧な返事を返す。
――――――――あー。
えーと。
・・・・・・
そう!
柘植野つげのだ!
柘植野・・・・タケノリ・・・か、タケヒロ。
まあどっちでもいいか。
それにしてもクラスメイトの名前も覚えてない自分は少し薄情なのか。冷血なやつか。
これはいかん、もっと社交的にいかねば。
「じゃあさ、ちょっと遊びにいかね?このまえおもしろそうな所発見したんだよ。」
「何故、俺に?」
そもそも、柘植野とは今ままで会話らしい会話をした記憶がない。そしてこいつは、髪を染めて耳にピアスをあけている癖に授業は割と真面目に受けていて掃除当番もちゃんとする。こんな中途半端は不良は嫌いだ。
だからといって、素行を悪くしろといっているわけではない。いやそういっているのと一緒か。
「いくら期末がおわったていったって皆受験生だろ、声かけても皆、勉強、勉強ってさー」
「俺だって受験生だ。」
「え?おまえ推薦とれそうなんだろ?」
・・・・なんで知ってんだよ。
「・・・俺のことはともかく、お前はいいのかよ、勉強しなくて。」
「あー俺の家は酒屋だから卒業したらそこ継ぐの。」
「あっそ・・・」
「そう、だからもう勉強なんてする気ないし、とにかく暇なんだよ。なあ、いいだろ?いこーぜ。」
あーめんどくせ。
「じゃあ・・・クイズをだそう。それに答えられたらいいぜ。」
「よし、いいだろう受けてたとう。」
「では問題、全国の学生が最低1日1回は聞いている音楽は?」
「ふっ、《ウエストミンスターの鐘》だろ?」
柘植野は勝ち誇った笑みを浮かべて答える。
「なんで知ってんだよ・・・」
さすがに驚いた。
いかにも最近のJ−ポップしか聞かないようなやつがこの曲をしっているとは。
「いやー、運がよかった。昨日偶然に妹からも同じ質問されたよ。たぶん学校で先生にでもきいたんだろうけどさ。昨日散々バカにされたからしっかり記憶に残ってたぜ。」
くっ、柘植野 妹よけいなことを。
「さあ、約束だ行こうか。そういえばお前、自転車通学?」
「ああ。」
「OK、少し森みたいな所にあるけど此処から30分ぐらいで着くから安心しな。」
「遠いよ・・・」
その呟きは無視され柘植野は自分の鞄を持ち教室を出ようとする。
「早く来い」
と促される。
はぁー、面倒だ。
まあ、いいか・・・・暇だし。
そうして二人は学校を出て自転車をこいで目的地に向かった。


    Δ    Δ



チリンッチリンッ
柘植野が前を歩いていた学生達にベルを鳴らす。
歩きながら参考書を眺めていた学生はあわてて道をあける。
「まったく、どいつもこいつも勉強、勉強。せめて家に帰ってからしろってはんしだよ。なあ?」
「・・・時間を有効活用していていいじゃないか。」
「高校生活最後の年なんだからもっと青春を謳歌しようとは思わないもんかねー。」
「キャンパスライフは楽しいらしいよ。」
「くっ。」
「ああ、俺らがキャンパスライフを楽しんでいる頃君は家で酒をうっているのか。」
俺は悪戯に微笑み言った。
「けっ」
柘植野は悪態をついた。
そのあとは二人とも無言で走り続けた。
ほどなくてし。
街は遠くなりあたりにはぽつぽつと民家がある。
「此処からは歩きだ。」
柘植野はそう言って公園に自転車を止め歩き出した。
歩き出して3分のたたないうちに林というか森というかそんな感じの所にやってきた。
その中に依然として構えられている建物、というかただの箱みたいな、箱とよぶには大きすぎるような建物が建っていた。
その建物はグレー色の立方体で窓らしきものは見受けられない。
ただ橋のほうにポツっと丸い模様がある。
近づくたびにその模様がドアノブだということが分かった。
遠目からではドアがあることなどまったく気付かなかった。
「これ、何?」
俺は柘植野に問いかける。
「いや、ネットサーフィンしているうちに変なページに飛んでそのページは最初は真っ黒で何もなかったけどいきなり文字が浮かび上がってきたんだ。」
訥々と言葉を紡ぎだす。
「《CHEATRICK GAME》って文字が浮かび上がってきた。興味本位でそのページほみていたら《開催場所》なんて項目があってクリックしたらここら辺の地図がでてきてこの前いってきたんだ。が、こんな所ひとりで入れるか?」
そんなこと聞かれても困る・・・。
「えー、つまり俺をサクリファイスに?」
「・・・どーいう意味?」
「・・・生贄」
「そんな残酷なこというなって。それにどっちかっていうと生贄っていうより道ずれじゃね?」
「まあ、そうだな。道ずれだ。」
それにしても。
チートリックゲーム。
・・・・チート・・・・トリック・・・ゲーム。
・・欺き・・巧妙な・・・遊び。
か。
なんなんだろうね。
そうこうしているうちに柘植野まドアノブに手をかけ扉を開いた。
「早く来い。」
「へいへい」
危うい匂いがするなぁ。



