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深窓のご令嬢が凡人のぼくに恋を教えてくれるそうです 作者:えま
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第2話 入部

「今年から作ろうと思っている恋愛塾に入ってくれませんか?」
 そう彼女は告げたのだった。一体この人は何を言っているのだろう?
頭の大事なネジでも外れてしまったのだろうか
そんなぼくの反応を見て呆れたように言う
「だから恋愛塾に入りませんか?と聞いているのですが?」

「それは…分かりました。しかし学校はそんな部活認めないのでは?」
 実際認められるはずがない。そんな部活聞いたこともないし、アニメの中でも
そうそう無いぞ…しかし彼女は怯むことなく
「学校の許可はいただきました。部として認められるには部員が四人必要なんです。私を含め三人の入部は確定しています。あと一人部員が欲しいのですが…」

「それで恋情が欠けているぼくを呼んだと」

「はい。私は部を成り立たせるために後一人部員が欲しい、あなたは自分が知らない《恋》が知りたい……利害は一致しているはずですが?」
 確かに断る理由がない。むしろぼくから頼み込む方が正しいだろう
「分かりましたよ…ぼくも恋愛塾に入部します」

「本当ですか⁉ありがとうございます!それでは放課後東校舎三階でお待ちしています!」
 子供のように喜んで彼女は職員室に向かった
それから授業を終え、教科書の受け取り入部届を提出した後ゆっくりと東校舎三階へと向かった。
僕たちが普段使う教室などは西校舎に属する。東校舎は職員室や物置だけで殆ど人の気配が無かった。
自分の靴の音、呼吸の音、更には鼓動の音さえも聞こえてしまいそうな位に静かだった。ぼくは恋愛塾があるとされている部屋の前まで来た。中からは話し声が聞こえてくる。君敵さんと後は知らない声が二つ。ぼくは深呼吸を繰り返しドアを開けた。そこには学校だとは思えないような風景が広がっていた。大きな背の低いテーブルにそれを囲む四つの一人がけソファー。奥の方には大きなテレビとビデオゲーム。更にはキッチンまでもが揃っていたそんな常識外れの空間に目を奪われていると
「あっ!月之瀬くん来てくれたんですね!どうですかこの空間?凄いと思いませんか?」
 凄くご機嫌だったのか凄くテンションが高い。教室で見る彼女とはまた違う印象を持たせてくる。
「ええ…まあそれにしてもすごいですねこの部屋」

「そーでしょー?それでは皆さん集まったところで自己紹介なんていかがでしょうか?」
 そう彼女が提案すると彼女の向かいに座っていた、一言でいってしまえばサッカー部にでもいそうな爽やか系イケメンの生徒がぼくの姿を確認した後、その場に立って口を開く。
「俺の名前は七瀬匠(ななせ たくみ。1年B組だ、好きなように呼んでくれて構わないよ」
 じゃあ次はっと明るい声を出し、少し茶色がかったショートヘアーで顔立ちは少し幼く、活発的な印象を持たせる少女が口を開く
「私の名前は椿楓(つばき かえで)。匠とは幼馴染みで同じクラスでーす。
 匠同様好きなように呼んでねー」
次はぼくの番かあまり人前で話すことに慣れていないぼくだが、椿さんが作ったこの空気を壊すわけにはいかない。勇気を振り絞り震える口を開いて
「ぼ、ぼくの名前は月之瀬満。好きなように呼んでください」
 全員の自己紹介が終わり辺りに沈黙が訪れる。その沈黙を真っ先に破ったのが
君敵さんだ
「じゃあ皆さん、自己紹介も終わったところで早速、部の目標を決めましょうか」

