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ふたつの国のために
作:地球の星



第3話:旅をする人


ヒリュウとマフンのいる施設から150km程離れたところにあるエクラードという都市では、オゾンと娘のカペラが2人暮らしをしていた。オゾンは植物から薬を作って自分の店で売り、それでお金を稼いでいた。
もうすぐヒリュウが帰ってくる、ある日のことだった。
小学校から帰ってきたカペラは、かばんから笛と楽譜を取り出し、音楽の教科書にのっている曲を吹き始めた。彼女はすっかり演奏に夢中になっていた。
しばらくすると、玄関で「ただいま。」という声が聞こえてきた。カペラは自分の手を止め、すぐに玄関まで出てきた。
「お母さん、お帰り。」
「ただいま、カペラ。いい子でお留守番してた?」
「うん。」
「学校の授業にはついていけてる?」
「うん…。何とか。でも…。」
「でも、何?」
「…ううん…、何でもない。」
 カペラは少しうつむくような素振りを見せ、首を横に振りながら答えた。
(何かあったのかしら。)
 オゾンは少し様子が違うことに気づいたが、詳しく聞くことはしなかった。しばらくして2人は夕食の準備に取り掛かった。
「カペラ、今お父さんとお兄さんがいないけれど、寂しくない?」
「やっぱり寂しいよ。お兄ちゃん、手紙は送ってきてくれるけれど…。」
「でも、もうすぐ帰ってくるからね。もうちょっとの辛抱よ。」
「うん…。」
「学校楽しい?」
「…分かんない。最近あたし、他の人から…。」
「他の人から?」
「…やっぱり何でもない。」
「隠さなくてもいいわ。困ったことがあったら相談してね。出来る限り協力するから。」
「うん…。」
 2人は食事の準備が出来ると一緒に食べた。そして後片付けも一緒にやった。
 その日の夜、オゾンはカペラを寝付かせた後、しきりに彼女のことを考えていた。
(やっぱりカペラはいじめにあっているみたいね。口では心配かけまいとしているみたいだけれど、無理しているみたいね。いじめは何処でも必ず起こる。私だってこの国に住むようになった時、外国人ということで嫌な思いもした。せめてカペラにはそんな目にあわせたくない。私がしっかりしなければ…。)
 彼女は以前、学校に出向いて先生に話を持ちかけたが、
『うちの教室にはいじめなんかするような子はいません。余計な口出しをしないで下さい!』
と言われ、結局何も出来ずに悔しさをにじませて帰ったことがあった。
それ以来、人間の心理に関する本を買って読みながら、子供達の心をどのようにして癒せばいいのかを真剣に考えていた。

 やがてヒリュウが軍隊を去る日がやってきた。その日の夕方、卒業式を終えたヒリュウは一緒に施設の門を出て、家族を探した。周りには大勢の人がいたが、少し見渡したところでオゾンに気づいた。
「姉ちゃん、久しぶり。」
「久しぶりね。長かったけれど、やっと終わったのね。」
「ああ、やっと終わった。長かったし、正直きつかったよ。」
 ヒリュウはたまっていた気持ちを吐き出すように言うと、大きく深呼吸をした。
「これから仕事探しもしたいけれど、しばらくはゆっくり過ごしたいなあ。姉ちゃんの国にでも旅してみたいし。」
「じゃあ行ってみる?」
「でもまだ貯金そんなにないからなあ。」
ヒリュウとオゾンが親しく話していると、やがて除隊の手続きを済ませたマフンが合流した。
「紹介するよ。この人はマフン。部屋が同じになって、すっかり意気投合したんだ。こちらは姉ちゃんのオゾン。よろしく。」
「マフンです。あなたのことはヒリュウからよく聞いています。」
「私もあなたのことはよく知っているわ。在クウォル・ナルビオン人ってことも、何故義務でもない軍隊に入隊したのかも。」
「伝えてたのかよ!そんなことまで。」
「わりい。でも姉ちゃんならちゃんと相談相手になってくれるかなと思って。」
「マフン君、気にしなくてもいいわ。悩みがあるのなら私も聞くから。」
「はい。じゃあ、しばらく泊めていただけますか?」
「泊まるって、私の家に?」
「はい。実は、今帰る家がないんです。親と仲が悪くて。ヒリュウに言ったら、『姉ちゃんに相談してみろよ。』って言うから、打ち明けてみたんですけど…。」
 それを聞いてオゾンは少し考えた。その間マフンは何て言われるのか緊張していた。
「分かったわ。じゃあ妹のカペラと仲良く過ごしてね。」
「はい!承知いたしました!」
 マフンは上官に接する時のように、右手を額に当てて言った。
「お前なあ、もう軍人じゃないんだから。」
「分かっているけれど、ちょっとやってみようかなって。」
 3人はしばらくの間会話に盛り上がっていた。
「さてと、まだまだ話したいこともあると思うけれど、そろそろ帰りましょう。車あそこに止めたままだし。」
 オゾンは少し離れたところにある、自分の車を指差した。ヒリュウ、マフンは彼女に続いて、車に乗り込んでいった。