    Δ    Δ



中に入る。
部屋の中は何の装飾も、何の模様もなくグレーに統一され、部屋の真ん中にはポツンと突き出ている机らしきものがある。
それは四角柱の形で縦横は1メートルぐらいで、高さも焼くメートルと見受けれる。
俺と柘植野は暫く入り口につったって呆然としていた。
〔どうぞ、中にお入りください。〕
どこからともなく無機質な女性の声が聞こえてきた。
「な、なんだっ?」
柘植野がたじろぐ。
〔早くしてください。〕
声は無機質でもいやに抑揚のある口調で催促された。
「・・・・・」
「・・・・・」
二人は無言で指示に従う。
〔それでは、そのボックスに向かい合って立ってください。〕
またも無言で指示に従う。
よく部屋を見渡してみると前後左右、さらに右斜め前、左斜め前、右斜め後ろ、左斜め後ろ。計八つの監視カメラがあることに気付いた。
監視されている?
「あの・・・此処はなんですか?」
柘植野が勇気を振り絞ったように問いかけた。
〔何も知らず此処にきたんですか?そんなはずはありません。あのホームページをみたのでしょう?其処に一通り説明などは書いてあったと思いますが・・・。まさか地図だけコピーして興味本位できたんではないですよね?〕
「・・・・・」
柘植野は無言で佇んでいる。
どうやら図星のようだ。
〔チッ〕
・・・・・?
あれ?
今なんか舌打ちしなかった?
無機質な声でやられると本当に怖いんですけど。
〔あー、では簡単に説明します。〕
急に適当な口調になった。
〔あーやっぱ面倒だな・・・まあとりあえずこのゲーム・・・・の説明だけします。〕
「このゲーム?」
〔ええ、まだまだたくさんのゲームがありますけど此処では一つのゲームしかできませんから。〕
「ここはなんだ、ゲーセンみたいなもん?」
柘植野はもう緊張した様子がなく気軽に話しかける。
〔・・・ええ、まあ〕
ゲームか・・・まあ名前からしてなんとなく予想はしていたけど・・こんな何の道具もない所でゲームができるのか?あるのは変な箱だけだ。そしてなんだあのカメラの数は、どこかで監視している?
〔それでは、説明を開始します。〕
そういって彼女?(とりあえずそう定義しておこう)は話しだした。
〔まず、これぐらいは知っていると思いますがこのゲームの名前はチートリックゲームです。まあ、名前はどうでもいいとしてボックスを見てください。〕
二人は何もないボックスへ目を移す。
数秒凝視していると機械的な音を立ててボックスのふたがあきウィーーンという音とともに何かがあがってきた。
「――――っ!」
「・・・・・・!」
俺と柘植野は出てきたものを見て息を呑んだ。
「えっと、・・これ本物?」
〔ええ。〕
出てきた物は二丁の拳銃、これは・・・・ベレッタ9000Sか?
〔それではゲームを開始します。〕
・・・・・
暫しの沈黙。
「えっ?ちょ、ちょっとまてよ。まだなんにも聞いてねーぞ。なにをすればいんだ?おい、ルール説明はどうした!」
〔喚くなガキ!〕
「・・・・はい、すいません。」
キレた。
柘植野は思わず縮こまる。
〔・・・・コホンッ〕
取り繕うように咳払いをし、また話し始めた。
〔まあ、とりあえずチートリックゲームを始めます。説明はやりながらしたいとおもいます。〕
さっきとは違い落ち着いた口調で話し始めた。
〔プレイヤーAとプレイヤーBを決めます。ぷれいやーA は銃を持つことができます。プレイヤーBは銃を持てません。〕
「えっ・・?じゃあなんで二丁?」
〔・・・・〕
まるで睨まれているような無言が帰ってきた。
「はい・・・すいません。もうなにもいいません。」
まったく柘植野は学習能力がない。
〔では、なんでもいいですからプレーヤーAとプレイヤーBを決めてください。〕
「えー、じゃあジャンケンでいいかい?」
俺がジャンケンを提案。
「まて、無駄な争いを起こす前に話し合おうじゃないか。お前はAとBどっちがいいんだ?」
「・・・・じゃあAで。」
「俺もAだ。・・・さてジャンケンをするか。」
・・・・・ちょっとむかついた。
「「サイショハグージャンケンポンッ」」
とお馴染みの掛け声をかけあいジャンケンを遂行した。
俺グー、柘植野チョキ。
俺の勝利。
