2.私−彼らの事
2.私−彼らのこと
愛する人がいて 愛されて自分の居場所を約束された人間は
贅沢で我が儘で自分勝手である
愛は穏やかで暖かく 日向の水溜りがぬるまるように
ただそこにあるだけで心が暖められて
ぬくぬくと縁側でまどろむ猫のようなおももちになる
そして愛し愛されることに慣れてしまった人間は
愚かにも その平和な日々を無意味で退屈な時間と勘違いする
そして 恋といういばらの日々を懐かしみ
その響きに憧れる
恋とか初恋とか 失恋に片想い
そんな言葉たちはキラキラと美しくて眩しくて
淡雪かもろいガラス細工のように はかなく繊細だ
それでいて それらはとてつもなくしなやかに強かで
その期間限定な輝きは残酷だ
家族を持つ という事の意味を漠然としか理解していなかったあの頃
その生活に憧れに似た思いすら抱いていたあの頃
恋という病の真っ只中にどっぷりと浸っていたあの頃
あの頃は 愛という穏やかな響きに夢見ていたのだと 今思う
愛は穏やかで暖かい
相手を思い遣る心が伝わりあう時
静かに ただ 静かに時は流れる
彼らもまた こんな穏やかな時間をいつか手にいれるのだろうか
そしてその時 彼らの傍らには いったいどんな人が微笑んでいるのだろうか
彼らを思い出す
平和で単調な 平凡な日々の生活の中
彼らを思い出す
彼らは私の思い出の中で輝いている
恋と言う病の特効薬はとっくの昔に処方された
それは今以上を望まないこと 今を愛する事
そして 何かをあきらめること
そんな免疫はしっかりと培養され
今の私に恋というその病は取り付かない
そうした 穏やかで呑気な胸の中で 小さく小さく
ちくりと痛んで彼らがよみがえる
あの頃・・・・・・
彼と私ともう一人の彼がいたあの頃
懐かしいような 寂しいような 甘酸っぱい気分がこみ上げる
恋した少女と
恋された少年と
そしてもう一人の恋された少年の
今なら判る 今なら思い遣ってあげられる
私のちくりと痛む思いの話
書き留めて 心の外に出してしまおう そう思う
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