ディメイション・ザ・アドベンチャー2(4/12)PDFで表示縦書き表示RDF


今回の話から、別作品の主人公が参加します。
ディメイション・ザ・アドベンチャー2
作:宮座頭数騎



チャプター3『通りすがりのクロノスだ』


 ディメイションの巧みな戦略(?)により、次元の悪魔に取り憑かれていたレッドドラゴンを倒すことに成功する。
 爆死したかと思っていたレッドドラゴンだが、不思議にも無傷のまま気絶し、体から青いガスのようなものを噴き出していた。
 それに向けてディメイションが腕で薙払う動作で赤い波動を波紋のように放ち、青いガスを消滅させる。
 聞けば今ので次元の悪魔を浄化させたらしく。しばらくはすればレッドドラゴンも気を取り戻し、何事もなかったように終わるだろうと、ディメイションは気絶してるドラゴンの頭を撫でながら答えた。
「ま、リザードマンは集めたトカゲの死体に雑魚の次元の悪魔を取り憑かせて造ってたから消滅させたけど、コイツはまだ生きてるしな。だから助けたわけさ」
 なる程、しかしどうやって助けたのか疑問である。明らかにあの一撃は絶命確実なはずなのだが、元に戻ると無傷とはいったい?
「へっへへ、体を傷付けず倒すことくらい、俺には造作もないのさ!」
 自分を自信満々に、構えるように指差すディメイション。つり上がった口元から覗く八重歯が、太陽の反射できらめいて眩しい。
 確かに凄いのだが、このふざけるところをもう少しどうにかしてほしいな。多分、ディメイションの隣で呆れるように溜め息ついてるリョウスケは、いつもこんな思いでいっぱいなのだろう。
「リョウスケ」
「リスクさん?」
「同情するぞ」
「あ……ははは………ありがとうございます……はぁ」
 肩に手を置いて伝えると、脱力した声を出してリョウスケはうなだれた。



 それから気絶してるレッドドラゴンを後にして、俺達は帝国へと向かう。山脈の坂道を下っている途中、ディメイションがまた荒野の時のように走ろうかと訊ねてきたが、リョウスケは断固拒否すると強く首を振り、間違えてひねって痛めてしまい。俺が魔法で治癒する事態になってしまった。
 その光景を見てディメイションが腹を抱えて笑っていたのは、言うまでもないだろう。



「すみませんリスクさん」
「いや、断る気持ちは判らなくもないからな。まあ余り無茶はしない方がいい」
 本当はリザードマンの軍勢やドラゴンに単身で立ち向かったりした俺が言えた義理じゃないんだが……。
「にしてもすげぇな魔剣って。魔力を増幅させて魔法の力を上げるんだろ?」
「ああ、この家宝の魔剣ソルデファーには、昔からいろいろと助けられている」
 レッドドラゴンの炎に耐えられたのも、この魔剣の力と言っていい。戦闘から治療まで、数々の無難を共に打破した、俺の相棒とも呼べる。これからもコイツには苦労させるかもしれないが、俺が死ぬまでは頑張ってくれるとありがたい。
 そう魔剣を眺めていた時だ。
「あの、ちょっと触っても良いですか?」
 興味があるのか、リョウスケが少し控え目な物腰ながらも訊ねた。
「ああ、良いよ」
 別に魔剣は俺しか使えないわけじゃないし、触って呪いが掛かるわけでもない。ただ力を使う際、少し疲れるくらいだ。
 持つくらいなら問題ないだろう。
「うっ! お、重い! グレートソードって見かけの割には軽いように造られているってどっかの本に書かれてたから、どのくらいかと思ったら……こんなに重いなんて」
 リョウスケは何度も柄を握る手に力を入れて持ち上げようとするが、刀身は地面についたまま全然持ち上がらない。そして遂には力尽きて地面に寝かせてしまった。
「凄いですよ。リスクさんはこんな大きな剣を軽々と振り回してるなんて」
「俺もリョウスケくらいの頃は引きずって振り回すのがやっとだった。三年間、血の滲むような努力の末にやっと振り回せるようになって、一年掛けて魔剣の力も引き出せたんだ」
 母から聞いた話では、父がソルデファーを使いこなせるようになったのは七年も掛かったらしく、更には王家の者しか魔剣を振るえる剛力と魔力の両方を兼ね備えてる者がいなかったんだと。
 俺もその血筋故に細身の体型に似合わず剛力であり、魔力が高かったからか。父よりも早い年月で使いこなせるようになった。ただ、俺の場合は時間を掛けている余裕はなかったから、父以上の修練を積み重ねることで使えるようになったのだ。

