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シャープペンシルを武器にする
作:Spark



第87話 ある意味でデジャヴ体験


名前を呼ばれた僕はただ今、口が半開き状態です。それもそのはず、目の前には俺が中学のとき憧れていた子が立っていたんですから。
その全てを包み込むような大きな瞳は相変わらずサイコーだった。肩まで伸びていた髪の毛はショートになっていて、少し茶色がかっている。それでもサイコーには変わりはないけど。

しかしこれまた相も変わらずのフワフワ(触ったことはないけど絶対にフワフワ)な髪ですこと。久しぶりに会っても、やはり早希ちゃんはサイコーだった。

「あぁやっぱり一条君だ」

彼女…三井 早希ちゃんは中学時代の同級生で、俺なんかには到底行けるわけのない進学校に通っている…ハズ。あっあかねの練習試合をやった所に通っているんですよ。だからとっても頭が良いんです。俺とは雲泥の差なんです。

「久しぶりだね!あれ?もしかして背、伸びた?」

「えあ、あ、うん。なんか高校に入ってから驚異の伸びを見せてくれてさぁ。ってか三井は元気だった?」

早希ちゃんなんて呼べるハズはない。そうだよ、心の中でしか呼んだことないんだよ!シャイボーイなんだよ!中学の時は「さ…」までは頑張れたけど、どうしてもその後がダメ!あの頃はあかねが羨ましかったなぁ。臆することもなく「早希ぃ!」とかって呼んでたし。

久しぶりに会った早希ちゃんは当たり前かもしれないがかなり大人っぽくなっていた。それに比べて俺なんて、さっきおじいさんに「今いくつだ?」なんて聞かれ方したし、ふぅっ童顔も良し悪しだな。

(自分で言ってちゃ世話ねぇ)

GOサイン出してもないのに出てくんな!

「うん、元気だよ。でもホントに久しぶりだね、秋月さんもあかねも元気なの?」

説明不要かと思いますが、あかねは女の子みんなに中・高問わず『あかね』と呼ばれています。男子は俺とか一郎みたいな図々しいヤツしか呼んでないけど。そういえば、俺って名前で呼ぶの多いなぁ。萌でしょ、あかねでしょ…八重子でしょ。あっ高瀬は名前で呼んでない。……ってかそれなら俺だって早希ちゃんって呼べたハズ!何してたんだよあの頃の俺は!

「あぁもう元気元気。ついでに一郎も元気だよ」

「あっ野代君?そっかぁ、なんか会いたくなっちゃったなぁ」

それって一郎に!?ダメダメ、それでなくても勘違い男なんだから!「お、俺に会いたいだってぇ!?会う、会うよ俺!」なんつって暴走しまくるって。その言葉は俺の心の中だけに留めておくから!

「宮田君にはこの前会ったんだけどね」

「あ、晃?」

「うん」

晃っていうと、そういや見ないなぁ。まぁ部活が忙しいんだろ、別段気にする必要ナシ!

でもホント久しぶりだねぇなんて言いながら信号の前でペチャクチャとお喋りを始める。通行人の妨げになっていることは承知してますが、今はそれどころではないんです!ちょっと端っこに寄るからそれでカンベンしてくださいサラリーマンの皆様!

「あれ、三井1人?」

あれれ〜と辺りを見回すが、どう考えても誰かと一緒なカンジじゃない。こんなカワイイ子がこの雨の中1人で歩いてるなんて、彼氏はどうしたんだ!えっと、ホラなんつったっけ名前…ゆ、ゆ、勇樹?違うって!

「うん1人だよ。そこの本屋さんで参考書を買おうと思って来たの」

さ、参考書でございますか。俺には全く関係ない代物だ。
早希ちゃんはアハッと信号の先にある本屋を指差す。くそっ、そのおどけた笑顔もまたサイコーだよ!もう有頂天!

「一条君も1人?」

おぎゃぁぁ!上目遣いされたら一郎じゃなくても勘違いしそぉ!ってか中学の頃は一緒に帰っただけで勘違いをしてた。俺って成長してねぇ!