「じゃあ、おれがAで。」
「くっ・・。」
柘植野は本当に悔しがっている。そんあに銃に触りたかったのだろうか。
「決まりました。」
俺は部屋の何処ともなく声をかける。
〔わかりました、ではこれからルール・・・をいいます。〕
・・・説明とルールは違うのか?
柘植野も何かいいたげな顔をしていたがさすがに学習したのかだまっていた。
〔まずこれからいうルールはすべて本当です。では、説明しますそのボックスの上にある拳銃二丁は本物です。ですが弾が入っているのは二丁のうちの一丁だけです。入っている弾は一発だけです。〕
一旦言葉を切り、息を吸う声が聞こえた。
〔これからは簡単です。プレイヤーAが二丁の拳銃のうちから一つを選んでプレイヤーBに向けて拳銃を構えます。一度選んだ拳銃は変えられません。そしてプレイヤーAは引き金を引きます。もし弾が入っていれば・・・バーーンプレイヤーBは死にます。〕
「――――――っ、な、ちょっとまてよ死ぬってなんだよ、これはゲームなんだろ、おい!」
これはさすがに柘植野を責められない。
俺だってプレイヤーBだったなら講義の声を上げただろう。
〔・・・とりあえず最後まで聞いてください。〕
「・・・」
彼女も、もう怒り出すことなく冷静に嗜める。
柘植野もとりあえずは黙る。
〔で、弾が入っていた場合はプレイヤーBはもちろん死にます。まあ、ものすごく運がよければ助かるかもしれませんが、あまり期待しないように。そして、プレイヤーAは引き金を引いた瞬間警察に連絡され、すぐに現行犯で逮捕されます。まあ、あたりまえですね、なにせ人を殺したんですから。〕
なんだこのゲームは死ぬだの殺すだの、・・・なんなんだ本気で言っているのか?
〔まあ、安心してください。これは最愛・・・ではなく最悪のパターンですから。〕
なにやらいい含みだ。
〔そして、銃に弾が入ってなかった場合はプレイヤーBの勝利です。もちろん死にません。そしてプレイヤーAは負けです。〕
「えーっと・・・・――――」
〔まだ続きがあります。〕
柘植野が何やら口を挟む前に言葉を紡ぐ。
〔会話を続けている間はプレイヤーAはトリガーを引いてはいけません。降参は両プレイヤーいつ、どんなときでも自由です。そして最後に、勝者には賞金100万円か豪華商品が送られます。これで、ルール説明を、終わります。〕
「ひゃ、百万?え?マジで?こんなゲームの賞金が百万?」
柘植野は百万と聞いて歓喜の声を上げる。
〔こんな・・・・ゲームだって?〕
このゲームをこんな呼ばわりされたのが気に触ったのかいかにも不機嫌な声で聞いてくる。
「いえ、こんなすばらしいゲームはありません!」
〔これより一切の質問を受け付けません。何も干渉しません。これから私はまったく関係ありません。以上。〕
おいおい・・・さっきまで講義の声をあげまくっていたくせに。それに死ぬかもしれないんだぞ?まあ・・・俺次第だけどね。
それにしても・・何やらルールが少し複雑だな。
ルールを整理しよう。
まず、プレイヤーAの勝利条件が相手の降参だけっていうのはどうかと思う。
そのかわりプレイヤーBは死ぬかもしれない。
プレイヤーBの勝利条件は同じく相手の降参か、プレイヤーAがトリガーを引いて弾が入っていなかった場合。と。
〔あ・・・言い忘れてました、敗者には厳しいペナルティがあります。〕
「どんなペナルティーですか?」
俺は問いかけてみた。ていうかいきなり干渉?!
〔・・・・・・・・・・ふふふっ〕
・・・・・・・
コエー
いったいどんな酷いことが?
降参させないためか?
〔さて、それでは始めましょうか。《CHEATRICK GAME》を。〕
もう始まっているんじゃなかったっけ?ま、いいか。
その声とともにゲーム開始のBGMが流れ出した。
〔では、プレイヤーAは二丁の拳銃のうちから一つを選んで手に取ってください。〕
俺は少し考えた後、いくら考えても埒があかないと思い適当に右側の銃・・ベレッタ9000Sを手に取った。
その直後、もう一つのベレッタ9000Sは機械的な音とともにボックスの中に沈んでいった。
〔それでは、プレイヤーBに銃口を向けてください。〕
言われたとうりにする。
