第2話 〜桜井涼の来襲〜
次の日はいつもの朝。
昨日あんなことがあったけど
あたしはいつものとおりに
登校してる。
…学校休むくらいの
繊細さがないのは
我ながら
どうかしてるんじゃないかとは
思ってる。
「おはよう!」
小学校のころからの幼馴染
中村翔子。
いつものとおり。
笑って声をかけてくる。
「…あ、おはよう。翔子」
「どしたの?
何か元気ないね?
昨日メールしたけど
なんか返事ないしー。
最近ノリ悪いよー。灯」
「…あのね…」
「ショコ、おはよ!
昨日の宿題で
わかんないとこあってさあ。
教えてくんないー?」
他の友達が
翔子に声をかけてくる。
「いいよ!わかる問題ならねっ」
あ。また。
きっかけを無くしちゃった。
タイミングが難しいんだ。
翔子はアイドルみたいに
可愛い。
可愛いだけじゃなくって、
性格も明るくて優しい。
これで運動もできて
頭もイイってなったら…。
みんなほっとかないよ。
男の子はもちろん、女の子でも。
ちょっと気が強いけど。
あたしはそんな翔子の性格、
大好き。
でも、翔子はいつも忙しいから。
あたしは深刻な話は
タイミング失うんだ。
アイドルの曲がどうとか、
昨日見たテレビとか。
そんな話なら簡単なのにな…。
だって。
昨日のことなんて。
どうしてあんな事
されなきゃいけないのか、
あたしにだって
わからない事なんだから…。
どこから言えばいいのかな。
あ。
かえってこんなトラブルの話、
迷惑にならないかな?
とか考えちゃって。
メールしてみようかな…?
『昨日、5人の先輩に囲まれて
バケツ水かけられちゃって
大変だったんだ!
真先輩に
関係があるらしいんだけど
あたし真先輩と
話もしたことなんてないのに
何でかな?』
………。
打ってみたけど。
ダメだこれ。
暗い。
内容が内容だけに…
明るくしようが…ない気が…?
こんなん送れないや。
ホームルームが始まった。
担任の山口が何か言ってる。
だけど今日はそんな内容も
頭に入って来なくて。
頭の芯がぼっーとしてる。
ガラッ
え?
教壇の先生が
ポカンとした顔をしてる。
先生だけじゃなくって
教室のみんなも。
なに?
勢いよく開いた戸に
立っているのは男の子。
身長が高い。
色白で、痩せてて。
髪は黒くて短い。
目が綺麗。
髪、脱色も何もしてないのに
ちょっと目立つ感じの…。
「おい?お前のクラスは隣だろ。
何寝ぼけてんだ桜井」
山口先生が
その男子生徒の名前を呼んで
注意してる。
へえ。
隣のクラスの担任にまで
名前覚えられてるんだ。
目立つ風貌だからかな?
何にせよ、
あたしとは違うタイプで
世界がちが…
え?
その男子生徒は
みんなの注目も気にしないで
こっちに来る。
「アンタ」
…は…?
「名前は?」
え!?えええ!?あたし?
「涼、ナンパかあ?」
クラス中がどっと笑った。
やだ。恥ずかしい。
こんなのって…!?
「るせぇ、渡辺。黙ってろって」
クラスでお調子モンの渡辺君を
軽くいなして…。
それだけでもあたしの頭は「???」でいっぱいだ!
「アンタ、ちょっと来て」
「あ、あたし…!?」
あたしの右手首を強く掴んで、
そのまま引っ張るから。
変に高い声が出ちゃって、
またクラスのみんなに笑われた。
「桜井、コラ!?」
山口先生が追って来ようとする。
けど
騒ぎが大好きなクラスメイト達に
止められてる。
翔子が
「何?どうしたの?」って顔で
あたしを見てる。
あたしにもわかんないよ!!
助けて!
そして。
引きずり出されるように、
あたしは教室を後にした。
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