青春という名の日々に(1/27)縦書き表示RDF


登場人物は玉木宏さんがモデルの「寺山宏クン」と
大沢たかし少年 そして少女一人 それぞれの視点で
各章を綴っていきます お付き合い下さい
青春という名の日々に
作:tensuke



1.大沢たかし 最初の一歩


1.大沢たかし 最初の一歩

「爪 自分で・・・切っただろ・・・」 卒業証書の入った筒を握る指先を見とがめた
「普通 自分で切るものじゃない?」 指先をこちらにかざしながら彼が答える
「深爪してる」
「そぉ?」
「器用なのに こういうところ 無頓着だよな・・・」 
第2ボタンのみならず 全てのボタンをひきちぎられた学ランを
お互い埃でもたたくように整えながら ようやくふりきり逃れてきた喧騒を振り返る
「気にした事 なかったよ」 少し息を切らせながら 誰もいない所に逃げ切れた安堵に
彼はその頬を紅潮させながらもようやく緊張のとけた笑みをみせた
「綺麗な指なんだ・・・とっても だから 爪も少し気をつけて・・さ・・」
桜の木が立ち並ぶ 校舎の影になった一画にたどり着き ほっと二人でため息をついた
「女の子じゃあるまいし(笑)どう気をつけろっていうの」
「俺が・・・俺が切ってやる 今度からは」
今度から が本当に続いてゆくのか判らない別れの日に こんな台詞が口をついた
「えぇっ!?(笑)子供じゃあるまいし それはないでしょ」
「お前は 俺のものだから」 できるだけさりげなさを装って言ってみた
「そぉなの?(笑)知らなかったかも 俺」 思った以上に軽くしれっと返された
「そう 爪の先まで全部 俺のものなの」 ひるみかかった心にムチ打った

くすりと小さく笑った彼の指先をそっと包み込むようにして握った手に力をこめた
彼は引かれた手から崩れるようにして笑いながら倒れ込んできた
彼を胸に抱き止めて 握った指先に口づけた
くすぐったいからやめてくれ と 彼はまた小さく笑った
抱き締めた しなやかなその身体を離したくなかった

ごわごわとした制服越しに 自分の心臓の鼓動が激しく響いているのを
彼に気づかれてしまったに違いない
鼻先をくすぐる 柔らかい茶色の髪からほのかに甘い香りがした

くすくすと笑い続ける彼を胸に抱き止めたまま 時が止まればいいと思った
桜の花びらが舞う中で 自分の目の前にいる生き物は
信じられない程に とてつもなく美しかった
その美しい生き物を 誰にも渡したくない そう思った

白く小さなその顔にそっと手を添えると 彼は小さく首をかしげて
こちらへその面を上向けた
「何?・・・どうした?」
小さな彼の問いかけに答えるかわりにその桜色の唇を奪った
「・・・んっ・・・・」
かすかに抗う彼の肩を引きもどし 唇の重なりを一層深くした

遠く 新生活へのスタートを励まし合い 別れを惜しむ声たちが響いていた
卒業式
彼の友人という名の仮面を被って過ごした3年間は終わりを告げた

「お・・大沢・・・・ど・・・どういうつもりで・・・・おまえっ・・んっ・・・」
彼の戸惑い困惑した表情を見つめながら口づけを繰り返した
逃れようともがくその細い腰を抱き寄せたまま
これで 何が変わるのか
自分でも 何も思い描けなかった
ただ 目の前の彼を 失いたくなかった

あの日 
無理矢理に踏み出した最初の一歩
今でも鮮明に思い出す


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