ベレッタ9000Sのずっしりとした重みが腕にかかる。たしか750gぐらいだったはずだ。
柘植野は銃口を向けられて少しびくっと震える。
まあ、たしかに怖いだろうな。
〔では、どうぞ、あとはご自由に。〕
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
5分ぐらいの沈黙が続いた。
「話すことはもうないようだね。」
俺は柘植野に語りかける。
切なく、悲しげに。
「だから、さっさと終わらせようか。」
俺は改めて銃を構えなおしセイフティをはずすしぐさをする。
「・・・え?ちょ、まてってなに安全装置はずしてんだよ、暴発でもしたらどうすんだ。」
柘植野はあわてて俺を説得する。
「・・・?何いってんだ。これは、そーいう、ゲーム、だろ?」
俺は残酷に微笑み語る。
「いや、まて、死ぬかもしれないんだぞ。それにお前だって人殺しになる。・・・・そうだ話し合っているうちは打てないんだろ?とりあえずもう少し話し合おうぜ。な?」
すいさっきまで百万ときいて興奮していたが、いざ現実に死が迫っているとこうもあわてるものか。
「いいじゃねえか。人殺し?結構、結構、一回殺ってみたかったんだよね。」
俺はシニカルに微笑む。
「―――――っ。ま、まてって。」
俺のいきなりの変貌振りに驚きを隠せない様だ。
いいかげんきづけよな。
こーいうゲームなんだ。
自分をいつわり、相手を騙し、欺く。
引き金を引くつもりは最初から、ない。
なぜって?そりゃこの年で前科もちなんていやだぜ。それにぺナルティてのも気になる。
プレイヤーAの勝利は相手の降参しかない。
だから長期戦は危険だ。俺が打つつもりのないのを気付かれるかもしれない。
そして降参しろ。とは言えない。これも同じ理由で。
「さあ、もう打つぜ?大丈夫、大丈夫、人はいずれ死ぬんだし。な?」
「ちょ、おまえキャラ変わりすぎだぞ。とりあえずちょっとまてって。」
「お互いにメリット、デメリットがある。考えても見ろよ勝てば百万だぜ?覚悟・・・・決めようや。」
「くっ・・・・」
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
くっ、どうする?沈黙状態に入った。
会話をしなければ打たれることを忘れたのかあいつは?
いや、探っている?本当に俺に打つ気があるのかどうかを。
だとしたらやばいな。何か行動を起こさなければ。
「・・・じゃあな。」
銃を握っていないほうの手でスライドを引く。
これで。
あとはトリガーを引けば弾は発射される。
「・・・・・・・・」
柘植野は何も言わずじっとこちらを見つめている。
探って・・・いるか?
トリガーに指を触れる。
ビクッと柘植野は一瞬震えたが何も言わない。
・・・・・
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・くそっ
「・・・・・・・・・・」
柘植野は無言でニヒルに微笑む。
「おいおい、どうしたんだい撃ってもいいんだよ?打たないのこっちは覚悟をきめたっていうのにさ。あれーもしかして、最初からうつ気、ない?」
さっきの怯えた様子とは一変して余裕に挑発してくる。
「ああ、ちょっと殺した後の逃走ルートと、弾が入っていなかった場合の百万の使い道を考えてたら忘れてた。いつのまに黙ってたんだ?」
弱みを見せず、虚勢を張る。
「はっ、警察権力を甘く見るなよ人一人殺しといて逃走なんて破天荒なことできるとおもっているのか?」
ただの虚勢にくいついてきた。
「はっ、俺をただの高校生だと思うなよ。裏社会には様々なつてがあるんだぜ。」
「そんなはったりが通用するとも思っているのか?」
「はったり?おいおい揣摩憶測はやめようぜ。これがはったりだって確固たる証拠でもあるのかい?」
「・・・ふん、それが本当だったとしても、ルール説明であっただろ。敗者にはペナルティがあるし、すぐに警察に連絡される。」
はったりが少し利いたのか柘植野の表情に余裕が少し消えたように思う。
「・・・・警察を呼べると思うか?こんな怪しい場所でこんな銃なんかも使って妙なことをしているんだぜ。このゲームの主催者だって警察の介入は望んでないはずだ。」
「・・・・・・・」
