002*アメジスト〔002〕
ありふれた、きらびやかな地獄の一夜。
紫水晶の間で、彼を迎えた、そのときは。
「ようこそ、いらっしゃいました」
外向けの微笑を貼りつかせながら、胸の内では。
客を値踏みし、出方を観察。
初めて見る顔。
それに、老人。
「どうぞ、こちらへ」
取った手は、老人にしては、しなやか。
苦労を知らぬ、富豪の手。
いささか心許無い足取りは、
年のせいか、戸惑いのためか。
「……じつは、こういう場所は、初めてなのだよ。
商売仲間に、強引に連れてこられてね」
下手な言い訳。
にっこり笑って、受け流す。
そんなことを言っていても。
寝床へと押し倒したら、
本性をむき出してくるに違いないくせに。
果たして。
寝床へと押し倒してみれば。
本気で怯え、涙ぐむ有様。
からかうのも気の毒になるほど、恐れおののいて。
「……わかりましたよ。悪うございました」
すっかり鼻白んだ幼い遊女は。
老いた客人の上から、どいた。
布団の端に、ちょこんと腰かけ、
客人が衣服を正すのを、行儀良く待つ。
「真面目な話、きみはいくつだね?」
客人も、少女の隣りに並んで腰かけ、
咳払いをして、こう問いかける。
「真面目な話、十四ですよ」
濃密で、官能的な香ただよう淫靡な褥にいるというのに。
そうしていると、まるで。
真昼の庭で、祖父と孫娘が、ひなたぼっこをしているよう。
「一体いつから、その……こういう仕事を?」
興味本位、というやつね。
自分とあまりにも違いすぎる境遇の人間の話を、
聞きたいんでしょう。
一見さん相手なら、ありがちなこと。
いいわ、その好奇心、満たしてあげる。
「姐さんについて、お座敷に上がったのは六つのとき、
自分のお部屋を持ったのが、九つのときよ」
淡々と、答える。
「九つ……」
客人の、同情めいたまなざしが、気に障った。
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