「そうそう、クリーニング屋に行ってた。学生服汚れちゃってさ」

「あぁこの雨だもんね」

いつまでも信号の前にいちゃアレだということで、俺達は2人仲良く歩き始める。
早希ちゃんの声、久々だけどメチャクチャカワイイ。もうカワイイしか思いつかないよこりゃ。通り過ぎる人々の視線が心地良いね。サムい目じゃなくて羨ましいって感じの目。フハハハハ頭が高いわぁ!

「あっそうだ一条君、これから用事とかある?」

フハハハハ!といつまでも笑っていたい衝動に駆られていた俺は、何の考えもなしに勢いをつけて頭を下げる。みんなが俺を見てる!今くらいしか優越感に浸れない!萌と一緒にいるときは家来くらいにしか思われてないはずだし、もうサイコー!

「こうして会うの久しぶりだし、一緒にハンバーガーでも食べていかない?」

「は、はん…?」

財布に金ねぇぇ!

どうしよ、女性に奢ってもらうわけになんていかないよ!あわわとスウェットのポケットを探るも金が入ってるわけない。仕方ない、小銭でなんとか頑張るしかないか。

「い、いいねハンバーガー…」

早希ちゃんのすがるような瞳を見て断ることが出来るか?!大丈夫だ、ハンバーガー屋の店長とはもう顔馴染みになっているに違いない。ツケは効く!……ムリっぽい。

それでも自分自身に大丈夫と言い聞かせ、二つ返事でオーケーを出すと早希ちゃんはとっても嬉しそうな表情を見せてくれた。それに伴い失神しそうな俺。

「あっじゃあちょっと待っててくれる?急いで参考書買ってくるから」

「あ〜…うん、わかった」

いっそのこと付いて行っちゃおうかなぁなんて考えたが、そこまで図々しくなれないのよね。だから大人しく本屋の入り口で待ってるわ。一応雨風は凌げるしね。

その時だった。天の裁き…いや、俺にとっては天からの恵みが落ちてきたんです。

「きゃあ!」

「ごわっふ!」

それじゃあと言った瞬間、雷がそりゃもう何か恨みでもあるの?と聞きたくなるほど光った。それに続いてゴロゴロと鳴り響く。
さっきまでの俺なら「ボケェ!」と声を張り上げているトコだったけど、今の俺はちょっと違う。歓喜の悲鳴を上げたくなった。

「あ…ご、ごめん一条君!」

「い、いや」

雷が光った瞬間、早希ちゃんが俺にしがみついてきたんですよ。もう雷ドンドン来いと思わされました。
ホントにごめんねと早希ちゃんはさっさと俺から離れると、恥ずかしいのか顔を赤らめて下を向いてしまう。うごぉぉ、マジで可愛い。

「あ、そ、それじゃあ行ってくるね。ごめんね、すぐ戻るから」

頬を赤く染めたままの早希ちゃんは慌てながらそう言うと居心地が悪そうに傘をクルクルと動かす。その仕草までがサイコー。

「いやいや、ゆっくり見てきなよ」

「うん、ありがと」

ヒャァアアア可愛いぃ!その振り向き様の笑顔は反則だよ早希ちゃぁぁん!
ウォホホと笑うしかない俺は小さく手を振りながら早希ちゃんを見送った。あの背中にどれだけ憧れたことか!

うわぁ、夢みたいなんですけど。憧れていた女の子とハンバーガーだって。しかも不可抗力とはいえ抱きつかれちゃったし。やっぱりフワフワな髪だった!
でもどうしよ、気合いが入ってんのはいいけど何を話せばいいのぉぉ!?

「あっそーだ、小銭を確かめておこう」

あんこ三姉妹は買ってしまったが……よし、100円玉がいくつか見える。

「1枚、2枚…さんま、ぼぉっ!」

誰だよ!背中がとっても痛い!息が出来ない!絶対に飛び蹴り喰らった衝撃だよこれは!
なんとか転ぶのだけは回避して、誰だコラァ!と振り返る。

「あっ…」

誰だコラァなんて叫べるか!ってかなんであかねがここに!?その前に目、目が怖いくらい据わってんだけど!

