10.寺山宏−最初の一歩
10.最初の一歩 − 寺山宏
何が起こっているのかさっぱり判らなかった
目の前に 見慣れたハズの
しかし 見知らぬ男の顔があった
その瞳は焼き殺されてしまうかと思うほど熱く
魅入られて 身動きひとつできなくなる
こんな男 知らない いつもの奴じゃない・・・
爪がどうとか・・・言われて・・・
手をとられて抱き寄せられて
何が何だか判らず ふざけているのだとばかり思っていた
だから
居心地の悪い いつもと違う熱い眼差しに
戸惑って 胸の鼓動が高鳴ってしまう
気づかれたくなくて 誤魔化したくて
ただ笑ってみせるしかなかった
その真剣な顔が迫ってくるのを避けられなかった
鼻先が触れそうになって思わず目を閉じかけた
なんだこれ・・・・
必死の思いでもがいたのに
身体には力が入らない
抱き締められて 背中に回された奴の手が熱い
いや
身体中が熱い 熱い
重ねられた唇から全身の力が吸い取られてゆくみたいだ
親友
そう思っていた男の唇は 熱く 熱く 蕩けるように甘い口づけ
はだけられた胸元にその指先が這って
ぞわりと全身にたまらない震えが走る
何なんだ
何なんだ一体
どういうつもりで・・・・こんな
混乱する思考
そのまま白く靄がかかってゆく
その存在すら忘れていた胸のささやかな突起を摘まれて
がくりと足のちからが抜ける
崩れ落ちそうな身体を抱き止められて
桜の樹に押しつけられて
首筋に吐息がかかる
もう
何も考えられない
耳に聞こえた言葉の意味すら考えられない
「抱かせて」
それは
どういうこと?
ここにいる男は俺の親友だろ?
高校3年間をともに過ごしてきた親友だろ?
いつも俺の傍らにいて
いつも穏やかな笑顔で
いつも面白おかしくふざけ合って
側にいるのがいつしか当たり前になっていた
そんな存在
今 目の前にいる男は誰だ?
俺の事を好きだという
ずっと俺だけを見つめてきたという
そして
俺を抱き締めて唇を重ねる
甘い口づけに縫い止められたように動けなくなる
今 思い出した
俺のファーストキスだ・・・・
どうしてくれるんだ
大沢
どうしてくれるんだ
俺を
どうしたいっていうんだ
このまま
言われるままに身を任せたら
何が起こる?
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