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二号車 寝室

貴族たちが賭博でどんちゃん騒ぎをかましている頃。二号車である計画が開始されようとしていた。
小さな部屋に黒いスーツを着た男たちが10人程度集り沈黙していた。そこにいたのはフライング・ケット・シー号の専属に雇われた給仕たちだった。そして一人の男が沈黙を破った。


「さて、てめぇら 計画どおりにやるぞ」

給仕とは思えない暴力的な言葉が飛んだ それに釣られるかのようにほかの給仕たちも、おぅなどと呟く。


「わざわざ 給仕たちの格好してまで侵入したんだ その辱められた分だけ 金をぶんどる!いいか!」


「おお!!」


「よし!てめぇら作戦開始だ!」


そういうと男たちは給仕用のスーツを破り捨て 自分たちの元の服装が露わになった。褐色のボロボロな服に肩にナイフを加えた狼のエンブレムが刻まれているいかにも悪人の印象的象徴を醸し出していた。


ロンドンにある噂が流れていたことがある。ボロボロな服装をした質の悪い不良集団が時代遅れにも義盗賊団などと語り高級貴族の金を盗みまくった挙げ句。どう言うわけか貧しい人々に金をばらまくという噂が……。


「さて 今宵の月の晩にてコヨーテは吠えるぜ。宝を寄越しな!とな」


コヨーテ…それが奴らの名前だった。



一号車・窓際の席

窓の向こうの夜景色をじっと眺めているのは革のジャケットを羽織り、下にはかまを履いたなんとも不思議な服装をした東洋人だった。
腰には武士の魂とも言える刀が鞘に納められている。
もし外国人がみたらこう言うだろう
“サムライ”と。

サムライ男は窓の外を見ながら想う
ニューヨークに行くためにこんな気品の欠片もない強欲めいた装飾をした列車に乗るとは予想もしていなかった。あぁ 早く 祖国、日本に帰りたい。そんなことをぼやいていると

「まだ景色眺めてんのか?」

一人のアメリカ人の男が声をかけてきた歳はだいたい二十歳かそれより一つ下の年齢の男 カッコつけているのか上から黒いダスターコートを着て ドクロのバンダナを頭に被っている。


「景色だけが取り柄だからな この列車は」


サムライ男は違和感もなく英語で話す。

「ははっ それ同感 、この一号車は普通の列車と変わりないのに 貴族専用見た?もはや王室みたいだったぜ」


「入ったのか?」


「入った…けどすぐにガードマンに捕まって 舞い戻ってきた」

サムライ男は頭をかきながらため息を吐く。


「役立たずだな〜 せめて、ド偉い貴族方が召し上がって…いや貪ってる豪華食材くらい持ってこいよ」


「むちゃ言うなよ “タツロー”ガードマンの守備マジで固いんだぜ」


さらにタツローと呼ばれた男はため息を吐き


「“リロイ” 一号車の食事みたろ?ハムパンと麦スープのみだ それに比べて貴族たちは俺たちが見たこともない豪華料理ばかりだ」


リロイと呼ばれた男も同じくため息を吐く


「あぁ ローストビーフにナポリにペペロンチーノ、極め付きに1780年ものの高級ワインときたもんだ……」


今度は二人思えば二人の出会いは唐突だった。ロンドンならではの霧が道を覆い隠す中、一人は旅行を終え日本に帰国するためにニューヨークに向かう者。一人はニューヨークにいる小説家コナン・ドイルに会い彼と話したいがために向かう者。
そんな目的は違う二人がホワイトチャペル駅に向かう途中、唐突に顔を出くわした。
最初に話しかけてきたのはリロイからだった。

「うぉ!サムライか?!すっげマジかよ!」

そう言われた五十嵐辰郎は

「お前こそなんだ?海賊か?」

「おお!よく分かったな このバンダナはな有名な海賊旗をそのまま写して造られた限定品だぜ」
「いや、全然答えになってないぞ……」

「ま、細かいことは気にすんな!な、」

初対面なのに気安い奴だなぁと思っていると

「なぁなぁ あんた はどこに行くんだ?」

「ニューヨークだが……」

するとバンダナ男は
「あれ、奇遇。実は俺もなんだ ニューヨークにコナン・ドイルがいるって言うからサインもらおうかなと思ってな」

なんと!それだけのために高額料金とも言えるニューヨーク行きの列車に乗るとは しかし まさかとは思うが……

「ニューヨークに行くってことはフライング・ケット・シー号だよな?」

「ああ」

「金あんのか?」

「いんや」

男はあっさり答えた。

「おいおいケット・シー号の切符券がいくらなのか知ってるのか?」

「さぁ?どうせ俺 貨物車に忍び込む予定だし」

無賃乗車かいっ!! と駅の前で頭を抱えていると不意に列車の汽笛音が鳴った。
「あ、やべっ!時間だ 早く行こうぜ」

バンダナ男は気安く手を握り駅に向かって走る

「おい、お前は無理だろ?つか途中で駅員に捕まるのが落ちだぞ それに何故が一緒に行かなきゃならん?」

それにバンダナ男はニンマリと笑い

「予定変更した お前の付き添いとして乗ることにした」

なっ…

何て勝手な奴なんだ!つか今さっき知り合ったばかりだろが、………付き合ってられん

とバンダナ男の手を振り解こうとした

「おいおい 手を解こうとすんなよ 遅れるだろ!」

「五月蝿い!つか、お前 初対面の奴に普通不正な行いを一緒にやると思っているのか?」

「いーじゃん 旅は死場もろともって言うし。」

「いやそれ “死場もろとも”じゃなくて“道連れ”だろ?」

「そ、それそれ!だから諦めて一緒に来いって!」

いや全然意味が分からんぞ!と言おうとするがバンダナ男はスピードを上げるぞと言い さらに早く突っ走った そして走っている(走らされてる)途中で

「おっと自己紹介がまだだったな 俺はリロイってんだ 名字は無い 孤児だから」

別に聞きたくもない自己紹介を答えてくる

「んで、あんたは?」

自己紹介などするか と思っていたが 自分の性格 武士の心得のせいか、つい口走ってしまった…。
「い、五十嵐辰郎だ」

「タツロー?変な名前だな まぁいいや、とにかく行くぜ」
っておい!人の名前を変だとか言うな。由諸正しき家柄なんだぞ、って言うか その前に……!!

「俺を巻き込むなぁああああああああああああ!!!」
辰郎の叫びがホワイトチャペルのターミナルに木霊する。もしかしたら世界初となるターミナルで愛?を叫んだ外国人として歴史に名が残るであろう。しかしそれはなかった 何故ならホワイトチャペル駅は近い未来に無くなっているのだから………。
うまく小説を書きたい!そう思いながら小説を読みまくっている今日この頃です。


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