 だから決して父を超えたと、傲慢には思ってはいけない。

「ん、そういえばリスクさんっていくつ何ですか? 僕は十七歳なんですけど」
「俺は二十三だ」
「俺は多分、八億歳だぜ」
「じゃあリスクさんは二十一か二でこの剣使いこなせたんですね。凄いなぁ」
 リョウスケが尊敬の眼差しを向けるのには少し照れたが、自分はまだ未熟だと伝えながら魔剣を受け取り持ち上げる。ちなみに、ディメイションがとんでもない年齢だなと、さり気なく耳を傾けていたのは内緒だ。
 とりあえず背中に剣を仕舞おうとしたら、ディメイションが「俺にも持たせてくんね」と好奇心いっぱいの表情でお願いしてきた。
「あぁ、構わないが」
 彼ならあっさり振りませそうだなと思いながら、俺は魔剣を渡したのだが――。
「おう、サンキュ! よっとな」
 ディメイションが剣を縦に構えた瞬間、予想だにしない出来事が起きた。
《いや〜ん!》
 奇怪な色っぽい叫びと共に刀身が爆発した!

 刀身の破片が飛び散る中、三度目の気まずい沈黙が漂った。

「……ありゃ? 爆発したぜ?」
「何でだよおぉ! おかしいだろ! 何でディメイションさんが持ったら刀身が爆発すんのさぁ!」
「なぁ、爆発した時にへんな声が聴こえなかったか?」
「いや! 聴こえはしたけどさぁ――! て、リスクさん!」
「は……はは………王家の………家宝の魔剣が…………ボンッて……ぁ」
 ショックだった。
 あまりの事に訳が分からなくなり、俺の意識は吹っ飛んだ。
「うわあああああ! リスクさんしっかりしてぇ!」
 薄れゆく視界の中、慌てふためいたリョウスケが叫んでいるのが微かに見えた。



