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青春という名の日々に
作:tensuke



6.大沢たかし− 恋に悩む日々を


6.大沢たかし 恋に悩む日々を

高2の秋 高校生活最期のビッグイベント 京都・奈良の就学旅行があった

「指で唇に塗るんだよ」
「へぇ・・・・・柚子の香りがするんだ・・・」
「俺 いつも冬になると唇がガサガサになるから」
「へぇ・・・・」
「大沢はならない?」
「・・・・気にしたことなかった・・・・」
「タバコ 吸ってると余計になるよ」
「えっ?寺山 タバコ吸ってたっけ??」
「はははは(笑)やだな 大沢の事いってるのに」
「俺?・・・ああ・・・そうね」
「タバコを吸う女の子はよくないよぉ 肌も荒れるしキスが苦くなる」
「・・・・えっ・・・・・」
「はははは(笑)」
「なっ・・・からかうなよ 寺山」
「ははは(笑) ああ でも二人とも吸ってたら気にならないのかなぁ・・・・」

観光名所を巡り歩き回っていた途中 立ち寄った土産物店で
宏は俺に見せつけるようにして 試供品のリップクリームをその長く
綺麗な指先で自分の唇に塗って見せた
宏の 男にしては少しふっくらと厚い唇が ふるりと桜色に艶やいだ
俺は目の前の指先と唇から視線が離せなくなった
頭の中が白く霞むようだった

タバコ?キスが苦くなる?
二人とも吸ってたら気にならない??
どうして俺にそんなことを言うんだ?宏・・・俺の気持ち・・知らないで・・
大沢の思いは千々に乱れた
そんな大沢の思いを知ってか知らずか
宏はリップクリームを塗った唇を尖らせるようにして
隣にたつ大沢の顔を見る

「て・・・寺山?」
「んっ ほら このクリーム気持ちいいよ」
そう言って 宏は艶然と微笑んだ
そして 何事もなかったように 店の中を見回すと
古い着物の生地で作られた可愛い鹿のぬいぐるみを手にとった
「これかぁわいいなぁ 何色のにしよっかなぁ・・・」
「えっ・・・買うの?」
「だめ?」
「だ・・だめな事ないけど お土産?」
「いや 俺の」
「寺山・・・の・・・・」
「うん」

可愛いな・・・そう思った とてもとても愛おしかった
俺のこんな想いを宏は知らない
ただ一人 俺の宏への想いを胸におさめている彼女
彼女は宏の幼馴染み
俺は初めて彼女と宏が並んで歩く姿を見かけた時
心臓をじかに鷲掴みにされたようなショックを受けた
宏のガールフレンドだと勘違いしたせいだった

その後 彼女が俺にバレンタインデーのチョコレートをくれるに至り
俺は宏と彼女の関係を知った
そして 俺は姑息にも彼女に全てを打ち明けて
どうにか宏の傍らに自分の立ち位置を手に入れた
さして時間もかからずに 俺は二人と親しい友人になった
宏が俺に寄せてくれる信頼と 向けてくれる好意は友人のそれだ
親友 という響きが俺にはとげとげしく胸に刺さる
そんなものになりたいんじゃない
俺は
俺は宏をこの手に抱きたいのだ

宏の白いうなじが目の前にある
真剣な眼差しで 可愛いなぁとつぶやきながら
ぬいぐるみを選んでいる宏の後ろ姿
俺より少しだけ背の低い宏のうなじが 少し見下ろす目の前にある
吸い寄せられそうな白い滑らかな肌

このうなじを 少しきつく吸ったら 
白い肌に きっと淡い紅色の花が咲くだろう
あの唇をそっと吸ったなら 甘い吐息がこぼれるだろうか
この腕の中に抱き締めたら
あの胸元にひっそりと息づいている小さな果実を啄んでみたい
いつか部活の後 大浴場でみかけた宏の裸身が蘇る
ひきしまった腰 男にしては丸く形の良い小さな尻には小さなえくぼがあったっけ
そんな不埒な想いに沈みかけた時
ふと振り向いた宏の瞳と視線が合った
何もかもを見透かされているかのような その艶めいた視線
(俺を抱きたいの?)
そう挑発しているかのような宏の眼差し
ありえない
ありえない
宏は俺の気持ちなど知りはしない
高鳴る胸の鼓動が 宏に聞こえてしまいやしないかと
俺は無意識に店の外へと踵をかえす

「待って 大沢 これ買ったらいくから・・・・・」
「・・・・そ・・外で待ってる」
「うん」

背後からかけられた宏の声から逃れるように店を出た
いつか・・・いつかこの想いを
自分で持て余し 手放すのか
それとも
いつかこの想いを宏にぶつけてしまうのか
その時
俺たちは どこへむかっていくのだろうか・・・・












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