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シャープペンシルを武器にする
作:Spark



第24話 バカ一郎太郎


晃が「ここじゃなんだからどっか行こう」と言ったので、僕たちは今ハンバーガー屋に来ています。お前はハンバーガーが食いたいだけだろうが!しかも俺さっきまでここで勇樹と食ってたからね。

まだお客さんがチラホラいる店内の4人用テーブルに、俺とあかね、そして向かい合わせに晃が座る。テーブルの上にはギョーザバーガーセットとハンバーガーセット、俺は金欠だからジュースのみ。あかねが同情してくれてポテトを分け与えてくれました。ギョーザバーガーはもちろん晃が注文。

俺は無言でギョーザバーガーに食らいつく晃を見つめている。とあかねに肘でつつかれた。

(なんで宮田のやつ何も喋んないの?)

(食べてから話すんじゃない?)

(あたしできれば早く帰りたいんだってば)

(私に言わないでちょうだいよ)

全てアイコンタクトで会話しています。あかねにはちゃんと伝わっているハズ、だって会話が成り立ってるし。
俺は晃がハンバーガーを食べ終わるまで無言でポテトをむさぼりました。あっ全部ポテト食べちゃったよ、ごめんねあかね。

「ちょっと太郎!全部食べる奴があるか!」

「食べていいよって言ったじゃん!」

「あたしまだ一本しか食べてないのに!」

「一本食えば充分でしょ?ハンバーガー食べないさいよ、っでぇ!」

思い切り足を踏まれた。マジで痛い!だからつま先じゃなくて足全体を踏んでってばぁ!ってこれは萌に言ったんだった。

「ってかニラの匂いがすごいな」

「全部食ってから言うな!」

ハンバーガーを一気に食べ終えた晃がジュースをゴクゴクと飲んだ後そう呟いた。そして俺は思わずツッコミを入れてしまった。
だけど今はハンバーガーを食べた感想を聞きたいんじゃないんだよ。

「お前、萌と何があった?」

「あぁ?あー。何がっていうか、萌ちゃんのファーストキスをもらった」

「ふぁ…」

そこまで言って俺は一時停止。横を向くとあかねは完全停止。

「な、なんでそんなことしたんだよ?」

動けないあかねの代わりに俺があっけらかんとポテトを食べる晃に聞いた。マジかいぃ。

「告白されたから?」

いや、俺に聞かれても困るんだけど。

「あんたに萌が告白したって?ウソでしょ?」

再生が始まったあかねはウソと決めつける。俺だってウソだと思うからここは何も言わないで見守りましょう。

「ウソじゃないって!去年、下駄箱にラヴレターが入ってたんだよ!」

なんでラヴレター?ブでいいじゃん!かっこつけんな!

正直なところ、本当に信じられません。晃が萌のふぁ…を奪い、その前に萌がこいつにラヴレターを送ったって…アイツがそんなことするか?

「でも、おかしくない?告白したんならあんたと付き合ったりしてるはずでしょ?両思いになるんだから」

真剣な眼差しで俺はあかねの言葉に一つずつ頷き、晃はジュースを飲みつつ頷く。ジュース全部飲んじゃったしポテトも食べちゃったから聞くしかない。

「恥ずかしいからじゃないのか?」

「恥ずかしいからって、普通はあんなにお前を拒絶しないだろ。恥ずかしいの域を超えてるって」

ちょっとは考えてみろと、俺はストローをかじる晃の頭を叩いた。こいつ、考える素振りも見せねぇ。

「そのラブレター、マジで萌が送ったの?」

ストローをかじったままの晃が何も言わないのにシビレを切らしたのか、あかねがテーブルを指でトントンと鳴らし始めた。これはもうちょっとで怒鳴りますよって前兆。

「俺だってバカじゃないよ、文字くらいは読める。秋月 萌よりって書いてたし」

マジで萌のヤツ、晃が好きだったんだねぇ。意外や意外。

「好きで好きで仕方がないのぉ!って書いてあった、しかも殴り書きで。早く俺に気持ちを伝えたくて急いだんだなあれは」

好きで好きで仕方がないのぉ?萌がそんなこと書くか?………………あっ、あぁぁ!