 ヒリュウが2年半ぶりになつかしい我が家に戻って来たのは、夜10時頃だった。
「ただいま。」
「お邪魔します。」
 オゾンに続いてヒリュウとマフンが家に入った。しかし家の中はシーンと静まり返っていた。
「今日はカペラが一人でお留守番だったけれど、寂しがってないかしら。」
「父さんはいないの?」
「ええ、仕事で忙しいからと言って、まだ家には戻っていないの。」
 オゾンは廊下の電気をつけると、静かに歩きながら自分の部屋に入っていき、すぐに着替えを持って出てきた。
「私は明日早いから、先にお風呂に入るわね。」
「はあい。」
「分かりました。」
 2人は返事をするとヒリュウの部屋に入っていった。そして荷物を置くと、カペラの部屋に行った。そっと部屋をのぞくと、彼女は既に眠っていた。
“一人で待ちくたびれてしまったようだね。”
“ま、いいや。ただいま。帰ってきたよ。これで明日からゆっくり話せるよ。”
 マフンとヒリュウは小声でささやいた。
 彼らはその後、部屋で夜遅くまで話をしていた。

 ヒリュウとマフンはカペラが学校に行く時間になっても熟睡しており、昼頃になってやっと起きた。
2人は台所のテーブルに置いてあった食べ物で食事を済ませると、久しぶりの私服姿で街をぶらぶら歩いた。
 途中、無料の求人広告を手にとっては読んでみた。
「このご時世だと、求人するほうも厳しそうだな。この賃金だと一人暮らしは大変だな。就職するにしても、兵役を修了していないと不利だし。」
 マフンが渋い顔をして言った。
「一人暮らしとなると、家具とか色々買わなければならなくなるし、部屋見つけるのも大変だぞ。しばらく僕の家に住めばいいのに。」
「それじゃ、悪いかなって思っているんだけどね。」
「でも今あまりお金ないだろ?僕もだけれど。」
「まあね。ところで、ヒリュウはお金貯めたら何をしたいの?」
「僕?姉ちゃんの母国、テファンに行ってみたい。テファンだけじゃないな。色んな国を旅して、色んな文化や考え方について学んでみたい。」
「外国、好きなのか?」
「うん。姉ちゃんやマフンの影響で色々興味持つようになって。」
「じゃあ、僕は一生懸命働いてお金貯めたら、自分の故郷に住んでみたいな。少なくとも半年くらいは。」
「途中で挫折なんかするなよ。」
「しないよ。ずっと故郷に行きたいって考えていたんだから。」
2人はその後も会話を楽しみながら久しぶりの日常生活を満喫していた。

 ヒリュウとマフンは夕方、家に帰ってきた。家ではオゾンとカペラが居間で何か話をしていた。
「ただいま。カペラ、久しぶり。帰ってきたよ。」
「あ、お兄ちゃん。お帰りなさい。そっちの人はお母さんが言っていたマフンっていう人?」
「そう。しばらくここに泊まるんだ。」
「初めまして。マフンです。よろしく。」
「あたしはカペラ。よろしく。マフンお兄ちゃんって呼んでもいい?」
「ああ、いいよ。」
「2人ともお帰りなさい。お茶入れてきてもいい?」
 オゾンが気を使って言った。
「それなら僕が入れるよ。マフンも一緒に飲む?」
「うん。じゃあ頼んじゃっていい?」
「いいよ。」
 ヒリュウはせっかくなので4人分のお茶を入れて持ってきた。そして、カペラにマフンと意気投合したことや、早く家に帰れる日が来てほしいとひたすら思い続けていたことなどを話した。
やがてヒリュウはオゾンとカペラが何を話していたのかについて尋ねた。それを聞いた途端、カペラの顔が曇った。
「…何でもない。」
「カペラ、お兄さんを不安にさせたくないのは分かるわ。でも、強がっていないで正直に話してごらん。」
「…。」
「それなら、お母さんが話してもいい?」
「…。」
「姉ちゃん、何かあったの?」
「あのね、カペラは学校でいじめにあったの。お母さんが外国人だからという理由でね。」
「えっ?いじめ…?」
 ヒリュウは驚いて聞き返した。マフンも驚きを隠せなかった。オゾンは学校であったことを正直に話した。
 一通り聞き終えると、しばらく沈黙が続いた。
「いじめねえ…。僕も外国人扱いされてからかわれたり、仲間はずれにされたりしたことあるからなあ…。」
「僕も母さんが家を去ってから、色々なこと言われたし…。」
 マフンとヒリュウも嫌な体験をしたことがあるだけに、決して他人ごとではなかった。カペラはこらえきれなくなってきたのか、涙を流し始めた。
「お兄ちゃん…、あたし悔しい…。自慢もしたことないし、何も悪いことなんかしていないのに…。」
 それを聞いて、ヒリュウは彼女のとなりに座って左手を背中に乗せた。
「今まで相談に乗れなくてごめん。でもこれからはここにいるから。悩みあるなら遠慮なく話してよ。」
「うん…。」
「僕も相談に乗るよ。何か似たような境遇だし。」
「ほらカペラ。あなたは一人じゃないわ。今日からは頼もしい相談相手が2人も増えたから。心配しないで。」
「うん…。」
 4人が話していると、今度は玄関で「ただいま。」という声がした。
「あ、あの声は父さんだ。」
 ヒリュウは玄関まで行き、「お帰り。」と言うと扉を開けた。
「おおヒリュウ、帰ってきたな。元気だったか?」
「疲れたよ。やっと帰ってこれたって感じで、ほっとしてる。」
「父さんも昔体験したんだが、やっぱりきついみたいだな。」
「まあね。でも、友達も出来たんだ。紹介するよ。」
「紹介するって、今この家にいるのか?」
「そうだよ。しばらくここに泊まるって。とにかく中に行こう。」
 ヒリュウとキリュウは早速居間に移動し、マフンを紹介した。彼は自己紹介の後、自分の生い立ちや、親と不仲で家を飛び出してきたこと。オゾンの好意のおかげでこの家に同居出来るようになったこと。そして、一度自分の故郷に住んでみたいということを話した。
「なるほど。君は、ナルビオンという国のルレクという都市出身かね?」
「はい。でも2歳でクウォルに移り住んできたので、そこでの記憶はないですけど。」
「君は、以前クウォルの軍隊が大勢で出動していったのを知っているかね?」
「はい。ヒリュウとそのことについて話しましたから。確か新型兵器の威力を試すための演習って聞いていましたけど、それが何かしたんですか?」
「い、いや。聞き逃してくれ。」
(キノンであんなことが起きても、やはりこいつらには知らされていないのか…。)
 キリュウはあの時出動していった軍隊について話そうとしたのだが結局話せなかった。代わりに別のことを言い出した。
「せっかく帰ってきて言うのもなんだが、父さんはこれからナルビオン国に行って、現地を取材してほしいと依頼されたんだ。」
「取材って海外に出張に行くの?せっかく帰ってきたばかりなのに。」
 ヒリュウは残念そうに言った。
「確かに海外に行くことになるのだが、実は家族も一緒についていけることになったんだ。そうなったらお前達はついてくるか?」
 いきなり意外なことを言われたため、オゾンは驚き、カペラはきょとんとしていたが、ヒリュウはすぐに嬉しそうな表情を浮かべた。
「すげー!昼間話していたことが早速現実になった!異国の地を旅してみたいという願いがこんなにも早く叶うなんて!」
「それって、僕もついていけるんですか?」
 マフンは興味津々に聞いた。
「君も行きたいのかい?」
「はい。自分の生まれ故郷に行くチャンスのような気がして。無理にとは言いませんが、お願いします。」
 予想もしなかったお願いに、キリュウはしばらく考え込んでしまった。
「…だめですか?」
「まあ、よかろう。故郷までなら一緒に行くことにしよう。」
「えっ?いいんですか?ありがとうございます。」
 マフンが喜ぶ中で、オゾンが言い出した。
「キリュウさん、旅行の費用は誰が出すの?」
「国から補助金が出るそうだ。僕に取材を依頼してきた人がそう言ってきてな。」
「じゃあ、資金面では安心出来そうね。」
 オゾンはほっとして言った。
「それじゃ、カペラは学校を休むことになるのか?」
「出かけるならそうなりそうね。カペラは学校と外国旅行、どっちに行きたい?」
 ヒリュウの言葉に続いてオゾンが問いかけた。彼女はなかなか決められずに、しばらく考え続けた。
「じゃあ、今学校は楽しい?」
「…楽しくない。」
 彼女は正直に答えた。
「一家で外国旅行するほうが楽しめそう?」
「…うん…。でも…。」
「でも、何?」
「学校休んで旅行に行ってきたら、帰ってきた時、みんなからは何て言われるのかなあ。逃げたとか言われて、からかわれたりしないかなあ…。」
 カペラはかなり悩んでいる様子だった。オゾンはしばらくかける言葉に困ってしまったが、それでも明るい口調で問いかけた。
「じゃあ違うことを学んでくればいいんじゃない?」
「違うこと?」
「そうよ。旅でしか体験出来ないことを学んでくれば、みんなきっと凄いって言ってくれるわ。心配しないで。」
「…うん。」
「じゃあ、一緒に旅行する?」
「うん。」
 カペラはやっと前向きに答えた。
(学校を中断して、旅ねえ…。いつかの僕みたいに、カペラも何かつかめるといいなあ…。)
 ヒリュウは母親と別れた後、キリュウと一緒に旅をした時のことを思い出した。
「じゃあ学校には明日、私が先生に話をするわね。」
「はい。あたしも一緒にお願いしてもいい?」
「いいわよ。」
 オゾンとカペラが話していると、キリュウが言い出した。
「ヒリュウ、旅行中は家庭教師をやってくれるか?」
「えっ?家庭教師?僕が?」
彼は物思いにふけっていたため、いきなり頼まれてあたふたしてしまった。するとそこにマフンが入り込んできた。
「じゃあ、僕が家庭教師になる。いいかな?」
「君がやってくれるのか?」
「僕、こう見えても頭いいから。僕で良ければ、喜んで引き受けます。」
「じゃあ、お願いしてもいいかな?」
「はい。分かりました。」
 マフンはキリュウに向かって自信満々に答えた。
「じゃあ家庭教師やるなら、これ解いてみて。」
 ヒリュウはそう言うと紙と鉛筆を取り出し、「6+2×3=?」と書いた。
「24だろ?」
「違う!答えは12!」
「あれ?あ、そうか!掛け算が先か!」
「大丈夫かお前。本当に頭いいのか?」
「まあ、何とかなるでしょ。」
 マフンがごまかすように言った。2人のやり取りを見て、カペラが笑い出した。
「お兄ちゃんも、マフンお兄ちゃんも面白い!旅行している間、3人で楽しく過ごせそうだね。」
「そう言ってくれてありがとう。でも、途中までだけどね。」
「それでもよろしく。お兄ちゃんがもう一人増えてあたし嬉しい!」
 マフンとカペラは今日出会ったばかりだが、いつの間にか親しくなっていた。
 5人はその後、夕食の時間も含めて色々な話をしながら楽しい時間を過ごしていた。
 翌日、オゾンはカペラ一緒に学校に行き、担任の先生と話をして、学校をしばらく休むことを伝えてきた。
 ヒリュウとキリュウは食料や水、取材用の道具など、旅の道中に必要なものを買い揃えに行った。