柘植野は考え込むようなしぐさをする。
「それに警察に・・・いや人目につかないようにこんな解かりにくい場所に会場があるんだろう?そして外見は粗末だが中身は結構手の込んだ作りになっていたり、監視カメラを8台も仕掛けたりしている。結構金かけてんじゃない?それを一回使ったきりで警察に差し押さえられることを自らしないとは思うけどなあ?」
「おい・・・どうなんだ?」
柘植野は俺にではなく1台の監視カメラに向かって叫んだ。
〔・・・・・・〕
が返事は返ってこない。
「くそっ。」
さて、どうする。
「おいっ!」
柘植野が再び、今度は怒鳴る様に問う。
〔・・・・ゲーム中は一切干渉いたしません。あしからず。〕
「ちっ」
柘植野は舌打ちをした後俺を睨みつける。
その瞳には迷いが出ていた。
今しがたまでは俺は絶対にトリガーを引くつもりはないと思い余裕の態度をとっていたが、はっりがきいたのか、柘植野はさっきまでの余裕をなくし険しい表情で俺を睨んでいた。
しかし、会話を続ける気はないらしい。
覚悟を決めたのか?
いや、そんな簡単に危険な賭けをするとは思えない。とするとやはり俺が撃つつもりのないことを見抜いているのか。
はたまた、やはり覚悟を決めてこの銃に弾が入ってないことに賭けたのか。どちらにしてもこっちが不利だ。
・・・・・
・・・・・ 
・・・・・ 
・・・・・
沈黙が続く。
ふと思った。
時間制限はないのか?
会話がなくて銃を撃って良い状態になっても、必ず撃たなければならないというルールはなかったはずだ。
とういうことは、ずっと沈黙を保っていればどうなる?
何秒も、何分も、何時間も。
それでどちらかが疲れて降参する。
・・・まさかそんなゲームではないだろう。
よし。
「すいません、干渉はしないいっていましたが質問したいと思います。時間制限は・・・・ないんですか?」
意を決して訊いて見た。
〔・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ?ぁ、はぃ。〕
かなりか細く、耳を澄まして聞いていないと聞こえないような微かな声がスピーカーから聞こえた。
柘植野は気付いていないようだ。真剣な、険しい目つきでこっちを睨んでいる。
学校での飄々とした態度とは大違いだ。
金はこんなにも人を変えるか。まあ・・・皆こんなもんだろ、命もかかってるしな、一応。
〔・・・・えー、前言撤回はあまり好きではありませんが、前言撤回して干渉させてもらいます。ただいまプレイヤーA様よりご指摘頂いた様に時間制限がについて話していませんでしたね。それだと勝負が長引くと思いますので今から1時間。制限時間は1時間にしたいとおもいます。そして終了1分前になると《会話を続けなければトリガーを引けない》というプレイヤーAのルールはなくなります。会話が続いていようがなんであろうがご自由に発砲してください。そして、もし決着がつかない場合は引き分け。もちろん商品、賞金はなし。あ、きついペナルティはありますよ。・・・・・フフッ〕
最後に奇妙な、無機質な笑い声を最後につけたしルールの説明が終わった。
「ちっ、なんだよ俺のときは無視したくせによ。」
柘植野はそう悪態をついた。ルールが変更されたこととり自分の時無視されたのが癇に障ったらしい。
それにしてもさっきのやり取りが気になる。
スピーカーの向こう側にまだ人がいるのか。
このゲームの主催者だろうか。どっちにしろ此処のイニシアチブはあっちにある。どうしようもできない。
「さて、時間制限があと1時間だとさ。死ぬかもしれないとしても長く生きたいだろう?よし、最後の1分にトリガーを引くことにした。まあ弾が入ってないかもしれないけどさこういう場合は入ってるもんだろ?(どんな理屈だよ。自分につっこみを淹れる)残り1時間かもしれない余生を楽しみな。」
なんとか、時間を稼げたか。
「うまいこと言って時間を稼いだな。」
ばれてた。
慌てるな、騙せ、欺け、演じろ。
「・・・・・・・・・」
俺は無言で柘植野を見つめる。
冷静な目で、冷たい目で、相手を悲哀するような目で。覚悟を決めた目で。哀れむような目で。みつめる。
「うっ・・・・・・・」
その表情に柘植野は少したじろいだ。



