ぐしゃ。
紅葉を踏む音がする
バリ。
紅葉が割れる音がする
この世界みたいに、割れた紅葉。
二度と形が戻ることはない・・
「なにもかも、無くなって、消え失せてしまえばええのに・・」
割った紅葉を、手で掬い取る。
粉々に砕けて、べそをかいているよう。
でも、その赤は、健在していた。
市丸ギンは、もう一度、その紅葉を、ぐしゃりと握りつぶした。
今度こそ、本当にバラバラになった紅葉は
ギンの足元にはらりと落ちて
他の紅葉にまぎれた。
そこだけが、なぜか明るく映る
気に食わない、気に食わない、気に食わない。
もう一度、そこをぐしゃりと踏み潰した。
残されたのは、足跡と、薄い笑み。
「おーい。お前なにしてんだ」
振り返ると、後ろに藍染と日番谷がいた。
二人とも書類を抱えていた。
日番谷はむくれた顔だが、藍染は笑っている。
だが市丸は知っている。
その笑顔の裏に
恐怖が隠れている事を
邪悪が隠れている事を
日番谷に対しての
殺意を押し殺している事を。
「別に・・ちょっとした散歩みたいなモンです」
シロなのにアカ、白なのに、赤色に見える。
日番谷冬獅郎。こいつも気に食わない。
今すぐ、殺してやってもいい。
そう思う。
「散歩もいいけど、あんま紅葉を踏み潰すなよ。見栄え悪くなるだろ」
日番谷はぶっきらぼうに言った。
(こらまた・・強情な口聞く子供やね)
「藍染隊長〜!書類なら私が届けます〜っ!」
角を曲がって走ってきたのは雛森。
「雛森くん。ありがとう。でもいいよ、今日くらい僕がやるよ」
「そーですか・・?あ、日番谷くんだ!おはよう!」
「日番谷隊長だ。ついでに今はもう朝じゃないぞ。夕方だ」
ギンはその光景を狐のような目で見ていた。
たわいも無いおしゃべりと
笑い声が
そこを包み込んで
自分一人が
異色。
藍染はそのことを感じさせないし
自分を善人に見せるのが
とてもうまい。
自分はそれが苦手だから
そんなことは出来ない。
2人が去った後、藍染とギンは2人きりになった。
「そこの紅葉を潰したのはキミかい?ギン」
ふいと頭を下げてみると、自分の足元には粉々に砕かれた紅葉が・・
無意識に踏んでいたのか、荒い。
「ボク以外に誰がおるんですの」
ギンは、長い手を横にぶら下げていっそう目を細めた。
「そう怒らないでくれ」
「怒ってませんよ。ただ、赤が、映ったから・・」
藍染は軽く目を開いたが、すぐに意味が分かった、とでも言いたそうな顔で
ギンを見た。
「もう少しだよ。朽木ルキアが帰ってくれば我々の計画は実行される
東仙も準備が出来ている。あとはキミだよ。ギン」
もう少しすれば
赤の無い、黄色の無い、色の無い世界へ
行ける。
黒ばかりの、邪悪ばかりの世界へ。
「はい。藍染隊長・・」
夕暮れ時の空に
悪魔が笑った。
「イヅル。まだ蔵ん中に酒残ってるん?」
「残ってますけど・・朽木隊長みたいに仕事もちゃんとしてくださいよ」
酒が喉を通った頃、唄が聞こえた。
うさぎ
うさぎ
なに見て
跳ねる
十五夜
お月様
見て
跳ねる
「なんや。その唄」
イヅルがか細い声で歌っていた唄。
「知らないんですか。十五夜の唄ですよ」
月が嫌い
太陽も嫌い
鮮やかな色を放つものは全て嫌い
「あ!隊長知ってました?月って他の光の力を借りて光るんですよ」
「知らんかったわ・・」
皆は太陽
我等は月
ほんとの色を
持っていない
「イヅルは、月というより太陽やな」
「市丸隊長は三番隊の太陽ですよ」
ご免な。イヅル
その期待には・・
応えてやれない。
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