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シャープペンシルを武器にする
作:Spark



第23話 あかねちゃんも勘違い


あかねの用件は想像を絶したものだった。

『部活終わって帰ろうとしたら、宮田があたしを待ち伏せしてたんだよ』

待ち伏せ?なんであかねを待ち伏せたんだ?
そう聞く前に、答えは返ってきた。

『あたしと一緒にあんたの家に行きたいって言われたんだけど』

「なんであかねなのよ?」

『あたしに聞くなよ』

女同士の会話ってこんなもんなのかしらねぇ。って晃のヤツ、なんで部活帰りのあかね捕まえて俺の家に来るんだよ。一匹オオカミで来い!

『で、今あんたの家の前にいるんだけど』

「えぇぇぇ!?なんで来てんのぉ?!」

部活で疲れてんのにわざわざ俺の家まで来たんかい!しかもあなたの家って俺ん家と真逆だよね、晃のバカは何を考えてんだ。
…ってことは今、隣りには晃がいるの?

「晃、そこにいる?」

『いる』

逃げたいよぉ!いっそ遠くに逃げたいぃ!
俺が萌の家にいることが晃に知れたらどうなる?俺の萌ちゃぁんなんて言ってる奴に萌の家で、しかも二人きりでいるよなんて恐ろしくて言えないっての!

『あんた家にいるんでしょ?早く出てきてよ。あたしだってヒマじゃないんだから』

ヒマじゃないなら晃なんか無視して真っ直ぐ帰れよ!あの男の言いなりになってはダメよ!

「申し訳ないんですけど、マジでタイミング悪過ぎですよ」

『なんで?別にあんたヒマでしょ』

ヒマって決めつけてるよ…ヒマだけど。でも俺の居場所を聞いてもあなたは今みたいに軽く受け流してくれるかい?

「萌の家にいるのよ、しかも二人で」

『はあ?ってマジ!?』

晃には聞こえてないよね?!めちゃくちゃ小声で言ったんだから大丈夫よね?

『ま、マズイよそれ』

「太郎!早く出て来いよぉ!ハンバーガー食いに行くぞぉ!」

ちょっと晃は黙っててよ!今あかねと作戦会議してんだから!ってなんでハンバーガー?もう食ったよ!てか昼間の事を言いに来たんじゃないのかよ!仲直りの印にハンバーガー食べようってこと?

『ちょっと宮田ぁ!こんなとこで大声出すなって!』

あなたも負けていないわよあかねちゃん。さすが運動部、ってそれどころじゃない!

「あかね?」

あたふたしているとソファにどっかり座っていた萌がいつの間にか俺の背後にいた。そういえばまだこの居間というダンジョンにいたんだったよ俺。ひしひしと恐怖を感じる、怖くて振り向けないわ!

「あ、はいそのようです」

窓の外からは晃の大声が聞こえてるからアイツがいるのもわかってるよね。

「なんて?」

「あっいや、ハンバーガー食いに行こうと誘われまして」

「あかねが?」

「いえ、晃君がです」

「なんで」

一言ずつの萌さん、頭の中が疑問で一杯のようだねその顔は。昼間さんざん言い合いしてた奴がハンバーガー食いに行くぞって誘って来るなんてって顔してるよ。でも晃って人間は枠に収まらないのよ、あなたも知ってるでしょ?

「行かないの?」

行けないってぇ!だってお前の家から出て行くことになるんだよ?晃は俺ん家に何度か来た事あるからここが私の新居なのって言っても通用しないし!

「あかねぇ!なんとかそこから離れること出来ない?」

『ムリ』

諦めるの早いから!きっと策はあるはずよ!頭脳をフル回転させろぉ!俺の脳みそをアテにしちゃだめ!

『萌そこにいんの?』

「え、いるけどって晃に聞こえるからぁ!」

『ちょっと代わって』

無視かよあかねぇ。「あっごめん」くらい言ってよ。
俺は背後に仁王立ちしたままの萌に振り返り、精一杯の笑顔で携帯を差し出した。あっ壊してっていってるんじゃないよ?会話を楽しんでって差し出したんだからね?

「あ、あかねちゃんです」

「はい、あんた何やってんの?」

開口一番がそれかよ!部活お疲れ様ぁ!とか言えよな。あかねは巻き添えくってるだけなんだから、って俺のせいなんだけどさ。

「えぇ?…わかった」

驚きから承諾へ。何を言われたかたはわからないけど、萌が携帯を切った後、てめぇ!ってな目で睨まれたから楽しいお話なハズはない。

「行くよ」

「はい?」

「外に出るんだよ!」

なんかむちゃくちゃ怒ってませんか?萌の体から凄まじいオーラが放たれてるんですが。

「なんで萌も行くのよ、晃が外にいるんだよ?」

率直な疑問をぶつけてみました。こいつがいそいそと外に出るなんておかしい。あかねに何て言われたかは知らないけど。

「いいから早く!」

「はいぃぃ!」

なんか俺って怒鳴れてばっかじゃない?睨まれ怒鳴れ、見つめられ微笑まれだったらどんだけ嬉しいことか。


恐る恐る秋月邸を出た俺はでっかい門を睨んだ。この扉の向こうには晃がいるだよね、会いたくねぇわ。あっそうだ、ここは萌だけが出て行ったらいいんじゃない?きっと彼は俺のことなんて忘れるよ。
よし、そうしよう!と萌の背中に回ったとき、天使が舞い降りた。

(やめておいた方がいいわ。あなたが身勝手な行動をとった瞬間、萌の回し蹴りがあなたを襲うから)

え、マジかよ天使。って考えなくてもわかるか、回し蹴りは置いといても「逃げんじゃねぇ!」って蹴られるのがオチだ。
くそっ、黙ってるしかないのかぁ!

(そうさ!そして晃と萌とあかねの四角関係に疲れるがいい!)

お前が疲れるわ!しかもなんであかねが加わってんだよ!あの子は無関係だから!ってか俺だって関係ねぇ!

「ちょっ、待ってぇ!」

まだ心の準備もできてないのにさっさと門を開けようとしないでよ萌ぇ!!どうしてあなたはそんなに冷静でいられるのよ?俺一人あたふたしてアホみたいでしょうよ。

「さっさと終わらす」

何が終わるの?晃の人生を終わらすって意味か?ってまだ覚悟を決めてないからぁぁ!

門を押さえようした俺のみぞおちに蹴りを入れた萌は、微かな願いも虚しく扉を開けてしまった。

晃にタックルされると野性の勘が働いた俺はいつでも走って逃げられるように体勢を立て直す、けど目の前には疲れ果てたあかねの姿しか見えなかった。あれ、アイツどこ行った?

「も、萌ちゃぁぁん!」

バッと振り向くと後ろにいた萌に晃が突進していく、俺の野性の勘はアテにならん。

「ぐあっ!」

勢いよく蹴られた晃は俺の目の前に倒れた。あんた蹴られるってわかんのに何で突っ込んで行くのよ、ちょっとは考えろ。

「萌ちゃんの私服、サイコー!ついでに俺もサイコー!」

最悪だよボケェ!お前にはダメージというものがないのかよ!素早い身のこなしで立ち上がらなくていいから!

「…太郎、悪かった」

立ち上がった晃に軽く蹴りを入れた時、あかねに肩を叩かれた。いや、あなたは何も悪くないでしょうよ。何で謝る?

「あんたが萌の家にいるとは思ってなかった、ごめん」

そんな真剣に謝られても困るから……あれ、何で顔が赤いんだい?熱でもあんの?
早く帰った方がいいんじゃない?と言いかけたとき、あかねはテレ隠しなのか、無理矢理な笑顔を俺に向けた。

「いや、まさか、ねぇ?」

「まさかってなにがよ?」

何?はっきり言ってよん。話が全く通じないわよ?

「いや、まさかあんた達が、ねぇ?」

なんで見る見るうちに顔が真っ赤になってんのよ!あっお前まさか!?ちょっ違うからぁ!

「あかねぇ勘違いしないで!私は無実よぉ!」

勘違いを正そうと俺はあかねの手を力一杯握った。お願い!それは勘違いなの!気付いてぇ!

「太郎ぉぉぉ!」

あかねに「手を放せ!」とハイキックを食らったとき、晃の甲高い声が響いた。高瀬よか高い声だよそれ。って俺を睨んでる睨んでる、思惑通り…違う!

「お前、今どっから出てきた?」

やはりそうきますか。って萌に抱きつく前に気付けよ。

「ど、どこってぇ?」

ここはシラを切り通しましょう、それが最善策!きっと何の解決にもならないけど…。

「萌ちゃんと一緒に出てきたよね?」

なんでそんな無邪気な顔で質問してんだよ、俺も無邪気に返さなくちゃいけないじゃんか。

「え?そうだったかしらん?ごめんなさいね、最近モノ忘れがヒドくてぇ…」
「てめぇぇ!」

言い終わる前に晃のタックルが俺のヒザを捉えた。無邪気さはどこへ?勢いに押され倒れる俺…ってここコンクリだから!危ないってぇ!

「俺だって入ったことないのにぃ!」

羨ましいだけかいぃ!じゃあそう言えよ!萌に「俺も入れてよ!」って懇願しろよ!そして殴られるがいいさ!…俺は天使か!

「私が入れって言ったんだよ。あかね、家寄って行きなよ」

倒れた俺に馬乗りになっている晃を無視して萌はあかねを家へ招いた。なんか晃が可哀想、ってか俺が可哀想!

「え?あぁいや、明日も朝練あるから帰るよ。た、太郎もいるし」

あかねは顔を赤くしたまま両手をブンブン降るとそう呟いた。ってこいつ、まだ勘違いしてるよ。俺だって帰るよぉ!一緒に帰りましょう?

「あぁそっか、じゃあ太郎。送って行きな」

ご命令ありがとうございます。って俺はお前の召使いか!
でもこの暗い夜道、女の子を一人で行かせるってのもね、まぁあかねなら大丈夫かもだけど、ここは男として行かねば!あっでもそしたら萌は晃と二人になるよ?

「宮田も帰んな」

厳しいお言葉!でも晃にはノーダメージ。俺から離れてスキップしながら萌に近付いていく。殴れる確立100パーですよ。

「俺は萌ちゃんといるよ、一人だと心細いハズだ。でも大丈夫!変な奴が来ても俺が、ぐわっ!」

お前が変人だボケ!と萌は晃にラリアットを食らわせた。あなた、それ金髪さんとロン毛さんにやれば良かったじゃないよ。
倒れた晃を起こす気配もなく、萌は俺とあかねを交互に見た。

「ごめんねあかね。太郎、行け」

ワン!って俺は犬かぁ!

あかねはまだ顔が赤いものの、萌の命令とあっちゃ仕方ないと俺と視線を合わせた。あっ帰るのね?それじゃあ仲良くお手てつないで帰りましょう…ってまた蹴られるからやめましょう。

「晃ぁ、帰るよ?」

ぐふっと息をつく晃の頭を軽く叩いた俺はあかねと歩き出した。ふと見ると萌の姿はもはやない、早ぇよ!せめて少しでいいから見送れよ!

「待て太郎!ハンバーガー食おう!」

萌の家に俺がいたことをもう忘れてるよコイツ、これでよくモテ男を気取ってるね。…イヤミですよ!

「まだ言ってんのかよ!金欠だからムリぃ」

「佐野には奢ったのにかぁ!」

なんでお前まで知ってんだ!一郎から聞いたのかよ!どんだけ根に持てば気が済むんだよあのアホは。
後ろで晃がギャアギャア言ってるけどもうメンドイから無視です。

「さっき電話で萌に何て言ったの?」

トボトボと歩く俺はあかねのスポーツバックを持ってあげました。だって疲れてる体にムチ打って来てくれたんだから、小さな恩返しよ。

「宮田がいるって言った」

「それだけ?」

「うん、あと大声張り上げてるって付け加えた」

あぁそりゃあ出て行くよね。うんうんと頷いていると、あかねがないことに顔を近づけてきた。え?ちょ、恥ずかしいわぁ!ってナイショ話をするためなのね?ドキドキ損ですわ。

「萌と宮田って最近ちょっとヒドくなってない?中学のときはあんなんじゃなかったよね、もっと仲良くなかった?」

やはり気がつきましたか。俺もそれが不思議なんだよね。中学の頃は普通な対応してたハズなんだよ萌は。すると問題は後ろの野郎ですか、ここは本人に聞いた方がいいのかしら?

「後ろにいる当事者に聞きますか、あかね太郎さん」

あかねは俺の言葉に少し驚いた表情を見せた、聞きたいけどプライベートな事だし…みたいな顔。しかし、その口元がニヤリと曲がる。あなたも悪ですよのう。

「いいんですかね、あかね太郎さん」

あかねもノッてくれた。いいじゃん大丈夫だよ、そんな大したことじゃないでしょうよ。

「晃ぁ?」

振り返ると晃は大事そうに財布を握り締めていた。ハンバーガーはもう食べないってぇ!

「なんだ?」

そう答えた晃はあかねの隣りに走り寄った。言うなればあかねは今、両手に花の状態…俺は雑草ですがね。

「あんた何で萌に嫌われてんの?」

ストレート過ぎだよ!もうちょっと違う言い方があるんじゃない?さっきは「いいんですか?」みたいな顔してたじゃん!

「嫌われてないけど?」

誰がどう見ても嫌われてるでしょうよ。気付けばあんた萌に殴られたりしてるし……俺もだけど。














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