16.寺山宏ー受難
16.寺山ヒロシ−受難
朦朧とした意識の中 宏は自分が吉田に担ぎ上げられて
どこかへ運ばれてゆくのを感じていた
先ほどまでいた明るい光に満たされたリビングとは違う
厚いカーテンで閉ざされた薄暗い部屋
部屋にはキングサイズのベッドがひとつ
どさりと宏はそのベッドの中央へと投げ込むようにして下ろされた
「本当に綺麗な顔をしてるね・・・ヒロシ君 顔だけじゃない
整った体格に・・・きれいな筋肉がちゃんとついていて・・・肩から
二の腕のラインがたまらなく魅力的だね」
「・・・・・や・・・やだ・・・やめ・・・」
宏は自由にならない手足で必死にベッドの上から逃れようともがいた
そんな宏を楽しむように眺めていた吉田がゆっくりと
ベッドの上にあがると宏に覆い被さるように身体を重ねてきた
「桜色の唇・・・ふっくらとして ホントに素顔なの?信じられないな・・・」
吉田は指の腹で宏の柔らかい唇の輪郭をなぞる
吉田が着ていたシャツを脱ぎベッドの下へ落とす
30代後半のはずだが吉田の身体は見事にひきしまり
同性からみても惚れ惚れするような筋肉に覆われた裸体が露わになった
しかし この状況で目の当たりにしたそれは
宏にとって恐怖以外の何物でもなく
大きく見開いた宏の瞳にはうっすらと涙が滲んだ
「なっ・・・何を・・しようっていうんだっ 俺に・・・」
「美人を拉致してする事といったら決まってるだろ?(笑)」
「おっ・・・俺は男だしっ」
「美人は男も女も大好物なんだよ 僕はね」
「何言って・・・・っつ・・・か・・身体が・・・」
「うん?そろそろ効いてきた?」
「何が・・・効くって・・・」
宏は喉がはりつくように声がかすれ 身体がひどく熱く汗ばんできた
全身の血が沸点を迎えてしまったような かっかとした熱がたまらない
そしてそれは宏の下腹部へと堪えきれない熱を誘ってゆく
自身の意志に反して疼くような震えがおこる
吉田はその宏の反応を楽しむようにゆっくりと宏の衣服を剥がしてゆく
宏の抵抗は虚しく吉田の身体に押さえ込まれ
白く滑らかな肌が露わにされてゆく
吉田の唇が 苦しげに喘ぐ宏の唇を塞いだ
「んんっ・・・」
顔をそむけようともがく宏の小さな顎を掴み
吉田の口づけは一層深くなる
息苦しさに思わず喘いだ瞬間に 宏の口腔に吉田の舌が滑り込む
絡め取られるように舌を弄ばれ息があがる
のけぞった白いのど仏に吉田は唇を這わせ
そのまま宏の首筋に淡い紅色の跡を残した
「っつ・・・」軽く鋭い痛みに宏の眉間に皺が寄る
そんな表情が男の欲情を益々煽るとは宏に知る由もなく
逃れたい一心で自由の効かない身体をよじり続けていた
しかし 吉田の唇が胸元へと移り
宏の胸の珊瑚色の突起を捕らえた時
宏の口から悲鳴に似た声が漏れた
全身が震える程の愉悦が宏を襲い 自身が熱く昂ぶるのを感じた
「・・・なっ・・なんで・・・」
意志に反して吉田の愛撫にいやというほど感じてしまう自分が
信じられず また腹立たしく
おそらくはジュースに混ぜられていたであろう薬物の効果に背中が冷えた
恐かった
自分が自分でなくなってしまいそうで
吉田の手が身体中を這い回り 撫で回される程に口から漏れる
自分のものとは思えない甘い吐息がたまらなかった
「ヒロシ君・・・・声がいいから・・・啼かせがいがあるね・・・色気にぞくぞくする」
吉田はヒロシの剥き出しの胸元から下腹部へと舌を這わせていった
やんわりとその頭をもたげ始めていた宏のたかぶりを
薄く柔らかい茂みの中から吉田は自らの掌へ包み込む
ぴくりと宏の背中がはねる
抱き戻すようにその細い腰を抱え込むと
吉田は宏の昂ぶりをその口に含み 淫猥な音を響かせた
「ひゃあっ・・・あっあっ・・・」
薬物のために敏感になりすぎている箇所を執拗に責めあげられ
宏は全身を震わせて啼いた
吉田の指先が宏のつつましくその入り口を閉ざした
蕾へと伸びると 宏の恐怖は頂点に達した
「やだっ・・・やめて・・やめてくれ・・・いやだっ!!」
宏の懇願を鼻で笑い飛ばすと吉田はかまわず指先で蕾をこじ開けてゆく
「綺麗なピンク色だ・・・・もしかして 初めてなの?」
「あ・・・当たり前だっ!だれが・・こんな・・・・」
「君ほどの美人だったらもう誰かに食べられちゃってるかと思ってたよ
これは思いがけない収穫だなぁ 大丈夫 優しくするよ 安心して」
吉田はそう言って 宏の蕾に口づけるとその舌先で入り口を解し始めた
「やぁああっ・・・っっんんっ・・・」
強すぎる刺激が宏の全身を襲い 悔しさと恐怖に涙が零れた
大沢・・・・ふと自分がその名に助けを求めている事に宏は気づいた
助けて・・・・大沢・・・
首を左右にうちふり 乱れた前髪が宏の額に散った
膝を割られ 内腿を大きく開いた形で押さえ込まれたまま
宏は吉田の愛撫から逃れようと必死にもがいていた
しかし一方で 抗えない快感が宏を包み始めていた
こんなのイヤだ・・・・力と薬で押さえ込まれるなんて
吉田への怒りというよりも
宏自身が自分を許せない怒りだった
こんな状況を招き入れてしまった自分の無防備さに腹がたった
怒りにまかせて渾身の力をこめて足を蹴り上げた
宏の膝と足先が続けざまに吉田の鼻がしらを強打した
「うっ・・・・ぐっ・・・」
たまらずうずくまった吉田をふらつく身体でベッドから突き落とした
よろよろと起き上がった宏はおぼつかない足取りでベッドの周りに散らばった
自分の衣類をかき集め 急いで身につけた
恐怖と薬のせいで 震える指先が思うように動かない
もどかしくシャツのボタンも全部はかけきれず かまわず上着を羽織った
「こ・・・このっ!新入りの世間知らずがっ!こんな事をして
ただで済むと思うのかっ!!」
顔を覆いながら絶叫する吉田には目もくれず
宏は必死で部屋をでた
身体は自由がきかず 震える手でエレベーターのボタンを押す
背後から今にも吉田が追って迫ってきそうで
恐怖に涙がとまらなかった
吉田は追ってはこなかった
プライドの高い吉田は惨めな姿で宏に追いすがる事をよしと
しなかったらしい これは宏にとって幸いであった
宏はふらつく足でなんとか大通りまで出ると通りかかったタクシーに転がり込んだ
不思議そうに涙に濡れた宏の顔をみやる運転手に
宏は行き先を告げた
大沢に会いたい
ただひたすらに そう念じていた
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