012*アレクサンドライト〔015〕
おそろしいほどの、沈黙。
それを破ったのは、サンドラの衣ずれ。
ハッと息を呑み、必要以上に身を縮めて、
はだけた前を、掻き合わせる。
いじらしく、しおらしく、怯えた可憐な少女の仕種。
悪事を働く気負いに満ちた男たちの情欲を煽る、仕種。
「おまえ、女だったんだな」
ひとりの男が、ぽつりとつぶやく。
頭上から降り注ぐ声に、
サンドラが、ぴくりと肩を震わせる。
「おまえ、女だったんだな」
熱に浮かされたように男は繰り返し、
サンドラに、のしかかってきた。
サンドラは悲鳴を上げ、身をよじって暴れたが。
ほどなく、もう一人の男に両腕を掴まれ、
口を塞がれた。
「おやめなさい、あなたたち、
わたくしを目当てにやって来たのでしょう!
ならば、この身を存分に嬲るがよいっ、
ニコラを傷つけることは、許しませんッ!」
「やってやるさ、女伯爵どの、お望みどおり、ご存分にな」
「だが、あんたは後まわしだ。まず、あの娘をいただくぜ」
サンドラを助けようとした女伯爵エメラルドの動きは、
別の二人に、封じられた。
「あいつ、処女なのかな」
「だろうな。なにせ嫁入り前の貴族の令嬢なんだからよ」
「うお、たまんねえ。高貴な女って、どんな味なんだろ」
「もうすぐわかるさ、うへへ」
「ちがいない、がははは」
「ああ、この女伯爵も、いい匂いがするなあ」
「こっちはこっちで、始めちまおうか?」
「まあ待て待て、
おれはあいつの、犯されてるとこが見たいんだよ」
「おお、それもそうだな」
彼らは女伯爵を押さえつけながら、
さも楽しげに、無駄口を叩く。
一方、サンドラにのしかかった男は。
いまだに何度も、おまえ女だったんだな、
女だったんだなと、うわごとのように唱えつつ、
サンドラの身体を、撫で回していた。
「おまえ、女だったんだな。本当に、女だったんだな。
信じられない、夢みたいだ、
おまえが女だったらと、何回思ったか、知れやしない。
もうこの際、男でもいいからやっちまおうかとまで、
思いつめてたんだぜ……ああ、信じられない、
おまえ、女だったんだな、本当に、女だったんだな……」
繰り言をつぶやきながら、贈り物の包み紙を開けるように、
サンドラの上半身を脱がせ、
胸をしめつける包帯を、もどかしげに解いてゆく。
口を塞がれたサンドラは、くぐもった唸り声を上げながら、
いまだ自由な足をばたつかせて、力のかぎり、抵抗。
「おい、何をボーっと突っ立ってるんだ、
おまえも手伝え、足を押さえろ」
ひとり、呆然とたたずむ仲間に、
サンドラの上肢の自由を奪った男が、怒鳴る。
「だ、だって、ニコラは仲間じゃないか。
おれは、おれは、なんか、気がすすまねえよ」
「けっ、なに言ってやがる、
こいつは、おれたちを騙してたんだぜ。
女なんか、仲間じゃねえよ」
サンドラの首を強引に捻じ曲げて、瞳を覗き込み、
無慈悲に、宣告。
「女はみんな、男のオモチャさ。
穴に突っ込んで、出し入れして遊ぶ、オモチャなんだ。
なあ、そうだろ、お姫さま?」
「見下げ果てた、野郎だな」
副船長の、冷徹な、声。
全員が、動きをとめ、戸口を振り返る。
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