「ちょっあかねさん?!あなた随分なご挨拶じゃないのよ!」

蹴られた背中をさすりながら目が据わったままのあかねに近づく。見ると彼女の両手は買い物袋で塞がれていた。だけど必死に傘を差している。メチャクチャ器用だなキミは。
両手が使えないから足を使ったわけか。…フツーに声を掛けてよ!

「一体あんたは何をしてる?」

買い物袋が重いのか、少し息切れを起こしながらあかねはそう小さく呟いた。

「何って、クリーニング屋さんに行って来ただけよ?」

「そうじゃなくて!早希と話してたでしょ……ってか抱き合ってなかった?」

「それは雷にピカッとやられたから!」

見てたのね?まさか羨ましいのかあなた?!大丈夫、あなたも負けないくらいに美人よ!いつでも俺の胸に飛び込んでおいで!

「いや、実はそこでバッタリ会っちゃってさぁ。それでハンバーガーでもどう?なんつっ、どぎゃっ!」

気合いの入ったミドルキックが綺麗に脇腹へとめり込んだ。

「ぐぇっ…な、なんで蹴る?」

「こんなトコ萌に見られたらどうすんのさ!ちょっとは考えろ!」

バカ!とお次はローキックが飛んでくる。両手が使えないからって油断したらダメだ、むしろ危ない!

「いだだ…」

痛みに耐えかねてしゃがみ込んだ俺はゼェゼェと肩で息をするあかねを見上げる。もう何なんだよ、あかねもハンバーガー食いたいとか?
と、あかねの腕に視線が移る。……荷物、重そうだな。

「ちょっとあかね、それ片方貸して」

なんとか立ち上がり、あかねに向かって手を差し出す。背中も足も痛いけど頑張るよ俺!見た目は弱々しそうな女性を放っておけない性分なんだよねぇ。って絶対に俺より力あると思うけど。

「い、いいよ持ってくれなくて」

「いいからいいから、気にしちゃイヤよ」

どれどれと荷物を奪うように受け取るも……重い!中を覗き見るとスイカに大根、それに1.5リットルのペットボトルが4本って、いつ何時でもトレーニングだね!

「重いでしょ」

「だ、大丈夫ぅ…。俺に任せておけぇ…」

とは言ったけど、重い!もう手がプルプルし始めてきた!ぐぉぉ、あかねはどこからこれを担いで来たんだ?
落としてしまわないよう必死に袋を持ち上げている俺を見つめていたあかねは、突然キョロキョロと辺りを見回し始める。

「ど、どしたぁ…!」

必死になり過ぎてうまく声が出ない。

「まさかと思うけど、近くに萌いないよね?」

軽々ともう一つの袋を持っているあかねは警戒心を最高レベルにまで上げてそう質問してくる。

「い、いないですよぉ…。安心しておくんなましぃ…!」

俺の答えを聞いて安心したか、あかねは小さく息をつくと早希ちゃんが入って行った本屋を見つめる。
もしかしてあなたも本を買いに来た?格闘技全書みたいな題名の…いや、あかねならお料理本かな?

「あかねぇ…なんか、欲しい本でもあんのぉ…?」

「ないよ」

返事はやっ!ちょっとくらい考えてよね!

「あっ雨弱くなってきた」

もう限界とばかりに涙目になっているうちに雨が少しだけ、ほんの少しだけど止んできた。ホッと一息だね。…あ、雷来ないかなぁ。そしたらあかねに………抱きついて殴られそうだからやっぱり来ないで!
小さく呟いたあかねは傘を外して空を見上げる。

「…!」

なんかあかねさん色っぽいんだけど…って俺のバカ!今は早希ちゃんだろ、バカバカ!…でも見惚れてしまう。

俺は一体どうしちゃったんだ!と自分で自分に活を入れていると、何かに気づいたあかねが俺のそばへ寄って来た。

「また雨ヒドくなる前に早く帰った方がいいよ」

「えぇ?ダメダメェ、言ったでしょ?俺はこれから早希ちゃ…三井とハンバーガー天国に行くんだからぁ…」

「…あんた早希ちゃんって呼んでたっけ?」

お願いだからそれには触れないで!思わず口に出ちゃっただけなの!スルーでお願い!