「まあ目的があったほうが色々いいよな」

「でも具体的に何をするの?」
 それでは…と机をバンッと叩き全員の注目を集める。まるでその質問の答えを
あらかじめ用意していたかのように
「ここにいる私を含めた全員が恋というものをきちんと理解し、恋人を作る。というのはどうでしょうか?」
 部室に爆弾を落とされたかのような衝撃が走る。そこにいる君敵時雨を除く全員がその場で硬直した。確かに部の目的としてはシンプルできちんとした内容だ。
部の目的を考えろと言われたら恐らく全員がその答えに行き着くだろう。
恋愛塾なんて名前の部活だからそのくらいの覚悟はしていた。しかし覚悟と予想があったとしても、回避不可能なくらいの破壊力がある目的だった。
しばしの沈黙があってから椿楓が口を開く。
「まあ、妥当なんじゃない?私はそれで良いわ」
「ならおれも賛成だ。結局そうなることは分かってたしな」
ぼくも君敵さんに首を縦に振って賛成と伝える。
君敵さんは嬉しそうに微笑んだ。しかし、しばらくして彼女は少し気まずそうな顔を見せる。恐らくだが彼女の考えていることが分かる。この部活にいる意味。それは恋愛を知らない、恋情を持っていないからだ。
ぼくはifの話が嫌いだ。もしかしたらなんて、想像だけさせてなにも残さない。
得られるのは劣等感と喪失感だけ。別に過去にトラウマがある訳じゃない。
ただただifの話が嫌いなだけだ。
しかしこの部活の目標を聞いたときにifの想像をしてしまった。
『もし、誰かに恋情が芽生えたら?』『もし、この中の誰かが誰かを好きになったら?』 
恐らく彼女も同じことを考えていたんだろう。楽しそうに団らんしていた七瀬くんと椿さん、そしてぼくに慎重な面持ちで問いかける。
「非常に申しにくいのですが、皆さんに大切な話があります。
私はifの話が嫌いです。もしかしたらなんて考えたくありません。ですが、ここで
少しifの話をします。もしこの中の誰かが誰かを好きになったとき、必ず私に報告してください。その人の恋を必ず成就させてから、その人には退部していただきます。この部の目標は『ここにいる全員が恋を理解し、恋人を作る』です。
部の目標を達成出来た方はここにいる全員で祝福しこの部から去っていただきます。」
 分かっていた。分かっていたのにいざ口に出されると、心臓が痛むような感触に陥る。後の二人も予想はしていたのか、一人として口出す者は居なかった。
「なんだか嬉しいような悲しいような気持ちになるでしょうね」
 沈黙を破ったのは椿さんだった。今日だけで気まずい雰囲気を二回も破った。
なかなかのメンタルの持ち主だ。実際彼女がいなければこの話題を持ち出すのは不可能だっただろう。彼女のムードメイク力にはこれからも助けられそうだ。
「それでは今日はこの辺でお開きにしましょう。明日からは本格的に活動しますよ!明日の放課後にまたここで会いましょう。私はこれから用事があるのでお先に帰らせていただきますね。」
彼女の一言で今日は解散になった。
七瀬くんと椿さんはぼくと反対方向に帰っていった。今までもそうだったが、今日も帰りは一人だ。
学校から帰る途中に下らないifの考え事をした。もし七瀬くんが誰かを好きになったら。もし椿さんが誰かを好きになったら。もし君敵さんが誰かを好きになったら。もしぼくが誰かを好きになったら。そのときは素直に祝福してやれるだろうか。素直に喜べるのか。もし人を好きになったら、ぼくの世界はどんな風に変わるのだろう。そんな事を考えていると知らない間に家についていた。ぼくの家は至って普通の二階建ての家でマンションが多いこの辺りにはかなり珍しい家なのだが、ぼくはこの家が好きだ。自分が自分でいられるからだ。ぼくはこの家に一人で住んでいる。両親は海外に行ったまま帰ってこない。振り込みが行われているから生きているのは確かなのだが、昔幼かった頃に父に言われた言葉があった。
「もしお前に好きな女が出来たとしよう。その時は笑顔でそいつに向かって言ってやるんだ。『周りにいるやつらの独自理論なんて知ったこっちゃない。俺たちの俺たちだけの方程式を作ろう。一人じゃ出来ない。だから一緒に作ってくれ。
ずっと、永遠に。彼女として、妻として』
数学者だった父の言葉だ。他の記憶はないがこれだけはきっちりと覚えている。幼い頃からifの話が嫌いだったぼくだが、その言葉だけは特別だった。
未だに好きな人が出来ないけれど、『もし』誰かを好きになったら、ようやく初めて、父の言葉の意味が分かるかもしれない。
そんな事を思い出しながら、自宅のドアを開け、誰もいない我が家に「ただいま」と短く決まり文句を言い、今日が終わる。
カギカッコが復活して喜んでいるえまと言うものです。
今回は入部編。楽しんで頂けましたか?
あの文中のお父さんのセリフ、実際にぼくが父に言われた言葉だったんですよね。
父は数学者ではありませんし僕がそれを聞いたのはつい最近の事なんですけどね笑
次回は部活編にしようかと考えています。
短編小説も近いうちに出していきたいですね
感想待ってます(^з^)-☆
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