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掌編小説集7 (301話~350話)

木目

作者: 蹴沢缶九郎

天井の木目が人の顔に見えて仕方がない。たまに建物の窓や、ちょっとした家具のネジ等の組み合わせが顔に見えるのと同じだ。

布団に入り、約十分程、電球のぼんやりとしたオレンジ色に照らされた木目を見ながら、「あの木目ははたして男なのか、女なのか…」と、割とどうでもいい事を考える。あの力強さを放つ目は男の様な気もするが、あの口の色っぽさは女である。

自分でも呆れる事に頭を使っていると、いつしか眠気が襲い、うとうとする頭で、


「君はどっちなんだい?」


と尋ねる私に、木目は、


「女よ」


と答えた。木目は女だったのだ。


「そうか…君は女だったのか…」


答えのわかった私は、気持ちよく夢の世界へと旅立った。






「しかし、一体どこへ行ったんですかねぇ…」


部屋の住人である男が行方を絶って五日、男の部屋を、男の勤める会社の上司とアパートの大家が訪れていた。


「急に行方をくらますとは…。真面目な奴だったんですけどね…」


全く訳がわからないと、上司は頭を掻く。そんな上司を他所に、大家は天井の一点を見つめていた。


「どうかしたんですか?」


「いや、ほら、あそこの木目、いなくなったこの部屋の男に似てるなあと…。まるで誰かが寄り添ってる様な…」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短かくて簡潔なのに凄く話のツボにはまっていて良いです。文章にリズムがあるなと思いました。それと天井の木目の模様って言う着眼点も面白いです。誰でも1度位思いを馳せた事があるのでは。文句なしに…
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