「お前、それ、いつ?」

「あん?何が?」

「いつの時代の話だよ!って違う!去年のいつ頃の話?」

時代は現代だって、当たり前だから!俺ったら慌て過ぎ!

「いつって、去年のクリスマス前だよ。はっきりと覚えてる」

「ま、マジか…」

俺はそれを聞いてがっくりとテーブルにうなだれた。それをあかねは「?」な顔で見てくる。晃は晃でラブレターをもらった当時の様子を事細かに話し出した。あかね、俺を無視して聞いてあげて。

「ちょっと、太郎?どした?」

「あかねぇ、俺のせいだ…」

「は?」

顔を前に向け、晃が自分の世界に入っているのを確認した俺は、あかねに顔を近づけた。一度しか言わないからちゃんと聞き取ってねぇ。

「その手紙、俺…っていうか一郎が書いた」

「はあぁぁ!?」

目を丸くして「はぁぁぁ?」とどこまでも伸ばす勢いであかねは驚いている。驚くよね、そりゃ驚くのもムリないってぇ。

「なに、何してんだお前らぁ!」

言うが早いか、あかねの手刀が俺のノドを捉えた。

「こぷっ!」

俺はアホな声を出し、イスから落ちそうになる。一瞬息が止まったわ!ちょっとは手加減してくれもいいだろよ!

「何てことしてんだよ!バカ一郎太郎!」

「俺のせいじゃないんだってぇ!話を聞いてよ!」

「どんな話だよ!しょーもない事だったらマジで殴るからね!」

それは聞いてみなくちゃわからないよ?ってしょーもない確率100パーセント、殴られる確率も100パー……逃げようか?

「太郎!」

あかねの耳を覆うほどの大声に店内は静まりかえった。晃はというと、「俺の話を聞け!」とまるで俺達の会話を聞いていないみたいだった。た、助かった…お前が人の話を聞かないヤツでよかったよ。

「あ、晃ぁ!お前、今日はもう帰った方がいいんじゃない?明日も朝練あるんでしょ、ハンバーガー食ったんだからもういいだろ!」

「な、なんだよ急に。大丈夫だから心配すんなって」

心配してるわけじゃねぇ!お前の前で話すのがイヤなだけぇ!あかねもなんとか晃を帰してあげて!と俺はあかねを見つめる。それに気付いたあかねは溜め息混じりで呟く。

「宮田。あんた大会近いでしょ?ってあたしもだけど…えーっと、だから」

言葉を選びながらの会話は疲れる!あかねは俺の足を晃にバレないように何度も蹴ってくる。一度蹴ればわかるから!

「「今日はもう帰ろう!すぐ帰ろう!」

立ち上がった俺は、テーブルの上のゴミを集めるとあかねにパスし、それを受け取った彼女は素早い動作でゴミ箱へポイしてくれた。

「「さぁ帰ろう!」」

ミス西岡ばりの大声で俺達は無理矢理に晃を立ち上がらせ店の外へと追い出した。お前は聞かない方がいい!ってか聞いてほしくない!
俺の帰り道は右、あかねは真っ直ぐ、晃は左。よし、早く帰ってもらおう!

「じゃあね晃!夜道に気をつけてぇ!」
「バイバイ宮田ぁ!」

晃の背中を俺達は力強く押す。その勢いで倒れた晃…お前、ちゃんとトレーニングしてんのか?

「いってぇ…。お前ら何でそんな慌ててんだよ?まだ店に入って10分も経ってないのに」

「10分もいれば充分だろうが!食ったらとっとと帰る、それが店の為なのよ!」

そう言った俺はさっき勇樹と1時間くらいいたんけどね、でもお前はそのことを知らないから言い放題。
いてぇと肩をさすりながら立ち上がった晃は、俺達を「なんで2人してそんな慌ててんだ?」という目つきで見つめてくる。理由は言えないの、ごめんね?