    Δ    Δ



ルール変更から50分が、会話がなく沈黙の50分があっというまに通過した。
先に口を開いたのはプレイヤーA、俺だった。
「おいおい、あと10分だぜ、いいのかい?そんな余生の送りかたで。そんな険しい目で、もう秋も終わりだっていうのにそんなに汗かいちゃってさ。」
冷たい声で俺は言い放つ。
「ふん、ど、どうせ撃つつもりなんてないんだろ。そうせタイムアップ狙いだろ?それに俺が勝つにはおまえが降参するか、おまえが引き金を引くかしかないんだ。」
どもりながら、虚勢を張ってみせているが、じっさいは不安なんだろう。
7割、俺が本当に撃つと思っている。かな。
このままいけば・・・勝てるかな。たぶん。
引き金は、絶対に、引かない。
なぜって?人を殺しちゃあ、いけねーよ。うん。
最後に畳み掛けるとしますかな。
「タイムアップ狙いだって?はっ、やだよぺナルティ受けるのは。なんか、怖そうだし。」
「ふん、人を殺そうとしてるやつの台詞かよ。」
「殺してしまったら警察へ、しかし、ペナルティは何されるかわからない。だから、怖いんだよ。ペナルティはお前もだぞ。引き分けなら。まあ、死んでちゃあ、受けれないけどね。」
シニカルに微笑み残酷な表情を浮かべて言った。
「弾が入っていなきゃ、俺の・・・勝ちだ。」
「ほう、覚悟を決めたか。よしよし。時間は残り7分、もう思い残すことはないか?遺言ならきくぜ?」
「・・・・・・・・・」
・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
残り2分。
やばい、このままだと引き分けだ。
本当にあいつは覚悟を決めたのか?あの真剣な目を見る限り本当のようなきがしてきた。
だとしたら、やばいな。
もう撃っちゃう?
・・・・冗談じゃねえよ。この若さで犯罪者にはなりたくないし。
でも・・なんか、おかしいいな。
プレイヤーAに負けはないんじゃない?このままなにもしなければ時間制限が来て引き分けだしプレイヤーB自分から勝利をとれない。
でも、それはプレイヤーAも同じだ。自分から勝利をとることはできない。
これは、罠なんじゃないか?
これだと必ず引き分けになる。
そしてペナルティといって莫大な金額を請求されたり、海外に売り飛ばされるとか・・・・
段々怪しくなってきたな。・・・いや元から怪しいか。
〔残り1分です。〕
無機質なアナウンスが流れた。
これで会話が続いていても自由にトリガーが引けるというわけだ。
10秒

20秒

30秒

賭けに、出よう。
スッと今までだらしなく構えていた銃を真っ直ぐに額に照準を合わせる。
ビクッと柘植野は震える。
「ちょ、ちょっとまてって、撃つつもりなんかないんだろ?よし、降参してくれたら半分の50万やるから。なあ?」
「・・・・・・」
柘植野は震える声で説得を試みるが俺は無言で睨みつける。
40秒

トリガーに指をかける。
「ひっ」
悲痛の悲鳴を上げる。
「ヒヒッ」
残酷に、冷酷に、楽しそうに、相手を偽り、自分をも偽り笑みを、浮かべる。
殺人鬼の、笑みを。
50秒