「よ、呼んでないってぇ…」

「あっそ」

地味に冷たい!スルーしてって頼んだのは俺だけど、悲しい!

「ハンバーガーねぇ……あんたさぁ、萌に悪いとか思わないの?」

「萌にぃ?なんで?」

「なんでってあんた、萌と付き合ってんでしょ?」

「…頷かないけどいいよね?」

袋の重さにも少し慣れてきたところであかねの有り得ない発言を聞いた。絶対に首を縦に振らないよ。横に振ってもいいなら超高速で振りたい。立ちくらみを起こすくらいに振りたい。

「変な勘違いは勘弁してくれ。それに萌にはノブ君という心に決めた殿方が…」
「萌がそう言ったわけ?」

カブセて言うの上手くなったなぁ。

「好きな…だった人って聞いたわよ?」

「え?なに?」

「だから、好きだった人って…」
「それは昔の話でしょ。今はあんたが好きなんだよ」

カブせて言えるってことはちゃんと理解してたね?ってか平然とした態度で言われるとマジ怖いんですけど。

「断言すんのはいいけどさぁ。萌がそう宣言したの?してないでしょうよ?」

勝手な解釈しちゃいけないよ。あかねってよく先走りしちゃう傾向にあるからちゃんと正してあげないとね。

「確か…言った」

「…は?」

う、ウソでしょう?有り得ない、有り得ないって。萌がそんなこと言うハズないってぇ!

「ちょっとちょっとあかねさん、あなた夢物語でも見た?」

「あたしは起きてるよ?」

今じゃなくて!

「信じられない?」

「うん、全く」

マジで?みたいな顔されても困るよ!その目は絶対にウソだ、俺を騙そうとしてるね?

「…」

「…え?あかね?」

いきなり黙り込んでどうした?
お〜いと呼ぶと、無言でいたあかねは見る見るうちに青ざめた表情になっていく。この数秒間に何があったぁ?!言っておくけど俺は変なコトしてないからね!

「ど、どしたあかね?!」

「や、ヤバい…」

「何がヤバい?」

うわっやっちゃったよ〜と頭を抱え込んだあかねは慌てた様子でまたも辺りをキョロキョロし始める。
と、思ったら俺にタックルを喰らわせてきた。油断したスキをついたね?!

「どぅぇっ!」

防御をすることが出来なかった俺はスイカを落とす勢いでよろめく。
っぶなぁ!ヘタしたら大根までフッ飛んでいくとこだよ!

「いきなりどうしたぁ?!」

「全て忘れろ!」

「何を?!」

何やら一生懸命なあかねは「忘れろ!全て忘れろ!」と倒れそうな俺にローキックやらボディブローを浴びせてくる。そしてそれに耐えられる俺じゃない。

「すと、ストップあかねぇ…」

スイカ落として食えなくなるからと懇願した俺に、あかねは息を荒げて「じゃあ忘れろ!」と叫ぶ。
何の事か全く見当もつかないけど、忘れるからヤメて!

「萌にこのこと絶対に言うなよ!」

「言わない言わない!」

何を絶対に言っちゃいけないの?なんて質問は受け付けてくれそうにないね。何でもいいからとりあえず話を合わせておけ!

「わかったらさっさと帰って」

「ちょっだから、話聞いてなかった?俺はこれからハンバーガー天国へ…」
「天国にならあたしが連れて行ってやるよ!」

それどういう意味?!怖いことしか頭に浮かばないんですけどぉ!