「わかったよ、帰るけど…明日は一郎にちゃんと奢ってやれよ?」

「金欠だって言ってんでしょうが。そんなに言うならお前が奢ってくれよ」

晃くんに責任転嫁しました。君の家の方が俺ん家よかずっとお金持ちなんだから、ハンバーガーのひとつやふたつ、君のポケットマネーでお願い。

「なんで俺が奢るんだよ。お前なぁ…」

と言いかけた晃は口にチャックをした。なんだ?と振り返ると、あかねが晃を睨みつけている。彼は何も悪くないんだけどねぇ、この際仕方がないよ。助けることはムリだから。

「か、帰るよ!帰ればいいんだろぉ、じゃあな!」

あかねに睨まれつつ、晃は「なんで俺を睨むんだよ!」と言いたげな顔で走って行ってしまった。悪いね晃、お前はまったくの無実だから。俺は知っているよ。

「さぁて、吐いてもらおうか?」

ちょっと、刑事さんみたいな言い方するねあんた、しかも腕利きの。捜査は足で稼げ!みたいな?

「い、言うから。そんな睨まないでぇ」

俺は「立ち話もなんですから」と、近くの公園に移動しようと歩き出した。があかねにローキックを喰らい、あえなく撃沈。

「なんで蹴る?今は蹴るところじゃないって!」

「逃げるなっての!」

「逃げないよぉ、立ち話もなんですからって言ったじゃん!」

「立ったままでいいから!」

いいんですか?俺は10分で終わる話を1時間くらいに延ばして話せる技術を持っているんですよ?足がシビレても知らないからね!

「…え〜、去年のことなんですけど」

めちゃくちゃ見つめられて恥ずかしいし話づれぇ、あっち向いててくれねぇかな。そしたらまた逃げるな!って蹴られるか。
俺はあかねの睨みをなんとか和らげてあげようと笑顔を見せる。けど効果なし。

「早く言え!」

「はいはいぃ!えーっと、一郎が突然、ラブレターもらったことないって言い始めたんですよ。クリスマスも近かったしラブレターが欲しい!そして彼女が欲しい!って。あまりにも可哀想だったから、あいつの親友としてラブレターを送ろうと思いまして。でもどう書いていいかわかんなかったんで、好きで仕方がないのぉぉ!って書いてアイツの下駄箱に入れました」

「…」

相づちがない、呆れてんだよねきっと。でもちゃっちゃと言わないとまた蹴られそうだからできるだけ早口で言っちゃおう!そして笑おう!きっとつられて笑ってくれるさ!

「ラブレターだぁ!って喜んでたんですけど、俺の字だとすぐにわかった一郎は逆襲じゃあ!ってそれを晃の下駄箱に入れたんです」

「なんの逆襲?」

「俺も意味不明です」

「…それで?」

そこは意味不明じゃねぇだろうが!って蹴るところなのに、なんで蹴ってくれない?あっ蹴ってって言ってるんじゃないよ?蹴らないならそれはそれで嬉しいからいいのよ。

「一郎はそのラブレターにちょっとした小細工を加えていたみたいですねぇ…」

「みたいって何?」

「いや、まさか一郎のヤツがあの手紙に萌の名前を付け足してたとは」

「あんたは知らなかったって?」

「知らないよ!さっき晃に手紙の内容聞いた時、あれっもしかしてって思ったんだから!」

「好きで好きで仕方がないのぉぉ!って?」

「そうです!」

「あぁ…」

もう呆れてモノも言えないわぁ!って顔だね。笑ってくれないって当たり前か。
あかねは「バカだ、こいつバカだ」と何度も繰り返し、力なくガードレールに腰を下ろした。そ、そこまで呆れられると、マジでヘコむんですけど。

「それで宮田は暴走して萌のふぁ…を奪ったんだ」

やっぱりあなたもふぁ…から先が言えないのね?純情乙女なのね!でもそんなこと言ったら「今はそれどころじゃないでしょうが!」ってやっぱり蹴られるからこれは心の奥に封印しましょう。

「俺、明日あいつらに謝るよ。元はといえば俺が一郎に書いた手紙が原因で晃は勘違いして、萌にまで迷惑掛けて…」

本当に反省しなきゃいけねぇよ。ふぁ…ってのは男にとっても女にとっても大事なモンだよね?晃にも本当に悪いことした。勘違いさせちゃったよ。

「まぁ、萌のことだからあんたが謝っただけじゃ済まないとは思うけど…」

う、それを言われると言いたくなくなるんですが。でも殴られたとしてもちゃんと言うよ、晃にも謝る…謝って済む問題じゃないのはわかってるけど、謝ることしか俺には出来ないと思うから。




















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