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シャープペンシルを武器にする
作:Spark



第71話 絶対に避けられない


「ちょっまだ始まってないんだから掴まないでぇ!」

まだ笛すら吹かれていないのに、既に萌は臨戦態勢に入っている。ってか掴まれたら逃げられないでしょうが!俺の動きを止めないで!

「はい始め!」

俺と萌が暴れているのに、ターナーはそれを無視してピィー!とうるさすぎるほどの合図で恐怖のドッジボール大会を開始させた。絶対に逃げ切れる確率ゼロ!

「おっしゃあぁ!」

まずボールを持ったのは一郎。血走った目が気持ち悪さを表しています。

「喰らえぇがんすけぇぇぇ!」

一郎のお目当ては岩ぁんでした。きっと用具室の掃除をしなかったことを恨んでんだろ。
まぁいい、俺は隅っこに隠れさせてもらう!

「ぐあぁ!」

「岩ぁぁぁん!」

初の外野行きは岩ぁんです!ってちょっと待て、そういや外野とか決めてねぇじゃんか!全員が内野っておかしいから!

「ちょっとターナー!?外野いないんですけどぉ!」

「当たれば外野になるだろ!」

「えぇ!?」

ルールわかってねぇだろアンタ!それでも体育教師か?

大声で意見を述べているとボールが足元に転がってきた。
まさか俺に拾えと?

おっしゃあぁ!

「ぐぴっ!」

勢い良くボールを掴もうとかがんだ俺は、首に重い衝撃を受けた。

「勝手に動くな!」

襟首を思い切り引っ張らないでよ!息が止まったでしょう!

「ちょっと力入れ過ぎぃ…」

ボールに近付けないっつーに!あっ蹴っちゃったよ、敵陣に飛んで行っちゃった。

「よっし!覚悟しなよ太郎!」

ボールをキャッチしたのはあかねちゃん。その目は俺をしっかり見据えて離さない。潤んだ瞳で見つめてくれるならまだしも、獲物を狩るような目つきで見てもらっても困る!ってか何で俺が標的に!?

「いくよぉ!」

「いやだ!マジでやめてぇ!」

情け容赦ない豪速球が眼前まで飛んできた。逃げて俺!

「って萌ぇぇ!」

まさかお前、敵の回し者か?がっしり掴まれたら身動き取れねぇだろが!お前も当たるよ?

「っしぇああ!」

間一髪!
ビビった萌が力任せに俺を引っ張り、ボールは遥か後ろへ。ボールには当たらなかったけど、その代わりに尻モチをついた。

「イテテ…お前なぁ」

「お前、先に当たって外野に行こうとしたろ」

「えぇぇ?何言ってんのよ?そんなわざわざケガす…」

その手があったかぁ!そうだそうだよ、一郎に頼んで軽く当ててもらったらいいんじゃね?そしたら外野でゆっくりできる。

「ヒヒヒヒ」

「今、その手があったかって思ったろ」

「ヒヒ…ま、まさか」

な、何でわかったんだ?まさか透視?

「気持ち悪い笑い方するな」

笑い方で全てわかったのかよ。どんだけ観察眼スルドイんだあんた。

「うわっ!」

いつの間にかまたもボールが敵陣に渡っていた、そしてあかねの豪速球。また俺を狙って投げたな!?

「いってぇ!」

必死にしゃがみ込んだ俺と萌は危機一髪で避けることができた。が、その後ろにいた香がグッバイすることに。

「い、一条お前避けるなよ!」

「手芸部なら片手で受けてみろってんだ!」

「ムリだよ!」

「イデッ!てめっ味方に投げんな!」

俺の怒涛の意見も聞かず、ちくしょうと呟いた香はトボトボと岩ぁんが待つ外野へと歩いて行った。

「ちょっ萌。ボール投げたいから手ぇ放してくんない?」

「…ちっ」

え、舌打ちする理由がわからない。イッ!二の腕の肉を微妙につまみやがった。

「来いや太郎!カモォン!」

「えっいや、一郎」

違う違う!相談があるんだって!だ、ダメだ、完全に目がイッてる。俺の頼みなんて聞いてくれそうにねぇ。じゃあ仕方ねぇ、あかねちゃんに…。

「来い太郎!」

あかねも気合いが入ってるね。ダメだこりゃ、頑張るしかない。

「喰らうぇぇ一郎ぉぉ!」

見事だ俺!ボールに激しい回転がかかり、誰も止めることはできそうにないよ!