「ハンバーガーならあたしが早希と食べに行くから!」

「なんっダメだってぇ!俺が誘われたんだからぁ!」

いいから行け!早く行け!と俺の背中を思い切り押すあかねに気迫で負けた。完全に敗北感を味わわせられたよ。言うことを聞かないとロー、ミドルときてハイを喰らいそう。

「わかっわかりましたよ!………帰るから、一つだけ俺の願いを叶えて欲しい」

「なに?」

「さ…三井にケータイ番号を教えてって言っておいて」

「ねぇ、何であたしがあんたを帰らせようとしてるかわかってる?」

わかってるつもりですが。早希ちゃんとハンバーガーを食いに行ったらダメな理由はわかったよ。萌にバレたらどうすんのってことだよね?だから涙を飲んでケータイ番号を教えてもらうだけにするって言ってるんだよ。

「わかってますよ。だからその代わりにって言ってんのぉ」

「…聞いておく」

「あっマジで?じゃあよろしくねぇ!」

イヤだなぁみたいな表情はしてたけど、了承してくれた。でももんのすごい渋々な顔だな。でも約束は果たしてね?

「あっあかね!?」

絶対だよ?絶対だからね?と強く念を押していると、またもあかねの顔が青ざめた。早希ちゃんが本屋から出てきてしまったからだね。小走りで駆けてくる早希ちゃんサイコー!

痛っ!なんか知らないけど足を踏まれた!アイコンタクトでいいから謝って!

何すんのぉ?!と視線で訴えている俺に凄まじいアイコンタクトを送ってきてくれているあかねに、早希ちゃんはそれはもう嬉しそうに走り寄って来た。

「あかね、久しぶりだね!」

キャアキャア喜ぶ早希ちゃんは戸惑うあかねの腕にしがみつき、嬉しさを大爆発させる。
出来ることなら俺にもそのような対応をしていただきたかったなぁ…。

内心、軽く失敗こいたという顔をしていたあかねだったが、本人も早希ちゃんに会うのは久しぶりらしく、すぐに笑顔になると彼女の肩に手を置いて喜びを分かち合った。

…やっぱ、どこにいても俺って通行人Aなのね。

「あっそうだ!私達これからハンバーガー食べに行くんだけど、あかねも一緒に行かない?」

「は、はん…?」

さっきの俺とまったく同じ反応だな。

「い、いいねハンバーガー…」

ある意味デジャヴだよこれ!人類ってすげぇ!

「一条君もいいよね!?」

「もうオーケー!」

両手に花とはこのことだね!
ウヒャヒャと笑いたいのを堪えるのもひと苦労だわ。こうなりゃ2人とも俺の両端においでませ!

「あっ早希!太郎なんだけど、何か用事思い出したみたいなんだ。だから女同士で食べに行こ?」

んなんてことをぉ!早希ちゃんが3人で行こうと誘ってくれたのに!

「あっそうなんだ?久しぶりだから話したいこともあったんだけど、それじゃ仕方ないね」

「あ、いや、俺は…」

行きたい、でも生きたい!
行く行くぅなんつったらあかねにアイコンタクトだけで殺られそう。だからここは大人しくあかねの言う通り帰るよ!だから絶対にケータイ番号よろしく!

「ご、ごめんねぇ三井。ハンバーガーはまた今度ってことで」

申し訳ないと買い物袋を持ったまま頭を素早く下げる。あぁ、夢もここまでか。

「ううん、気にしないで。それじゃあまた今度ね!」

「絶対また今度ね!もう絶対の絶対のぜっ、いだっ!」

「いいから行きなって!」

わかったから地味に足を踏まないで!
早希ちゃんとの別れを惜しみながらあかねに買い物袋を手渡した。津田家まで持って行こうかと提案したんだけど、キッパリ断られたんだから仕方がないよね。

「あっ三井、それじゃ」

「うん、またね」

ぐおぉぉぉ名残惜しいぃ!
バイバーイと笑顔で手を振ってくれる早希ちゃんと、(萌にバレないようにね!)とアイコンタクトを送ってくるあかねに別れを告げて歩き出した。

あ〜早希ちゃんに会えたのは嬉しい誤算だったね。あんなに大人っぽくなっちゃって、周りにいる男が黙っちゃないよあれは。俺だってあかねに出くわさなかったら黙ってなかったよ!

あぁ行きたかったぁぁぁ!












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