13.ダ・カーポ そして フィーネまで
13.ダ・カーポ そして フィーネまで
「宏・・・ひろし・・・」
「はなせっ 離せ大沢っ!もういいだろうッ!離してくれっ!」
「・・・・ひろし・・・」
宏は大沢の胸を押し戻すように腕をつっぱった
抱き締められた腕の中から逃れようと身をよじる宏を
大沢は逃すまいとするように より深く抱き込もうとする
見上げて睨み付けようとする宏の瞳は潤み
目の周りがほんのりと上気したように紅色に染まっている
「離せ・・・」
「いやだ」
「もう気が済んだだろうっ!離れろっ!」
「いやだ」
「何だって言うんだっ!こんな・・・こんな」
「お前が欲しい」
「落ち着け・・大沢・・・な?」
「俺は冷静だ」
「おかしいだろ?こんなこと・・・普通じゃない!」
「恋愛に普通も何もないだろう」
「俺は男だぞ?」
「好きなものは好きで何が悪い・・・」
「・・・・っつ・・・」
大沢のたじろぐことのない真っ直ぐな視線に
宏は言葉を失った
迷いのない大沢の言葉は宏の胸に刺さる
「どうしてそんなに・・・何の躊躇もなく言い切れるんだ」
「この3年間で出した答えだ」
「俺には何の猶予もないのか?」
「俺を好きになってくれ」
「好きだよ 親友だろ」
「親友以上にしてくれ」
「どういう事なのか 俺には判らない」
「身体を繋ぎたい お前の全てを欲しいと思う」
「・・・・応えられない」
「・・・・・・・・・・・」
「応えられないよ さっきの事だって・・・どう理解していいのか
俺は頭がおかしくなりそうだっ!!」
「俺の手でイッタ ただ それだけだ」
ばしっ
宏の平手が大沢の頬を打った
「即物的だな 大沢・・・男の身体の構造上仕方ない結果だ!
気持ちや心がそうさせたワケじゃないっ!!」
「俺は宏の心も欲しいと思っている」
「俺はお前を親友以上の何者とも思わないっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「帰ってくれ」
「考えておいてくれ・・・今日は すまなかった
俺も急ぎすぎた・・・まずは気持ちを伝えるべきだった」
「気持ち?」
「宏を好きな気持ちは本当だ 信じて欲しい」
「・・・・気の迷いだ・・・」
「本気だ」
「大沢・・・・・・女を見ろ もっと もっと周りを見ろ
お前の事を好きだという女子は山程いたじゃないか」
「お前が・・・宏が好きだ」
「気の迷いだと・・思う・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「時間を・・・時間をくれないか・・・」
「わかった」
大沢は ゆっくりと立ち上がり 脱ぎ捨ててあった服を身につけた
「俺は本気だから・・・・」
そう言い残して大沢は宏の部屋から出て行った
この日を境に
大沢が宏の前に現れる事はなかった
新生活の4月
大学生活を始めるにあたって 宏は引っ越しをした
大学にほど近いアパートを借り キャンパスへはバイクで通った
母の病院にも近くなり 見舞いに訪れるのも楽になった
新しい友達もでき 宏は大沢の事を忘れた
いや
忘れようと心がけていた
つとめて考えないように毎日を過ごした
それでも ふと部屋で一人になった時などに
どうしてもあの日の事が蘇った
携帯も変えた
新しい住所は誰にも知らせなかった
携帯は鳴らない
ただ いつも耳に響く声があった
「宏・・・俺は本気だから・・・・」
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