シャープペンシルを武器にする(4/104)縦書き表示RDF


シャープペンシルを武器にする
作:Spark



第4話 俺のシャーペンよ永遠に


所変わって僕は今、中庭に来ています。まだお昼時間はあと15分くらいある。
そう、ここへ来る理由はただひとつ。

俺のシャープペンシルが今、ここのどこかで深い眠りについている。

萌の奴、自分で投げておいて拾いに行かないから、仕方がないから俺が拾いに来てる……って言えないだけです、拾いに行けと言えないだけなのです。いいよ!がんばるから!

どこに落ちたかなと、がさがさ草をかき分ける。って広いよ中庭!無駄に広い!
とても15分じゃ探せないよ。あ〜あ、あれ気に入ってたんだけどな。

本当に今日は最悪だ。萌は隣りになるし、シャープペンシルは行方不明にされるし、エビフライは食べられるし、萌は隣りになるし……ホント最悪ぅ。

「あれ?一条なにしてんの?」

俺がしゃがみこんで一生懸命探していると、一条と呼び捨てにする女が現れた。振り向くのがちょっと怖いけど、あいつよりも甲高い声。
誰?と振り向くと、さっき一郎とバカ踊りをしていた高瀬がいた。しかも男連れ。

「何かあった?」

男の腕に絡みつきながら笑っている高瀬。男は照れ臭そうに俺を見ている。………別に羨ましいとか思ってないよ?魔性の女に引っかかってるから同情して見てるのさ。

「シャーペン落としたんだよ」

シャーペンとはシャープペンシルの略。って誰もそんなことを気にしてない。
萌に投げられた、なんて言ったらこいつは絶対に報告するだろう、そして俺は殴られる。わかりきっている。だから、だから敢えてあいつの名前を出さない。

「どっから落としたのさ?まさか教室?」

「…はい」

力なくそう答える俺に、バカじゃないのーと男に笑いかける高瀬さん、と一緒に微妙な笑みを浮かべる彼氏さん。どうかした?なぜあんたはチラチラと俺を睨む?

「なんで睨む?」

思わず口に出してしまいました。だって何も悪いことしていないのに睨まれる筋合いなんてない!と思ったから。

「え…べ、別に睨んでないけど」

あんたウソが下手ですなぁ、めちゃくちゃ目が泳いでますよ?なんで?なんでそうまでして隠す?男だったら「睨んで何が悪いのさ!」くらい言えない?ってあなたまで女言葉を喋られたら引いちゃうけど。

「なに?どうかした?」

高瀬が俺と彼氏を交互に見る。彼氏は、「な、なんでもない」と口をごもごもさせつつ、また俺を睨む。
ま、まさか、これって嫉妬?俺、今この人に嫉妬されてる?

「どうしたの?」

気付けよ高瀬!お前は自称「魔性の女」だろ?
お前が俺と話してるからこの男は妬いてるんだよ!そして俺は睨まれてんだよ!って睨むなら他の男と話してる高瀬を睨めよ!
そんなことできないか、惚れてる女を睨むなんて、できないよねぇ。

「へへへー」

またも口に出てしまった。しかも気持ちの悪い笑い声、最悪です。

「なんだよ?」

そうだよね、怒るよね、怒って当たり前だよね。でも、勘違いしないでいただきたい。俺はあなたに対して笑ったんじゃないの。言いたいことが言えない俺に笑ったの。

「何でもないっス。あぁそうだ!2人の時間を邪魔しちゃいけませんよねぇ!邪魔者は消えますわ〜ん!」

「え?ちょっと!私達も探してあげるよ、どんなシャープ?」

いらんお世話じゃ!そんなことしたら彼氏に睨まれるどころか、探してるフリして足踏まれたりするわ!

「いいよいいよ!こんな広いし、きっと見つからないから。時間のムダになるし」

俺は高瀬の返事を聞く前にまわれ後ろをすると、行進するようにその場を離れようとした。

「一条!」

後ろから女の声が聞こえる……聞こえない聞こえない。ここで立ち止まったら絶対に彼氏は、「こいつ、俺の恭子に気があるんじゃねぇの?」って思うに決まってる。そんなドロドロ、好奇心でも体験したくない。
俺は普通に高校生活を過ごしたいのだ。

「ちょっと待て」

彼氏が僕を呼びました。どうする?振り向く?

やめておきましょう。きっと振り向いたらこう言われるよ。「お前、俺の恭子に気があるんだろう」ってね。でもこのまま真っ直ぐ歩いて行ったらきっと彼はこう言うよ。「恭子が呼んでるのに振り返らねぇ、お前は我が友だ」って。
だから僕は歩いて行くのさ。

「待てよ!」

あれ?ちょっと違う展開。何?何の用?

「なにさ?」

俺ってこんなときまで女言葉?ダメだなぁ、やっぱりいつも使ってるから気付かないうちに出てしまうのねぇ。

「恭子が呼んでるのに振り返らねぇってどういう事だよ!」

えぇ?今それ言う?君は僕が邪魔なのでしょう?短いお昼休み、恭子さんと2人で過ごしたいんでしょう?
僕は普通に高校生活を送りたいだけなの。あなたとケンカなどしたくないの。

「何で黙ってんだよ?お前、もしかして恭子に気があるんじゃねぇのか?」

……意味がわからねぇ。なんで黙っただけでそうなんだよ。高瀬ぇ!お前も何か言ってやれよ!「あんた、私が信じられないの?」とかなんとか言ってくれぇ!
そんな高瀬はポカンとしたまま彼氏を見つめてる。っておいおい彼氏さんよぉ、今照れてる場合じゃないよね?

