僕と皆と肝試し(後編)です。
04 旧校舎
僕達が向かうのは、旧校舎。ヒビとかツタとかでいい雰囲気ですね。
あははは…はぁ…うー、本当は僕も、得意ではないんですよ…。
「すすすすす素敵ねっ!」
彩芽さん、無理はしない方が…
「だよねっ!ホラ、早くいこ?」
「楽しみだなぁ」
ほら、二人がノリ気になっちゃったじゃないですか。ただでさえノリノリだったのに…。
「ははははは」
時谷君…貴方何がしたかったんですか…?怖いなら来るなよ。人の事は言えないけど…
そんなこんなで…御入場〜。
たよれるのは懐中電灯の光のみ。暗いな…怖い…
「あ、ゴキブリだ」
「キャァァァァッ!!!」
「イヤァァァァァッ!!!」
やっぱり女の子なんですね。でも真夜さんが切れると怖いので…
「真夜さん、僕の眼を見て…」
「眼…?」
「ええ…」
ふぅ。彩芽さんはすすり泣くだけなんで無害ですね。他の二人はおろおろしてるんで、僕にとっては、ですけど。
真夜さんはかかりやすいので楽です。これが兄弟だと、心っっっ底苦労するんですよね。
今、僕達が居るのは2階の西側。東側の昇降口から入ったので、2階に上がって直ぐの所です。
今の所何も出て来てないです。助かります。
「…3階。何も無かったね、残念だけど。帰ろっか?」
真夜さんの言う通り、本当に何も無かったです。色んな噂が立っていたんですけどね。
…良かったです。
「じゃあ…」
―――ナ―――
「?誰か、何か言いました?」
僕の言葉に被されました。
皆首を振ります。
―――ス…ナ…―――
………。これは、何か、聞こえましたね…砂?
多種多様の表情ですね。
真夜さんは少し緊張気味、進君はちょっと驚いてるようです。彩芽さんは真夜さんにしがみつき、青い顔。時谷く…うわぁ、真っっっ青。僕? もう落ちそうです。
―――カ……スナ……カエ…ス……ナ…―――
…。
―――ムキズデ…カエスナ…!―――
…え、と。
ずどん!
「うわ!?」
「きゃっ!?」
「ひっ!?」
「あぇ」
「…っ!!」
ちなみに進君、真夜さん、彩芽さん、僕、時谷君です。
これは…地震、ですかね?
―――死ヲ!我ラノ場所ヲ汚スモノニ死ヲ!―――
いきなり滑舌に…
「俺の勘って、よくあたるんだ」
時谷君、こんな時に何を?
「…嫌な予感がしてた。だから来てみたんだけど…案の定、こういう事だったか…」
…今は、
「それどころじゃありません。逃げますよ」
今の僕はやけに冷静ですよ。珍しい。生き延びなきゃいけない。
皆で駆けだす。
「いせの、お前、もっと速く走れんだろ!」
「一人だけ助かるのは嫌ですから!」
そう、一人で助かっても意味がないんです。一番、助かりそうな…よし。
―――一人残ラズ死ヲ―――
「五月蝿いよぉっ!皆で助かるんだから!」
「まったくです。真夜さん、僕の眼をみて」
「ふ…ぇ?」
「彩芽さん連れて逃げて」
「私…そんな事…」
「真夜さん、君だから出来る。信じて」
「あい」
真夜さんは彩芽さんを軽く担ぎ、駆けだした。
「進君は、後ろにぴったりくっついて逃げて下さい」
「…うん」
た、と進君も駆けだす。
ガラガラ、と建物が崩れだす。
「真夜さん!」
「平気」
ズガァン!
真夜さんは彩芽さんを少しずらし、キックで鉄骨を吹っ飛ばした。…真夜さんは本当に怒らせない方がいいですね。今度からはマヨ煎餅、隠れて捨てたりしません。
進君は真夜さんがあけた道を駆ける。そう、これでいい。
「っく…」
流石にこれだけの量、避けるのって難しいな…
ガラ。
「!危ねぇ!」
「え!?」
時谷君が、僕を突き飛ばした。時谷君が、鉄骨の下敷きに…?僕を、庇って?
ずっと目立たない僕を庇って?
僕なんかより、ずっと…必要とされているはずの時谷君。
……そんな人は、死んじゃいけない。少なくとも、泣いてくれる人が居る人。
明るくて、目立ってて、少し馬鹿だけど、愛されてる時谷君。…そういや彼が苛めに参加してるところなんて無かったな。優しい時谷君。
駄目だ。地味な行動でも、命をかけて守ろうとしてくれた事には変わらない。…死んで欲しくない理由も増えた。
それに…僕は見た事があるじゃないか。いじめを止めようとして。それには彼は非力すぎて。自分の弱さに、泣いているところを。
「…君に時間は流れないっ!」
ピタリ、と鉄骨が止まった。
「は?え?いやいや空中停止?」
「紅牙君!そんな事今は気にしない!」
「え?いや、でもよ…」
「いいから!」
一番驚いているのは多分僕ですから。まさか非生物にも効くとは…。末恐ろしや、催眠術。
それより、まずは…逃げなきゃ。
「生きて…るね…」
「生きてる…みたいだね…」
「生…きてるのね…」
「生きて…ます、よ…」
「生きて…るんだな…」
命がけで生き延びた夜。恐怖に支配されかけた夜。満天の星空が美しい夜。
………仲間が一人、増えた夜。 |