「もらった!」

簡単に取らないでよあかねぇ!
俺の渾身の一投は笑顔のあかねががっしりとキャッチした。ってか大の男が投げたボールを軽く取らないで!面目丸つぶれだよ!……一郎に投げたつもりなのに、俺ってノーコンだね。

「津田パァス!」

「えっ?」

俺めがけて投げようとしていたあかねが前につんのめる。

「た、ターナー?」

大声を張り上げたのは何を隠そうターナーだった。パスをしようとしないあかねからボールを強引に奪い、目をつり上げて俺を睨んでくる。ってかどいつもこいつも俺狙いか!

「100メートル対決では卑怯な手を使ったお前に負けたが、今日はそうはいかないぞ!」

「卑怯な手ぇなんて使ってないっつーに!」

「黙れ!喰らえ一条!ミラクルボンバーシューートォォ!」

なんじゃそら。幼稚園児以下みたいなこと言ってんな。そんなヘンテコリンな名前の球なんて絶対に喰らいたくねぇ。

「甘いわぁ!」

萌にジャージを引っ張られながらも軽くキャッチすることが出来るほど、ターナーの放った球は弱々しかった。
楽勝すぎて笑いが止まらねぇ。

ってかこれに当たっておけばよかった!

「くっそぉこうなりゃヤケだ!くぅらぁうぇぇ!」

「ダメェェ!」

「えぐぅ!」

意気揚々とターナーへ豪速球を投げ返そうとしたが、八重子の仲間割れとも取れる妨害が俺を襲った。足を掛けて転ばすって、いくらターナーラブでもやっちゃいけないでしょうよ!

「はいターナー!」

転んだ俺をスルーし、彼女は転がったボールを拾うと笑顔で敵であるターナーへ投げた。

「ぐぁ!」

軽くパスしただけのつもりだった八重子は青ざめた。ってかターナー弱ぇ!

「た、ターナーごめんなさい!」

ターナーを心配し敵陣に突っ込んだ八重子はもちろんアウト。ボールももちろん敵陣へ。

「八重子ぉ、勝手なことしちゃあダメでしょうよ」

転んだせいでヒザを擦りむいてしまった俺は、萌にジャージを掴まれたまま立ち上がりホコリをほろった。

「一条がターナーに当てようとしたからでしょ!」

いや、だってターナー敵じゃん。当たり前のことして何が悪いんだよ。

「言っておくけどまたターナに当てようとしたら許さないから!」

ターナーならお前に当てられて既に外野へ行ってるわ!安心しなさい!

「いただき!」

ボールを持ったあかねは笑顔で誰に当てようか品定めをするように俺達を見据える。と、誰かに後ろから肩を叩かれた。この弱さ、萌じゃないな。

「一条!お前、前に行って注意を引きつけろ!」

振り向くと仲間の一人がそう叫んだ。ホントは背中を押したかったみたいだが、俺の後ろには萌がいたから妥協した模様です。

「うっせ!そんなこと言うならお前が前に出ろや!」

「津田の球は殺人的なんだからムリだろが!」

そんなこと言うなら俺だってムリだから!無敵じゃないんだよ僕は。むしろ弱者の部類に入るわ。

「津田ぁ!外野にパスしろぉ!」

ってかターナー、生徒より張り切り過ぎだよ。思い切り手を振るな、サムい。

「………はいパァス!」

どう見てもパスではない超豪速球が見えた。ってかこんなの正面から受ける自信ねぇよ!当たったら絶対に骨折れる!これは逃げなければ!

「ごぼっ!」

右へ逃げようと飛んだ俺は、逆に左へ逃げようとした萌にジャージを思いっ切り引っ張られた。そしてボールは必然的に俺の顔面へ。

「っぽぐ!」

先ほども述べさせていただきましたが、あかねちゃんの投げるボールは間違いなく骨が折れるほどの豪速球。それを顔面キャッチした僕が脳しんとうを起こすのは当たり前!

「た、太郎!」

倒れた俺にみんなが集まる。萌はまだジャージを掴んだまま離さないでいる。
みんなありがとう、心配してくれるってことは仲間だと思ってくれてる証拠だよね。

「太郎!バカ太郎!」

この期に及んでバカはないんじゃないの?お前が右に逃げてくれてたら…。










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