「…あはははは!!」

なんで高笑い?見てみなよ、彼氏もさっきのあなたと同じポカンとした顔してるよ?笑ってないでなんとか言え!

「一条はちゃんと彼女いるって!」

「は?」

何を突然言い出すのこの人、頭のネジが外れちゃったの?それも一本どころか全て。ネジというネジ全て!

「萌、知ってるでしょ?秋月コーポレーションってとこの娘。あの子こいつの彼女」

な、殴らせてくださぁーーーーい!一回、一回だけでいいから女性を殴らせてぇぇぇ!

「頼むから勝手に話作んなよ!恐ろしいわ!恐ろしくて夜眠れなくなるわ!」

「何言ってんの?図星でしょ?」

「あ、アホぉぉぉぉ!恐い!恐いぃぃ!」

俺の絶叫を聞いた彼氏が後ずさりした。そんなに俺おかしい?自分の気持ちに素直になっただけなのに、おかしい?あっまた後ずさりした。俺が珍獣にでも見える?

「お、おい恭子、行こうぜ」

彼氏が恭子、いやいや高瀬の腕を掴んだ。そしてなにか怯えた表情をしている。俺の迫真の演技が功を奏したか?いや違うか、演技でもなんでもない、正直になっただけだ。

「え?でも、一条のシャープペン、一緒に探してあげないと…あっ」

優しい子は今はいらないよ!今は俺を一人にしてください!彼氏!早く高瀬を連れて行けよな!男なら「俺についてこい」くらい言えないのかよ!

俺は「行って!行っちゃって!」と高瀬の背中を押した、そして彼氏に軽く睨まれる。その目は「俺の恭子に触るな!」みたいな?どうでもいいわ!

俺は一人になった。そして腕時計に目を落とす。……7分もムダをした。あと8分しか猶予がない。しかも俺のシャープ、筆箱を開けて気付いたけど、今日はあれ一本しか持って来てない。昼までの授業は先生にバレないように書いてるフリしてたけど、次の授業は英語。
英語の先生である西岡 照美は「ノートに書かない奴は廊下に立とう!」が合い言葉。絶対に見つけなければ!

ここら辺にはないか。とするとあとは俺の教室の真下!俺は思い切り振り返った……そしてフリーズした。

「あれぇ?あなた、ここで何をなさっているの?っていうか、いつからいらっしゃったのぉ?」

目の前には冷めた目つきで僕を睨む萌様のお姿がありました。お嬢様のおなぁーりー!って今それどころじゃない!いつからいた?ねぇいつから?

「あの、僕の声、届いてます?」

なんだかとても恐い、冷めた目線が痛い。しかもこの子の背中に般若がいる、それもものすっごく恐い顔の般若が。

「いつ、誰が?」

「え?な、何がですか?」

なんでそんなに低い声が出る?あなたもしや変声期?
それに「いつ、誰が」って意味がわかりませんけど?英語?英語の授業?予習したいの?

「…いつ、誰が!」

「ひぃぃ!ど、どこで、何を…」

「わけわかんねぇんだよ!」

それ俺のセリフぅ!手を上げるな!殴ろうとするな!こんな大勢の人がいる所で!って誰もいねぇ!みんな俺を置いて教室に戻ったのか?!

「いつ、誰がって聞いてんだよ!」

「な、何がなんだか僕にはさっぱりですぅぅ!」

もうわけわっかんねぇ!「いつ、誰が」って、「今、萌が」俺を殴ろうとしている?大正解!……助けてぇぇ!

「いつ、誰がお前の彼女になったんだよ!ボケ!」

「ひぃぃぃ!」

やっぱり聞いていたのか!じゃあ彼氏が後ずさりしたのって、お前のせいなのね?あの怯えた表情、早く気付くべきだった!

「しかも恐ろしくて夜も眠れなくなるだぁ?」

それは真実!真実です!僕の本当の気持ちです!だって見てよ今のこの状況を!眠れなくなること間違いなしでしょ?

「せっかくアホなあんたの為にシャープ探してやったってのに」

「え?」

萌の手からチラリと見えたのは、俺のシャーペン。も、もしかして、探してくれたの?自分の罪を悔いて?
もう、照れ屋さんなんだから!ってちょっと?

「ふざけんなぁ!」

「やめてぇぇぇ!」

俺の大事なシャープペンシルは、萌の手によって真っ二つに折られてしまった。もう使えない、寂しい。

思えばあのシャーペン、中学に入った時に一郎とお揃いで買ったんだよね。「俺達の友情に乾杯!」って。でもアルコール飲めないから代わりにシャーペンで乾杯したのよ。
しかし男がお揃いって、今考えると気持ち悪い。しかも一郎とお揃い、恐ろしい。

俺は英語の授業を受けることが出来た。一郎がシャープペンシルを貸してくれたから。いい奴だよあいつ、時々おかしい言動をとるけど。
でも、「これ汚ねぇから貸してやる」って言われたんだけど、これってお揃いで買ったやつだよね?お前もまだ使ってたんだ、嬉しいよ一郎君。でも、汚ねぇからって、ちょっとひどくない?









ネット小説ランキング>現代コミカル部門>「シャープペンシルを武器にする」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
小説の匣





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう