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ほしとり

作者:皐月 朔
 帰り道、ふと思いついたので書いてみました。
 童話っぽくしてみたつもりです。
「ねぇ、星をとりに行こうよ」
 友達が言った言葉に、僕はパチパチと瞬きした。
 とりに行く?
 撮りに行く、かな。
 この友達は、最近パパにカメラを買って貰ったとはしゃいでいたっけ。
「うん。いいね。行こう」
 これまで近くでカメラを見たことが無かった僕は、カメラを見てみたかったので頷いた。これまで、パパが使っているカメラを見たことはあった。でも、僕が触ると、パパはすごく機嫌が悪くなるのだ。
「それで、どこにいくの?」
 僕が聞くと、友達はパチパチと瞬きした。
「どこにしようか」
 それを聞いて、僕はため息をついた。
 この友達は、行動力はあるのだけれど、計画性という物が皆無なのだ。
 そして、その行動に周囲は振り回される。誰にも言っていないけど、その一番の被害者は、僕だと思っている。
 僕は外を見た。
 まだまだお日様は元気だ。当分お星様の出番はありそうにない。
「じゃあ、昼寝でもして夜になるまで待とう」
 それを聞いた友達は首を左右に振りました。
「駄目だよ。夜になってからだと、お外に出してもらえない。今から出発しよう」
 それを聞いて、僕は困りました。
「でもどこに行くか決めてないんでしょう?」
「うん」
 元気よく首を縦に振る友達に、僕はさらに困ってしまいました。
「どこがいいかなぁ?」
 しかも友達は完全に僕頼みで、自分で考える気が全くないようです。
「うーん。やっぱりお星様が近い方が良いよね」
「そうか!きっと近い方がいっぱいとれるよね!」
 僕の言葉に、友達は元気よく頷きます。
 僕は、この辺りで一番高いのがどこかを考えます。
「じゃあ、展望台は?あそこは結構高いよ」
「うーん。でも、光があると星があんまり見えない、って聞いたしなぁ」
 そうなのか、と僕は思いました。お星様を撮りに行くのに、お星様が見えないのでは意味がありません。
「じゃあ、裏のお山に行こうか」
「そうだね、それがいい」
 今度は友達も賛成してくれました。
 そうと決まれば出発です。
「ねぇ、なんか要るかな?」
「うーん。山に行くんだったら、ジュースとお菓子かなぁ」
 それを聞いた僕はキッチンに行きます。台所の下を捜すと、お菓子が二袋出てきました。パパがこっそり出して、一人で食べているのをこの前見たのです。
 お菓子を見つけた僕は、冷蔵庫を開きます。
 そこには、この前買って貰ったみかんのジュースがあります。僕はそれを出しました。
 僕は自分の部屋から、リュックサックをとってきます。
 いつもピクニックや、遠足に行くときに使うお気に入りです。
 そのリュックサックに、お菓子とジュースを入れると、出発の準備は整いました。
「用意できたよ」
 友達に報告すると、友達は満面の笑みで頷きました。
「大変よろしい」
 そう言うと、友達は家から出て行きました。僕もその後に続きます。

 家を出て、お山に向かって歩きます。
 途中、きれいなお花畑や、涼しい音のする川を見つけました。
 いつもなら、それらを見て大喜びする友達ですが、今日はあまり喜びませんでした。
 それを不思議に思いましたが、今はお星様が気になってそれどころでは無いのだろう。そう思いました。
 お山に向かって歩いて行くと、だんだんとお日様が疲れてきました。どんどん下がって行きます。
 辺りもお日様の元気がなくなってきたので、あまり色を出さなくなりました。皆暗くなっていきます。
 時折、遠くで動物の声がします。
 もう後ろに家は見えません。
 その頃になって、僕は急に怖くなってきました。
 お日様がそろそろいなくなってしまいます。
 いつもなら、そろそろママの作る、ご飯の良い匂いがする頃です。
 帰りたくなりましたが、辺りをきょろきょろと見る友達は、そんなことは無さそうです。
 誘った友達がまだ帰らないのに、誘われた僕が先に帰りたいと言う訳には行きません。
 僕は、あっちへきょろきょろ、こっちへきょろきょろしながら歩く友達の後ろを付いて行きます。

 お山に入りました。
 友達は相変わらずきょろきょろしています。
 僕は、お日様が沈んでからお山に入るのが初めてです。
 だから、お日様が元気だったころとの、あまりの違いに、ちょっとわくわくしています。
 でも、ときどき聞こえてくる物音や、動物の鳴き声に、びっくりします。友達は全然びっくりするどころか、その物音や動物の鳴き声も楽しんでいるようです。

 そろそろ山頂です。
 木が目の前からだんだんと消えて行きます。
 どんどん木が下に逃げて行くようで、面白かった。
 また一つ、大きな木が下に逃げた。それを顔を動かして追いかける。追いきれなくなり、顔を正面に戻した。
 目の前に広がる光景に、息が出来なくなった。
 吸い込まれそうな夜の色と、そこに広がる無数の光の点に息をどうやってするかを持って行かれたかのようだ。
「すごいねぇ」
 友達が隣で呟いた。僕は、その言葉に頷くことしかできない。
 友達は、そんな僕の横目で見ると、満足そうに頷いた。
「さーて、星、星っと」
 そう言った友達が、リュックサックを背中から下ろすと、その中からカメラを取り出しました。
 黒い身体に、白い点々がいっぱいある。まるで上にある空みたいだと思った。つやつやしてて、とてもきれいだ。
「きれいだねぇ」
 僕がしみじみ言うと、友達は照れ笑いを浮かべた。
「よし、じゃあとろうかな」
 友達は、カメラを空に向けました。
「どれがいいかなぁ」
 そう聞いてきますが、僕は友達がどのお星様を撮ろうとしているのかが分かりません。
 やることのない僕は、空を見上げて、目の前に広がる一面の夜空に心を預けました。
 空を見ていると、一つだけ赤く光っているお星様があることに気がつきました。
「あ、見て。赤いお星様があるよ」
「どこ?」
 僕は友達に見つけたお星様の位置を指差して教えます。
 友達は一度カメラから目を離すと、僕が指差した方を見ます。
「わ、ほんとだねぇ」
 友達も赤いお星様を見て、声を洩らします。
「じゃあ、あれとろっか」
 そう言った友達が、カメラを構えます。
 カメラを構えるその姿は、まるで一枚の絵のようです。
 ずっとずっと昔昔から、カメラを構え続けたかのように自然でした。
「じゃあ、とるよー」
 カメラから、パシャ、という音がしました。
 それを聞いた僕は、再び空に目を向けます。
 赤いお星様を見るためです。
 でも、赤いお星様はどこにも見当たりません。
 もしかしたらあれはお星様ではなくて、飛行機の光だったのかもしれない。そう思った僕は顔を動かして、空にあった赤い光を探します。
 けれど、どんなに探しても再びあの光を見つけることは出来ませんでした。
「ねぇ、あのお星様無くなっちゃった」
 友達に顔を向け、そう言いました。
 そして、友達が持っているものをみて、僕は目を大きく見開きました。
 友達の手には、さっきまで空にあった筈のお星様があったのです。
「どうしたの?!それ!」
 僕は聞かずにはいられませんでした。
 僕がどんなに手を伸ばしても、お星様には手が届きません。
 それは友達も同じです。
 僕の言葉に、友達は首を傾げました。
「取ったんだよ。星を取りにきたんじゃない」
 そう言った友達は、手に持った赤い光を僕に差し出してきます。赤い光は、ピカリ、ピカリと光ったり消えたりを繰り返しています。
 僕はそれを恐る恐る手に取りました。
 手にした光は、少し暖かくて、でも光が消えると冷たくなりました。
 しばらく僕はその光の暖かかったり、冷たかったりするそれを楽しみました。
 友達は隣で次はどれを取ろうか考えているようでした。
「ねぇ、見てよ、これ」
 手の中にある光に夢中になっていた僕は、後ろから聞こえた友達の声に振り返ります。
 するとそこには、手に抱えきれない程の光を持った友達がいました。
 僕はその光景に目を輝かせました。
 友達も、そんな僕を見て、胸を張りました。
「すごいねぇ、すごいねぇ」
 しきりに僕は繰り返しました。
「ねぇ、このお星様どうしようか!」
 僕は、友達が抱えているお星様から視線を上げ、友達の顔を見ました。
「うーん・・・・・・」
 どうやら取ったお星様をどうするかは決めていなかったようです。
 友達はしきりにうなっています。
 でも僕は、それどころではありませんでした。
 空からお星様が殆ど消えてしまっているのです。
 お山の頂上にやってきた時に、僕と友達を迎えてくれた星空は、もうそこにはありません。
「どうしよう・・・・・・」
 呆然と僕は呟きました。
「うるさいなぁ。今必死に考えてるよ」
 僕の言葉を、友達は、取ったお星様をどうするか早く決めろ、と言う意味にとったようです。
「いつも見たいに君も考えてよ」
 いつもとは違い、アイディアを出さない僕に、友達が言い返します。
「そうじゃないよ。空を見てよ」
 僕の言葉に、友達が考えるのをやめて空を見上げます。
 そして、すぐに僕に視線を戻します。
「それで、どうすればいいの?」
 友達は、僕の言おうとしていることが分からないようです。
「お星様が無くなってる!」
 僕の言葉に、友達は首を傾げました。
「ここにあるじゃないか」
 そう言って、僕達の足下を指差します。
 確かに、僕達の足下には、小さな山になっているお星様があります。
「そうじゃないよ!空に無いんだ!」
「そりゃそうだよ。ここにあるんだもの」
 友達は不思議そうに言いました。
 僕は、僕の言おうとしていることが通じないことに、地団駄を踏みました。
「そうじゃなくて!いつも空にある物がここにこんなにあったら、皆困るよ!こんなに皆の物を取ったってパパに知られたら、きっとすごく怒られる!」
 僕のその言葉を聞いた友達は、そのときになって、やっと僕の言わんとしていることが分かったようで、どんどん血の気が引いていきました。
「ど、どうしよ!父ちゃんにすごく怒られる!」
 そう言うと、僕達は大慌てでお星様を空に返す方法を考えました。
 空に向かって投げてみました。でも、お星様は空に帰らずに、地面に落ちてしまいました。
 川にお星様が写っているのを思い出し、ジュースの中にお星様を入れてみましたが、空には帰ってくれませんでした。
「ど、どうしよう!ねぇ!どうすればいい!?」
 いつもは強気な友達が、半分泣きそうになりながら、僕にすがりついてきました。
 僕も、パパに叱られるのは嫌なので、必死に考えました。でも、なにも良い考えが浮かびません。
 初めて見たときには、あんなにきれいだと思っていたカメラも、今では怖くて近づけません。
 あのカメラの黒い身体にある白い点々は、空から取ったお星様かもしれない。
 もしかすると、取ったお星様を、あのカメラが食べたのかもしれない。一緒にいる僕達も、カメラに食べられるかもしれない。
 そんな考えが次々に浮かび、もう触りたいなどとは思えませんでした。
 どこかで動物の鳴く声がします。
 風が吹いて、周りの葉っぱを揺らします。
 僕は急に寂しさを堪えられなくなりました。
 それまでは全然気にならなかったのに、急に寒くなってきました。
 僕は、リュックサックからお菓子を取り出すと、震える友達に差し出しました。
「これ、食べよう?」
「そんな場合じゃない!」
 でも、そのお菓子は友達にたたき落とされました。
 これまでの経験から、こうなった友達には何を言っても仕方がないと知っている僕は、お菓子をリュックサックの中にしまいました。
 友達が食べないのに、一人だけ食べる訳にはいきません。
 出来ることが無くなった僕は、もう一度いっぱい取ったお星様を見ました。
 いっぱい取ったお星様の中には、一番始めに取った赤いお星様もあります。
 でも、ある筈の赤いお星様は、取った頃よりも光が弱くなっていました。
 そのことが分かると、僕は慌てました。
 このままだと、取ったお星様を空に帰すことも出来ずに、消えてしまうと思ったからです。
 そして、お星様が消えると、僕達も家に帰れなくなるような気がしました。
 そう思うと、それまでよりも怖くなりました。
 パパに怒られるどころではありません。
 パパやママにもう会えなくなるかもしれないのです。
 僕は座り込んで泣いている友達の頭を撫でました。
 こんなときでも友達の髪はさらさらだなぁと思った。

 僕が友達の頭を撫でていると、木々の間から、ドーン!!という音が聞こえました。
 驚いてそちらを見ると、再びドーン!!と言う音が響きます。
 友達も、涙を止めてそちらを見ます。
 どうやらそれは足音のようで、だんだんとこちらに近づいてきます。
「もしかして、星の神様が星を取り返しにきたのかな・・・・・・?」
 友達の呟きに、僕は身震いしました。
 そうだとしたら、お星様を空から取った僕達は一体どうなってしまうのでしょう。
 少なくとも、もうパパとママには会えない気がします。
 ドーン!!ドーン!!
 いよいよ足音が近づいてきました。
 でも、不思議なことに、足音の持ち主は見えてきません。足音の大きさから考えると、その足音の持ち主は、かなり大きな筈です。
 足音はどんどん近づいてきます。
 やがて、その足音の持ち主が見えてきました。
 そして、その足音の持ち主を見て、僕は息を呑みました。友達は、僕の後ろに隠れました。
「やっと見つけたぞ!」
 その声の大きさに、僕は身体を小さくします。
「心配させやがって!」
 足音の持ち主は、友達のお父さんだったのです。

 お父さんは、僕と友達を見下ろすと、それぞれの頭に拳骨を落としました。
 拳骨されたところが、燃えるように痛みます。
「全く、どれだけ心配したと思ってるんだ。君のパパも心配してたぞ」
 お父さんの言葉を聞いて、僕は涙を流しました。
「ごべんなざい〜!」
 友達と一緒に、何度も謝りながらお父さんにしがみつきます。
 頭に、お父さんの大きな手が置かれ、優しく撫でられました。

 僕と友達が落ち着くまで、お父さんはずっと頭を撫でてくれました。
 そして、僕と友達が落ち着くと、どういうことか説明するように言われました。
 僕と友達は、お父さんにどうしてここまで来たかを説明しました。
 それを聞いたお父さんは、「なるほどな」と言って、カメラはどこにあるかと聞きました。
 僕と友達は、同時にカメラのある方を指差します。
 指差された方を見て、カメラを見つけたお父さんは、カメラの方に歩いていきました。
 そして、カメラを拾います。
「食べられちゃう!」
 友達が叫びました。
 それを聞いたお父さんが、目を丸くしました。そして、大きな声で笑います。
「食べられないよ」
 そして、カメラの先の出っ張りになっている部分を回しました。
 すると、それはぽろりと取れてしまいました。
 驚く僕と友達をよそに、お父さんは積まれた星を取れた物に入れていきます。
 そして、再びそれをカメラにつけます。
 カメラを空に構えたお父さんが、パシャりという音を立てると、カメラの先っぽから、いくつもの光が飛び出していきました。
 僕と友達が驚いて、その光を目で追います。
 その光は、まるで自分の帰るところが分かっているかの様に、バラバラに飛んでいきます。
 やがて、光は空にピタリと止まりました。
「な、食べられなかっただろう?」
 お父さんの言葉に、僕と友達は顔を見合わせます。
 そして、お父さんのところに駆け寄りました。
 お父さんは、カメラを僕に預けてくれました。
「この子に散々振り回されただろう?君も星を空に帰してあげるといい」
 その言葉に、僕は目を光らせます。
 お父さんがやっていたのを思い出しながら、カメラの先っぽを回して外します。そして、そこにもう殆ど光らなくなってしまった光を入れていきます。
 そして、カメラを空に向けます。
 でも、どこをどうすれば良いかが分かりませんでした。
 すると、お父さんが後ろから優しく教えてくれました。
 教えられた通りに、カメラの右上にあったボタンを押すと、カメラの先から勢いよく光が飛び出しました。
 そのなかには、始めに取ったあの赤い光もありました。
 飛び出した光が、バラバラに飛んでいき、空に止まるまでずっと空を見上げます。
「次!次!」
 友達が、僕に手を出し、カメラを渡すように言います。
 僕は、カメラを友達に渡しました。

 それから、僕達は取ったお星様を空に全部帰しました。
 そのあと、お父さんと一緒に家に帰りました。
「まったく。子供二人で夜遊ぶんじゃない。しかもお前は女の子なんだから」
 帰り道、お父さんにそう怒られた友達は、頬を膨らませました。
 そんな顔も可愛いなぁと思いながら、僕は空を見上げました。
 そこには、お山の頂上ほどでは無いけれど、たくさんのお星様が僕達を見下ろしていた。
 最後まで読んで頂いてありがとうございました。
 

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