ディメイション・ザ・アドベンチャー2(12/14)PDFで表示縦書き表示RDF


やっとヒロインの登場!
ディメイション・ザ・アドベンチャー2
作:宮座頭数騎



エピローグ『いまさらなヒロイン』


 次元の狭間こと、暗闇が広がる漆黒の世界。
 この空間の中で、星のように煌めく数々の光。それは、存在する異世界への出入り口。


『くそっ……』
 そんな空間を漂うように移動をしていた青白いガスは、器を無くしたマダンの本体。魂そのものとも言える存在だった。
『まさか、この私がこんな醜態を曝すとは……。ハァァ……タキオン様にどう伝えようか』
 どこか切なそうに呟くマダン。それもそのはず。実はマダンの器であった女性の体。あれはマダンの主である、タキオンから授かった肉体であった。
 自分が崇拝するタキオンから貰い受け、かれこれ数万年も大事に使っていた器。それがまさか、次元の悪魔として貢献に励んでいた最中、ディメイションと言う次元の神によりこうもあっさり敗れ、器を破壊されるとは全くの予想外であった。加えて、タキオンに献上する予定の品だった、最強とも呼べる器のリヴァイアサンを失った事態。更にはその異世界の住人の一人でしかないリスクに取り憑くも、たかが気合いで追い出されてしまうという始末。
 上級の次元の悪魔である彼女はこの上ない屈辱の連続に、プライドは大きく傷付いていた。
『くぅうう……それもこれも、すべてはディメイションのせいです!』
 すべて順調だったのが、たった一体の次元の神の乱入により滅茶苦茶にされてしまった。そんな屈辱を思い返したマダンは、改めて怒りを露わにし、吐き捨てるように言った。
『この仕返し、必ずしてやりますよ。今度は私の考えた遊びで、たっぷりけちょんけちょんにしてやります』
 あのジャンケンゲームで、ディメイションにまんまとしてやられた事が忘れられないのか、変なところを根に持つマダンは、どこかズレた仕返しを決意する。
『とりあえずはタキオン様へ報告して、新しい器を貰い。今度こそディメイションを潰すとしましょう』
 マダンが少し嬌笑めいた口調で、打倒ディメイションを企むその時――。
「生憎だけど、それは無理よ……」
 突如として、マダンの後方から、凛とした女性の声がした。
『な、誰だ!』
 後方に視点を変えたマダンは、目の前にいた存在に、より驚愕の声を出す。
『なっ――貴様は! ま、まさか!』
「久しぶりにディメイションの力を近くで感じたから、この辺かと思って来たけど……まさか、次元の悪魔に会うとはね」
 確実に獲物を補足しそうな、野性を宿した切れ長で黄金の瞳。肩まである少々無造作な、白銀色に煌めく髪の間からは、突き出るようにとがった狼の耳が見える。
 白銀の獣の体毛を纏ったスタイルの良い身体。ふさふさとした尻尾をしなやかに揺らす。さながら白狼を想わせる獣人。
 神妙な雰囲気を漂わせる、彼女の名は――。


『時の女神……ラミアグレス!』


 焦りを含んだ声を出すマダンに、ラミアグレスの鋭く獣のように尖った爪が指差す。
「あらかじめ忠告しておくわ。あんたに逃げ場は無い。おとなしくすれば、楽になるから……言うとおりになさい」
『ヒッ!』
 一見して無感動な表情を向ける彼女。だが、威圧感ある声色に、マダンは戦慄を覚えた。

 すぐにここから逃げなければ、喰い殺される。

 そんな獲物になった気持ちに追い込まれ、マダンは脱兎の如くと言わんばかりにラミアグレスから飛び出すように逃亡した。 だが――。
「狼は……狙った獲物を、そう簡単には逃がさない」
 そう呟くラミアグレスは、ゆっくり頭上に右手を翳す。掌の上で銀色に輝く粒子が集束され、光は次第にリング状を形作る。
『奴を捕らえて――キャプチャーリング!』
 翳した右手で光のリングを掴み取り、ラミアグレスはリングに遠心力を載せるように身を数回転させ、言い放つと共にリングを投げた。
 リングはジグザグに荒々しい動きでマダンへと飛んで行き、回り込んで彼女をリングの中に入れると、真紅の電撃を迸らせる。
『ぐぎゃあああ!』
 リングから放たれる電撃により全体が麻痺し、その魂を完全に拘束されてしまったマダン。苦痛の叫びと共に、動きが止まる。
 苦しみ唸るマダンに、ラミアグレスは浮遊したまま、威圧的な冷たい雰囲気を漂わせて忍び寄る。
『ひっ、ひぃぃ! お、お願いします! 見逃してください! どうか、どうか命だけはぁ!』
 必死に命乞いを試みるマダンだが、ラミアグレスの表情には、同情や哀れみの色は全くない。大きく輝く獣の瞳に青白いガスこと、マダンの姿を映し、ただただ無感動を向ける。
「あんたを殺すつもりはない――。ただ、見逃すつもりもない……」
 感情の籠もらない冷たい口調で、ラミアグレスはマダンへと左手を添える。
「生まれ変わって、出直しなさい……」
 ラミアグレスの左手から、白い炎が現れ、陽炎のように揺らめく。刹那、空間がマダンを中心に、ぐにゃりと歪み始める。
『ぐぎぎぎぎ……!』
 歪みが酷くなるに連れ、共にねじ曲がっていくマダンが、奇妙な呻きを上げていく。
「今度は、そんな奪うだけの悲しい時を歩まず。歪みの無い、清らかな未来を歩みなさい」
 マダンが螺旋を描くような形にまで歪んだ時、今まで無慈悲だったラミアグレスの表情が優しく、しかし哀しみが入り混じるような微笑みを見せる。それと同時に、彼女はマダンに翳している白炎を纏った左手を、潰すかのように強く握り締める。
『あ……ああぁ……あぁぁ………タ………タキオン様あぁ……』
 すると、渦状に歪んだマダンは一気に凝縮され、次の瞬間には金色の粒子となり、虚しく飛散した。
「あんた幸福。祈らせてもらうわ……」
 空間の歪みが薄れ、正常へと戻る中、ラミアグレスはふっくらとした胸の谷間に手を当て、うつむき加減に切なく呟いた。




「ありゃ?」
 漆黒の空間を漂うように移動していたディメイションが、首を傾げる。
「どうしたのディメイションさん?」
「マダンが消えちまった」
 唐突に告げられた言葉により、彼の背中にしがみついている良助の顔に、驚愕の色が浮かぶ。
「えっ? つまり、マダンは死んだってことですか?」
「まあ、そんなとこだな。それよりもマダンを消滅する前に感じた波動。ありゃあ、ラミちゃんだな」
「え? ラ、ラミちゃん?」
 一体誰の事を差しているのだろうか?
 そう思いながらも困惑する良助に、ディメイションは語り出す。
「マダンがちょっとだけさり気なく言ってたろ? 時の女神ラミアグレスのことをさ。俺の姉貴分のようなやつなのさ、ラミちゃんはな」
「あ、姉貴分……?」
 初耳でもある分、かなり意外だろう。まさかディメイションにそんな関係の神がいたなんて。それがどんな女性なのか、良助には全く想像も付かなかった。
 少なからず、ディメイションが姉貴分と慕うくらいだ。もしかしたら半端ないくらい変わり者なのだろうかと、少し失礼で申し訳ないと思いながらも、彼は息をのむのだった。
「まあ、近いみてえだし。行ってみるか」
 そう軽くのんびりとした口調で言うと、ディメイションは少し移動速度を速めた。マダンが消滅したかと思われる場所を、彼らはただ目指すのだった。




 新たな冒険と戦いが待っているとも知らずに――。





 どうも、あとがきっす。
 エピローグ終了と共に。続くように終わったこの展開。そう、続きます。まだまだ冒険と戦いは序章を終えたばかりです。
 実は、このエピローグ。当初はマダンの一人称で語ろうか迷いましたが、読んで判ったと思いますが、視点移動のために、三人称にしました。
 しかし、三人称の機会はこんな時くらいです。次回の章から、一人称に戻り、ラミアグレスの視点で物語は語られます。
 ちなみに、描写が微妙だったでしょうからここで言いますが、ヒロインは服は全く着けてません。そして彼女の顔付きは妖狐玉藻伝の主人公、玉藻美狐と同じです。これに付いては、双方の物語が進むに連れ語られて行くでしょう。今はツッコミは無しで(ぇ











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