002*アメジスト〔003〕
あたしは、そこらの安女郎とは違うのよ。
部屋に上がった当初は、傷をつけられないように、
監視役が付き添った。
置屋にとって大事な上玉だからこそ、
上等の客しか、まわってこない。
舞、歌、楽器、誰も右に出る者はいない。
つま先からも喉からも指先からも血が出るまで、
修練を積んだ、賜物。
将棋の腕も、名人級。
こてんぱんに打ち負かして悔しがらせることもできれば。
手に汗握る接戦に持ち込み、あげく花を持たせ、
それと勘付かれることなく勝たせてやることだって、できる。
これまで、仲間の様々な末路を、見てきた。
身体を壊して、ろくに看病もしてもらえず、
寺に投げ込まれる者。
好いた男と逃亡し、連れ戻されて酷い折檻を受ける者。
使い物にならなくなって追い出され、
打ち捨てられて果てる仲間が、圧倒的多数。
あたしは、そうはならないわ。
あたしが、出て行くときは。
あの大手門から、行列に見送られて。
皆からの羨望と嫉妬と祝福を、一身に浴びるのよ。
ここでのし上がって、頂点を極め、
自分の手で、自由を勝ち取ってみせる。
そのために。
利用できるものは、なんだって利用するわ。
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