 夕方、俺は目を覚ました。
 岩に背を預ける形で寝かされていた俺は、まだ覚醒してない目で辺りを見回し、彼らを捉えた。
「どうしよう……刀身の破片は出来るだけ集めたけど、直すのは無理だよね……」
 掌で口を覆い、難しい表情でバラバラの刀身を見据えるリョウスケ。
「大丈夫さ、これくらい唾つけときゃ直るぜ!」
 そう言いながら破片一つ一つに唾を付けて修復を試みるディメイション。
「直ってたまるかぁ! 唾で直る魔剣てどんだけだよ!」
 確かにそうだ。これで直ったら奇跡を通り越して異常だ。
「ノンノン! 昨日言ったろ。俺は唾で治癒できるってな!」
 これまた天に手を翳してガッツポーズを見せるディメイション。だからその自信と根拠はどこから来るのだ?
 それに刀身に全く変化無いじゃないか。
「ちげえぇ! 治すと直すは意味が違うから! これは物! 生物じゃないから無理!」
「えっ? マジで? ……チッ」
「何でここで舌打ち! 悪態付く訳が解んないよ!」
「よし、良ちゃん頑張れ!」
「オイイ! 誰のせいで壊れたと思ってんだぁ!」
「もちろん俺さ!」
 自覚はしてるのか!
 そんな不敵な笑みを浮かべて自分を指差すディメイション。明らかに反省とか、罪悪感とかを感じてるようには見えない。
「自覚してるなら、もう少し申し訳ないって顔をしろぉ!」
 顔を真っ赤にして叫ぶリョウスケ。怒ってくれるのはありがたいが、本人は鼻をほじくってまるで聞いてないぞ。流石にこの態度には俺も怒り、立ち上がって一言ぶちまけてやろうと思ったが――。
「へへへ、そう怒るなよ二人共。直す方法が無い訳じゃないぜ」
「へ?」
「本当か!」
「リスクさん! 起きてたの?」
 ディメイションは気付いてたようだが、リョウスケは自分の後ろに立つ俺に驚きの様子を見せていた。そんなことよりも今は魔剣の修復だ。
 ディメイションが言ってた直す方法とはいったい?
「ま、正確には、修復っつーよりも、新しいのを貰うって方が正しいかもな」
「貰う?」
「あとちょっとしたら来るはずだぜ。一応、良ちゃんが破片を必死に集めてる時に連絡しといたんだ」
「え、あの時サボってると思ったら、連絡とってたのか。でも誰に?」
 俺達が疑問の眼差しをディメイションに向けていると、彼は「来たぜ!」と俺達の後方の空を指差す。流されるがままに振り向くと、夕陽に重なるように黒い割れ目があり、その割れ目から人影が降りて来た。
 夕陽を背にしてあるため影が濃くて見えないが、徐々にこちらに足を進めてくるに連れて、次第に姿がくっきりと見えてきた。
 漆黒の無造作に上げた黒髪、同色の瞳に若くディメイションのようにつり上がった目つきだが、どこか覇気が観られない。しかし観ていると奥に吸い寄せられてしまいそうで、不思議な違和感を持った目をしている。
 そんな右肩を露出したオーバーコートを羽織った、全体を黒で染め上げた青年が、俺達の前で立ち止まる。ディメイションは後頭部に腕を組んだまま前に出て、左片腕だけ崩し手を上げて挨拶した。
「ようクロちゃん! ちょっと遅かったな」
「ああ? 遅かっただぁ? テメェいきなり呼び出しやがって何様だ。こっちはいろいろと忙しいんだよ。――さっさと用件を言え」
 面倒臭そうに頭を掻き、青年はディメイションを睨むように見据える。
「んっとな、実はかくかくじかじかで」
「……意味わかんねぇ。ちゃんと説明しろ」
 訝しげに眉をひそめて、青年は苛立った声を出す。しかしディメイションは全く動じず、寧ろ親しげに肩を組んで事情を淡々と説明する。
「――ってぇ訳さ」
「なる程な。……下らねえなぁったく。つーか、テメェ毎回毎回面倒起こすんじゃねーよ! 何度言ったらわかんだボケ!」
「あっはははは! まあまあ、とりあえず頼むわクロちゃん」
「うっせぇよ。ん、これか………魔剣ソルデファーか。これまたレアな物を壊しやがったな、テメェ」
 ディメイションを一瞥して言い捨てると、青年は顎に指をさすらせ壊れた魔剣を物珍しげに眺めていた。
 しかしそれ以前に――。
「あんたは知ってるのかこの剣を!」
 俺が問い掛けると、青年は顔を上げてこちらを向き、軽く頷いた。
「あぁ、知っている。この世界ではたった一つしかない、この世界では最強の魔剣だからな」
 この世界で最強の魔剣?
 それほど凄い剣だったのか。いつから存在しているのかとか謎に包まれていた剣を、彼は知っているようだ。
 いったい、彼は何者なんだ?
「あの、ディメイションさんの知り合いみたいですが。あなた一体何者なんですか?」
 リョウスケが俺に替わって訊ねると、青年は片方の眉を吊り上げて彼を見据える。
「あ、俺か? 俺は、通りすがりのクロノスだ」
「え? と、通りすがり?」
 困惑の表現を浮かべるリョウスケ。そりゃそうだ。言っている意味が判らないし答えになっていない。ディメイションに喚ばれてきたのは判るから、何者かをちゃんと答えてほしいんだが。
「まあ、俺のことは気にすんな。今はコイツを直したい。それ以外に必要性は無い……違うか?」
 そう呟いたクロノスと言う青年は、右手を壊れた魔剣に翳した。すると魔剣は黒く薄い網膜のようなものに覆われ、彼の手の動きに合わせてふわりと浮かび上がる。そこから先、俺は目を疑った。バラバラだった刀身が徐々に元の形に復元し始めたのだ。


「よし、これでいいだろ。ほらよっ」
 直ったかどうか片手で軽々と魔剣を振り回し確認した後、クロノスは俺に剣を渡してくれた。
「済まない。君が何者かは知らないが礼を言う」
「良かったなリスク! へへ、クロちゃん大義名分だったぜ!」
「テメェはどの面下げてそれ言ってんだコラ。つーか、意味判って言ってんのか?」
 憎らしげに言うクロノスだが、この事態の発端となったディメイションは無邪気な笑顔を見せていた。


 しかし、不思議な力だ。
 突然現れたクロノスと言う青年。
 彼は本当に何者なのだろうか。


「それは次回で俺が説明してやるぜい! 次回、渡り鳥のクロノス! こうご期待だぜ!」

 突然天に手を翳し叫ぶディメイションだった。


はい、あとがきっす。
今回参加したクロノス。彼はヒュンケル先生作品の登場人物です。このように神様と関わる次元関係のキャラが関わるのがディメイション・ザ・アドベンチャーシリーズっす。
ですので、あ、自分の世界を舞台にしてほしいとか、ゲストで出したい思ったりしたら、遠慮なくメッセージどぞ











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