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青春という名の日々に
作:tensuke



22−2.吉田の懺悔


吉田の声は神妙で 先ほどまでのどこかふざけたような軽い雰囲気は払拭されていた
宏はその吉田の様子に 警戒をとかないまま素直に従う事にした
部屋へと促され宏は吉田についてマンションへ入った
部屋はモノトーンの都会的なインテリアで統一され
あまり生活感のない いかにも独身男性の一人暮らしな様子であった
「座ってて・・・コーヒーいれるから」
吉田の指し示したソファーに宏は腰をおろした

どうしても前回 吉田に薬を飲まされて襲われかけた都心のマンションと
この吉田の部屋の内装が重なって見えてしまい
宏は落ち着かず固い気持ちをほぐせずにいた
そんな宏を知ってか知らずか
コーヒーメーカーの準備をしながら吉田は柔らかな声で宏に話しかける

「寺山クン 入院してる友だちって高校からの同級生なんだってね」
「・・・・そんな事まで調べたんですか」
「ああ・・・君の事 何でも知りたくてね 可笑しいだろいい大人がさ
アイドルのおっかけみたいに君の事知りたくて
君の事務所の子とか モデル仲間とかにきいて廻ってさ」
吉田は振り向くと 照れたような小さな笑みを見せた
その顔はどこか居心地が悪そうで
いたずらを叱られた小さな子供のようだと宏は思った

「・・・・吉田・・・さん・・・」
「僕はさ いつも結構軽い奴を気取ってるだろ?だから
周りもそのつもりで付き合ってくる奴らばっかりでね
そんな中で 君は随分かわった子だなぁって・・・・気になってたんだ」
「・・・・・かわった?」
「うん・・・なんだかね モデルなんてやってる奴らはさ
みんな自己顕示欲の塊っていうか 自分が大好きな奴らばっかりなんだ
それなのに 君と来たら自分の事なんてまるで判ってないっていうか
どう見られるとかどう見えるなんて事に全く無関心みたいで」
「・・・・そんな・・・」
「新鮮だった でもそれも君のスタイルみたいなもので
そんなキャラを気取ってるのかなとかうがってみたりして
結局のところ イマドキの軽いちゃらけた若者なんじゃないかって
手に入れたいって 無茶してもいいとか思ってしまったんだよね」
「・・・・・・・・」
「申し訳なかった・・・本当に 後悔してる 君は本当に純粋なだけだったのに」
「・・・・・・・・」
「君の事調べて いろいろ知って本当に後悔した
謝りたいと思いながら時間ばかり過ぎてしまった」
「・・・・・もう・・・もう いいですよ」
「優しいな君は 益々惚れちゃうよ ははは(笑)
最近はね ちょっと心配してたんだ 君のこと」
「心配・・・ですか?」
「ああ・・・・なんか ムキになって仕事してるっていうか
今まで以上に自然体なんだけど それがどこか痛々しくてたまらなかった
モデルの仕事は 楽しいかい?」
「・・・ええ・・・それなりに・・・最近は」
「そうか 確かにいい表情やポージングが決まるようになってきたよな
でも 本当に自分で表現したい事 できてると思う?」
「・・・・表現・・・」
「モデルなんて ただ洋服や商品を見せるためのマネキン なんて
そんな風に思ってたら間違いだと僕は思う
モデルの魅力があって初めて その商品の魅力も輝くんじゃないかな・・・」
「モデルの魅力・・・」
「君はとても魅力的な人だ でも君は誰の事も見ていない
ただ一人の誰かにむかって生きている そうだろ?」
「・・・・・・」
「きっと それがその病院で君を待っている彼なんだろう?」
「・・・・・・それが・・・・それは いけない事ですか?」
「いけないさ」
「なっ・・・・」
「モデルがカメラをみないでどうする カメラの向こうに何千何万の
人の目を意識しないでどうしていい表現ができるっていうんだ」
「人の・・・目」
「君は今 その持って生まれた恵まれた容姿と新鮮な存在感で売れてる
ただ そんなものはすぐにみんなが慣れてしまうんだ
ありがたみももの珍しさもなくなった時 君は忘れられる」
「・・・・・・・・」
「僕は君にそんなモデルで終わって欲しくないんだ」
「・・・吉田さん・・・」
「君を抱きたいって今でも思ってるよ(笑)死ぬほど欲しい
今だって 押し倒したくてフラフラする けど 俺も自分の仕事に誇りがある
君はもっともっと光るべきなんだ だから・・・・
あとは君の 君自身の問題だけどね 黙っていられなかった」
「・・・・・・・・」
「コーヒー 飲もう 飲み終わったら送っていくよ」
「・・・・・・・・」

宏は何も言い返せずにいた
吉田に指摘された言葉達が胸に刺さっていた
がむしゃらにこなしてきた仕事に正直自分でも納得がいっているとは思っていなかった
大沢に認められたい 大沢が認めてくれればそれでいい
そんな風に思っていた
だから
正直 薬で好きにされそうになった時よりショックだった
変わりたい そう願った自分に 吉田のくれた言葉達がありがたかった

「送っていこう」
「はい」

「彼が一日も早く目覚める事を祈ってるよ」
「はい・・・・・ありがとうございます」
「あんな事をしておいて言えた義理じゃないけど 
無理して自分を切り売りする事はないと思うよ・・・・
君らしく 大切なものを大切に想いながら 生きていって欲しいよ」
「・・・・・吉田さん・・・」
「君がチャラチャラしたイマドキの若者だったらよかったのにな(笑)
こんなひどい罪悪感に苛まれる事もなかっただろうに
僕は心底自分をイヤな奴だと思って後悔したよ(笑)
今から君に見なおして欲しいなんて言えないけど・・・・
それでも どうか 僕の気持ちもちょっとくらいどこかにひっかけておいてくれよ」
「・・・・はい」
「それじゃ また仕事で」
「はい・・・・送って頂いてありがとうございました コーヒーご馳走様でした」
「うん じゃぁね」

吉田は 宏を病院の前で下ろすと そのまま軽く手をあげて微笑んで去っていった
月明かりが白く宏を照らした












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