「じゃあな。」
55秒

「まて、わ、わかった70万だ。7割をやるから。な?」
「・・・・」
こいつは、自分が降参すると言う選択肢はないのか?
困るなあ。
57秒
3秒余裕を持って指に力を入れる。
その些細な動きを見取って柘植野は叫ぶ。
「まて、わ、わかった。こうさ―――――――」
「BAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANNN!」
叫び終わる前にけたましい音が響き渡った。
柘植野は仰向けに倒れる。
・・・・・・・
・・・・・・・
数秒の沈黙。
「俺の勝ち?」
〔・・・・・・・・えぇ。プレイヤーBの降参によりプレイヤーAの勝利です。〕


    Δ    Δ


銃をボックスの上に置く。
すると、また機械的な音を発しながら銃は中に吸い込まれていく。
柘植野は・・・・。
泡を吹いて気絶している。
発砲音を口でいったら本当に撃ったと思って倒れやがった。
まったく度胸のないやつだ。まあ・・・・普通の反応かな?
まあ別に降参といいかけた所で止めてもよかったが、前もって決めてたことだから一応言ってみた。
とりあえず、勝ててよかった。
〔では、勝者のプレイヤーAには豪華商品の贈呈です。〕
そういい終わるとともに今度は上からなにやら縦1メートル横2メートルぐらいの台が降りてきた。
そこには大小中3つの袋に包まれた何かが横たわっている。
〔ではこの3つの中から1つお選びください。〕
「ちなみに中身は?」
〔お教えできません。〕
「ですよねー」
だめもとで聞いたが、やっぱりだめだった。
「じゃあ、これで。」
迷いなく一番大きな袋を選んだ。
〔・・・・・・・・・よくばり〕
「うるせ。」
なんだって大きいほうがいいんだ。うん。
「あーこいつはどうすれば?」
といって柘植野を指差す。
〔ほっといてください。そのうちおきあがるでしょう。〕
「あの、ペナルティっていうのは?」
柘植野のことを少しは心配して聞いてみた。
〔ペナルティ?そんなものはありませんよ。最初にいったでしょう私は干渉しませんって。〕
「・・・・思いっきりしてたじゃん。」
〔あれはですね。ただのひとりごと・・・・・ですよ〕
おちょくるような口調でいった。
「・・・・さいですか」
俺は半ばあきれるように言った。
そしてふと思いつき訪ねた。
「じゃあ・・制限時間っていうのは?」
〔もちろん、そんなルールはありません。最初から最後まで無制限です。〕
「最後の1分のルールっていうのは?」
〔もちろんありませんよ。出まかせです。〕
「途中、だれかと話しているようなきがしたんですが。」
〔ああ、まああれは芝居じゃありませんよ。本当に・・・・おっと、企業秘密です。〕
「・・・・他にもいろいろ疑問はありますが、あまり首をつっこみたくないのでこれで帰ります。」
〔ご利用ありがとうございました。またのご利用を。〕
決まり文句を聞き終える前に扉を開け外に出る。
「ああ、疲れた」
しかし心は高揚感に満たされていた。
こんな荒唐無稽な体験ができたことに。
「だけど、もうしたくねーや」
心を躍らせながら自転車を止めてあるところまでいき一人で帰った。
細長い物体を怪しげに担いで。



    Δ    Δ


「おっ、お帰り。おそかっな。まさか夜遊びでも?」
「まだ6時だ。」
帰宅同時に耳に飛び込んできたのはそんな言葉だった。
「ん?なんだいその長細い包みは?」
「・・・あれだよ、あれ」
返答に困りつい曖昧な返答に。
「あれ〜?あれってなんだよ?」
しつこく聞いてくる。
「あれっていえばあれだよ・・・・・全ての万物に共通する代名詞だよ」
そういって素早く自室まで走る。
「あっ―――」
ガチャッ
自室に立てこもり包みを解き箱からだす。
・・・・
・・・・中を見てしばらく固まっていた。
「いや・・・なんとなくこんな予感はしてたけどね。」
細長い箱に入っていた同じく細長い物体。
それは・・・・
「刀だとー!?」
「どうしろっていうんだこんなもん。」
恐る恐る鞘からとりだしてみる。
シャッという音とともに出てきた白銀色の刃物。
本物だった。
「他の箱の中身はなんだったんだろう?まあ、なんとなく予想はつくけど。それより柘植野は大丈夫だろうか?」
様々な疑問を残しながら今日という1日は終わって行った。


最後まで読んでいただきありがとうございます。













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう