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シャープペンシルを武器にする
作:Spark



第18話 僕にもどうにもならないの


あぁ弁当がうまい!いつもおいしいけど今日は更にうまいよ母ちゃん!しかも、しかも今日はエビフライが入ってるし、最高だよ!

俺はいま自分の席で昼食を食べています、そして目の前には口の周りが真っ黒な一郎。お前、ジュース飲み過ぎだから。

「しょっぺぇ、やっぱ残ってたからって3コも買うんじゃなかった」

後悔先に立たずだよ。ってかお前それ2コ目だろ?1コは晃に踏みつぶされたんだからさぁ。
俺はさっきのことを謝りついでに一郎君に果汁100パーセントのオレンジジュースを買って来ました。それをおいしそうに飲んでくれる、パンも濃けりゃジュースも濃いってね。はっきり言ってイヤミ以外の何でもない。

エビフライを味わいながら、俺はドアの隙間からある人物の姿を見ていた。
アイツ、マジでまだ諦めてねぇのかよ。ってか入るか消えるかどっちかにしろよな、メシがマズくなるってんでぇ!

「太郎、俺の見間違いならいいんだけど…晃のヤツ、そこにいねぇ?」

一郎もヤツの視線に気がついたのか、小声でそう話しかけてくる……見間違いであってほしい。

「いねぇ、ってか見ちゃダメだ。アイツは誰かに声を掛けられるのを待ってんだから」

いるって言ってるよ俺。
チラリと横を向くと、萌とあかねと高瀬が机を合わせてご飯を食べている。高瀬って、彼氏が出来るとそいつと食うからね。だから昨日はあかねと萌の2人だったんだよね。高瀬さんはまだ新しい恋を始めていないみたいだ…ってかそれじゃ早すぎるか。

それにしても萌もあそこにいる幽霊のような晃に気がついてるハズだよね?シカトしてるんだよね?でもさ、食べづらくないかい?ガン見されながら食べるのって、辛くない?

「…馬鹿太郎」

ボソッと呟いた声は俺に届いた。なんで馬鹿太郎?桃か金なら俺もまだ軽くスルーしてあげたけどさ。

「馬鹿太郎って、俺は太郎です」

「あれ、なんとかして」

萌はこっちを向こうとせず、黙々とご飯を口に入れる。俺だってあれをなんとかして気分良くメシを食いたいけど、俺の手には負えないって。さっきの見てわかったでしょ?逃げることしかできないのよ。

「申し訳ないけど、ムリです。あかねちゃんに頼んでください」

「ギブ」

ギブアップすんの早いよ!ってかあんた、またエビフライが弁当に入ってるよ。それは腐ってないでしょうね?

「私、言ってこようか?消えてって」

高瀬、それははっきり言い過ぎだからぁ!そりゃあ俺だって消えてほしいと願っているけど、はっきりと言ってはダメよ。オブラートに包んで言わないと!
あれ、高瀬って面食いじゃなかったっけ?晃は恋愛対象外なの?

「一郎、しょうパンの恨みを今晴らしてこい」

はい、一郎君に丸投げしました。でもだからといって「いいぜぇ!」なんてこいつは言わないよ、今は口の中がしょっぱくてそれどこじゃないから。ってそれなら買うな!お前何回それ買ってんだよ、しょっぱいのなんて初めて買ったときに気付くはずでしょうが。

「俺、口が痛いからムリ」

しょっぱいを通り越して痛いのかい!どんだけ食ったら痛くなんだよ。

自分の手に負えないことがわかっている俺は辺りを見回した。クラスのみんなも晃の姿に気がついているものの、スルーしてる。
あいつって顔がいいクセにああいう行動を取るからなぁ。他の女子はみんなあいつをカッコいいわぁって言ってるみたいだけど、あの姿を見てる俺達はそんなことは絶対に思わないし、思えない。女子よ、あいつの本性を見てもまだカッコいいわぁって言えるかしら?

「…」

俺と一郎は無言を突き通すことにしました。でも昼食は学校で一番嬉しい時間、せっかくなら楽しく食べたいよ。
でもあかねもギブって言ってるし、高瀬に任せたら晃は「消えてって…悪いが高瀬、お前の気持ちに答えてやることはできないんだ、ごめん」って真剣に返されるよ。ってか思い込みも甚だしい!

「桃太郎、金太郎、ば…」
「わかったよ!わっかりましたぁ!喜んで引き受けさせていただきますぅ!」

絶対に最後、「馬鹿太郎」って言うつもりだったよね?もうバカバカってやめてよね!
しかしどうしたら良いだろうかね。今のアイツに何を言っても「俺と萌ちゃんの…」って返されるだろうし。はっきり言って俺は無関係なんですが、俺に振ること自体間違ってんじゃんか。

「一郎、何かいいアイディアないか?」

オレンジジュースを一気に飲み干した一郎にそう問いかける。ってお前、俺のウーロン茶にまで手を出すな!男と間接キスなんて嬉しくない第1位だってんだよ!

「…しょっぺぇ」

もうお前黙ってて!俺が話を振ったんだけど、黙って!
一郎は役に立たないとわかった俺はもう一度教室を見回すと、遠くで男3人でメシを食っている勇樹と目が合った。ここは学級委員長のお出ましってことで、ヒヒヒ。
…俺、誰の役を演じてるの?

「勇樹ぃ」

しゃがみ込んだ俺は、その態勢のまま勇樹のグループへと走る。意外に速い、俺ってなんでこんな意味不明な行動ができるのか疑問。

「な、なに?」

なにじゃないって。俺が来た理由は聞かずともわかってるだろうよ。
って勇樹君まだ顔半分が腫れていますね、マジで可哀想に。隠れファンが泣いているよ。でもやったのはあかねだから誰も何も言えない、それに謝ったしね。

「学級委員長の一言を待ってるんですよ。楽しい昼食の時間を邪魔するなって言ってくれるのを待っているんですが」

今度は勇樹に丸投げかい!俺は弱いヤツだよ、知ってるよ!でも、俺じゃどうすることもできないんだよ!わかって勇樹!

「れ、れも…」

れも…レモン食べてんの?でもお前の弁当にレモンらしき物体は入ってないけど…「でも」って言ったのね?まだうまく言葉を発することができないんだ?

「ご、ごめん勇樹。やっぱり何でもない」

この状態の勇樹に頼むなんて俺の馬鹿!あっやっぱ俺って馬鹿だった…。考えるな!考えたらそこで終わりだよ!

「あぁもう、疲れるぅ」

ゆっくりと立ち上がると、みんなが俺を見ていることに気がついた。あれ、どうにかしろ(してよ)って顔だ。普通は萌を見ないかい?そんなに見つめられても困るんですが。

「てめぇ、さっきの庭田先生事件、忘れたわけじゃねぇよなぁ?」

うわっ怖ぇ、誰だよ。と振り向くと、自分は庭田先生親衛隊の隊長だと豪語する岩村 弘が俺を睨みつけていた。まだ根に持ってんのかよ、しかも庭田先生事件って。

「忘れてねぇけど、それとこれとは話が別じゃない?」

ふと見ると、岩村の手には真っ黒なパンが……ってしょうパン?お前もそのパン好きなのか、味覚おかしいだろ?

「別じゃねぇよ!先生のすか、スカート、の中、を」

何でそんなあわわしてんの?お前って純情だね、でももう高校2年生でしょ?なんで顔を真っ赤にしてんのよ。

「すかー…とにかく反省してるならアイツをなんとかしろ」

言えないのかいぃ!純情すぎるから!親衛隊ならもっと強くあれ!しかも反省って、別に先生のスカートの中を覗こうとしてたわけじゃないのに……誤解されるのってツライ。

「…」

そんな目で見るな、しかも全員。お前ら、俺はみんなのクラスメートだよ?いいの?そんな冷たい目で友達を見ていいわけ?
…わかったよ!俺に任せてぇ!

「あっきらくぅん!」

ドアに手をかけた俺は思い切り開けてやろうと心底力を込める。あれ、開かないよ。なんでだ?
こ、コイツ…ドアを開けまいと一生懸命に掴んでやがる。ってお前、開けて欲しかったんじゃないの?

「ちょっお前、開けろやぁ…!」

両手で試みるも、ドアはウンともスンとも言わない、晃も何も言わない。なんだよ、何のコントだよこれぇ。

「もう何なんだよ…」

疲れた俺は手を離した。晃もそれに気付いたのか、ドアにかけていた力を緩める……今だ!
俺は渾身の力を振り絞ってドアに手をかける。あぁでもまだメシ食ってる最中だから、お腹が空いて力が入らないぃ。

「おりゃぁ!」

ありったけの力を振り絞って勢いよくドアを開けた拍子に晃が倒れた。マジでこいつは何なんだよ。何がしてぇのよ?
倒れた晃はありがとうという顔で俺を見上げた、なんで感謝されてんだよ。

「お前さぁ、腹減ってない?」

しゃがんだ俺は倒れたままの晃にそう呟いた。お前、昼休みずっとこんなことしてたら昼メシ食う時間なんてなくなるよ?

「減っていない、というか減らない」

「え?なに、お前ってメシを食わなくても生きていける新種なの?」

「俺は新種だよ、メシを食わずとも隣りに萌ちゃんさえいてくれれば、ぐわっ!」

真面目な顔して何を言ってんだよ、思わず蹴っちゃったじゃんか。俺のせいじゃないよ、お前の言葉に反応しただけだからね。

「何すんだよ…だが太郎、お前と俺の仲だ。許してやるよ」

何で上から目線なんだよ。お前のそういうとこって相変わらずだね。しかも俺とお前の仲って…。でも仲は悪くないんだよ、ただ萌が絡むとお前は別人格に変貌するから俺は蹴るんだ。

「マジで諦めなってぇ。何回言わせんだよ、中学の時から言ってんじゃんか」

「それはそれだ。萌ちゃんは恥ずかしがってるだけだ」

「…周りを見てよ晃ちゃん。あなたの周りには女子がいるのよ?かわいい子が一杯いるのよ?なんで萌なわけ?」

正直に聞きました。でも萌に聞こえないようにめっちゃくちゃ小声で。だって聞かれたら「なんでって何だよ!」ってきっと弁当箱が飛んでくる、しかも俺の。まだ半分くらいしか食べてないからもったいない。
でもマジで理解不能だよ、なんで萌?あの暴言&暴力女のどこにそんな惹かれるのよ?聞きたい知りたい!

「お前はわかってないんだよ。彼女の秘めたる美しさに、ぐはぁっ!」

なんでいちいちカッコつけて言うんだよボケェ!カッコ良くねぇよ、ただのアホだよお前は!なんだよ秘めたる美しさって。秘めるな!全面に押し出せ!

「俺の萌ちゃんの素顔を見たことがあるか?」

しかもまた俺のって…。その思い込みの激しさ、ある意味で尊敬するわ。ってか素顔なら毎日見てるっつーに。あのまんまでしょ?
俺は何を言ってんだよコイツと倒れたままの晃を見下ろした。それを見た晃がハハハと笑い始めた。あれ、蹴られ過ぎて頭がどうにかなっちゃったの?大丈夫?

「わかっちゃいねぇな太郎。俺だけが知っているのさぁ!」

教えてくれないのかいぃ!そこは普通教えてくれるのが定石と書いてセオリーでしょう?
あぁもう面倒クセェ!静かに昼メシくらい食べさせてほしい!

「もうお前マジで自分の教室に戻って!」と晃に言い放ち、ドアの取っ手に手をかけた時でした。保健室で会ったかわいい女の子が晃の後ろに立っていました……硬直しました。







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