002*アメジスト〔006〕
旦那様には、お嬢様がいた。
水遊びをしていて事故に遭い、亡くなった。
奥様は、そのとき傍にいたのに、助けられなかった。
そして奥様は、そのことが原因で精神を病み、
お嬢様の後を追った。
お嬢様は、九つで亡くなった。
あたしは、お嬢様の面影を、
重ねられていたのであったのか。
九つで亡くなった、お嬢様。
生まれてきただけで、旦那様に喜ばれ。
死んだだけで、こんなに、悲しまれて。
あたしは。
生まれてきて、親に喜ばれたのは。
売られて、金になったときだけだった。
あたしが、死んだなら。
だれか、悲しんでくれるだろうか。
稼ぎ頭が、突然いなくなったら、悲しいというより、
みんな、困るだろうな。
でも、それだって。
花形は、次から次へ、目白押し。
この座を得たがっている遊女は、それこそ星の数。
生きているだけで、旦那様に幸福を与えて。
死ぬだけで、旦那様に、打撃を与える、お嬢様。
あたしは。
舞上手、歌上手、話上手で、床上手。
なんでも、上手でなかったら。
ここには、いられない。価値が、ない。
生きてるだけじゃ、価値がない。
死んだらなおさら、価値が無くなる。
涙が出た。
泣きじゃくった。
旦那様は、うろたえた。
どうしよう、あたし、旦那様が好きだ。
もうとっくに亡くなった奥様や、お嬢様に、
嫉妬するくらい。
どうしよう。
あたし、このひとが。
好きだ。
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