 出発前日の夜、旅行のための荷物整理を既に終えたヒリュウとマフンはこの日も家庭教師をしていた。2人は得意教科が違うため、それぞれの得意分野を担当することになった。片一方がカペラについている時には、もう一方は好きな本を読みながら勉強をしていた。
 勉強が一区切りつくと、マフンは気ままに部屋の絵を描き始めた。カペラは出来上がった作品を見て、早速興味を持った。
「マフンお兄ちゃん、絵上手だね。そんなにスラスラ描けるなんて凄い!」
「どうもありがとう。速記で描いたから雑かなと思ったんだけどね。うまいかなあ。」
「うん。上手だよ。もっと時間をかけて描けばさらに上手に出来るよね?いつか僕の顔を描いた時は驚いたし。」
「じゃあ一度あたしの顔を描いてくれる?」
「いいよ。そこに座ってくれる?」
「うん。どれくらいかかりそう?」
「そんなにかからないよ。10分で描いてみせる。」
「じゃあ、お願い。マフンお兄ちゃん。」
そう言いながらカペラは椅子に座った。
 マフンはページをめくると、早速スラスラと似顔絵を描き始めた。
 その頃、キリュウが自分の部屋で取材の準備をしながら考え込んでいた。
(みんなは旅行気分でいるが、これからキノンに行って、クウォル軍に攻撃された光景を見たら、一体どう思うだろうか。そして、キノンの人達は今クウォル人をどう思っているんだろうか。今は楽しい雰囲気を壊したくない。だが、いずれは伝えなければならん。果たしてこれからどうなるのだろう…。いざとなったら、自分はみんなを守れるだろうか…。)
 現段階では5人の中で、キノンの状況を知っているのはキリュウだけだった。彼一人が悩み続けていた時、オゾンが部屋に入ってきた。
「キリュウさん。何をそんなに考え込んでいるの?悩みなら聞くわよ。」
「話してもいいのか?せっかくのいい雰囲気を壊すかもしれんが。」
「私には何でも話すって約束でしょ?」
「…。なら、よかろう。実は…。」
 キリュウは言えずにいたことを包み隠さずに話しだした。
 
 翌日の午前中には、長距離列車の駅で、ナルビオン行きの特急列車に乗り込む5人の姿があった。これから7時間以上かけて目的地の駅に行き、そこからキャンピングカーを借りてナルビオン国内を移動していく予定になっていた。
 キリュウの悩みを全く知らないヒリュウ、マフン、カペラは電車内でわくわくしながらすっかり会話に盛り上がっていた。
 そうしているうちに電車が動き始めた。いよいよ長旅の始まりだ。
3人の様子をキリュウとオゾンは少し離れた席に座っていた。
 彼らは小声でこれから何を話せばいいのかについて協議を続けた。
そしてやっと考えがまとまり、3人にキノンでは自分達はクウォルから来ましたとか、クウォル人だとは絶対に現地の人には言わないこと。なるべく単独行動は慎むこと。都市の人達に感情的なことを言われようと、反論しないこと。これらを告げることを決心した。
 時計が正午を示す頃には、5人を乗せた電車はクウォルを出て、隣国のナルビオンに入ろうとしていた。












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