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第11話 〜夜中、アカリは絶叫する〜





 そうやって
 浮ついていられる時間だって
 限られているんだ。




 あたし達は勉強をする。


 2年になるまでに
 理系か文系かを選んで。

 3年は行ける中から
 まだ行きたいかなーって大学を選んで。

 ずっと大学受験に備える。



 あたしは何になりたくて。

 何になれるんだろう。



 最近科目ごとに
 ミニテストが増えた。


 追いていかれないようにするだけで
 せいいっぱいだ。



 大人になるって…
 みんなこうやってガマンして。

 詰め込んで。


 あたしは要領悪いから。

 なんか…。

 テレビドラマに出てくるような

 ものすんごいキャリアなんかはつめなくて。

 ヒロインっぽい
 クールビューティーとかなんか
 絶対無理だよなあ。






 隣の席の男子、
 浜田が大声を出す。


 「数学のノート、
  提出お願いしまーす!」


 浜田の『は』と、日野の『ひ』。

 あたしも日直だったから、
 何だかこういう雑用まで任される。


 苦手なんだけどな…。


 「ひのちゃーん。

  俺、部活急ぐの!

  悪りぃ。

  ノート、
  職員室まで持ってってくんね?」



 こういう時だけ、
 なれなれしく浜田が甘えてくる。


 何で男子って…
 こーもコドモ?


 あたしが大人しいからかな。

 可愛いわけでもないし。

 だから態度、こんなん。

 なんで、もっーーオトコって。
 相手によって態度こんなにロコツ?


 
 「しかたないね。
  …いいよ。
  集めてくれたの、
  浜田だし…。」


 「じゃー、よろぴく!
  日野ちゃん、
  マジメで助かるー」


 何がよろぴくだ。

 ニホンゴ喋れ。
 

 …と。
 言える性格なら楽だよねえ。


 それでも浜田は悪意ないから。
 まだ楽だ。


 アレはアレで
 あたしが大声出すのとか
 苦手なのを知っていて。


 さり気なくフォローはしてくれてる。


 フォローだけなんだが…。


 それは許せるくらいで。

 もっとひどいヤツになると、
 まったく作業になんない。


 …このクラスは…
 そういう人は、いないかな。



 渡辺くらいか!!!


 ま。

 『ひ』のあたしには
 『わ』の渡辺は
 関係ないからいいけど。


 それに。

 渡辺の日直相方は
 矢野さんというハキハキした女の子だから、
 がんがん言いくるめられてる。

 何というか。

 女の子は総じて
 しっかりしてる。






 「よいっしょっと」


 2組の42人分のノートは、
 少しだけ重い。


 「…ん?
  …いち、に、さん…」



 …ノート…
 一冊足りないんですけどぉ…?


 もしや と思い、
 最後のノートの表紙、名前を確認したら。


 あーあ。

 やっぱ『渡辺』だ。



 ヤツは
 提出してねええええ!!



 ………。
 そこまでは日直の仕事じゃないし。

 数学の宿題。

 数学教師の畑山は
 …学年主任で…超厳しい。

 けど。
 そんなん
 あたしのせいじゃないし!



 職員室について。

 ノートを左手で支えて
 何とか引き戸を引こうと格闘してたら。

 ふいに戸が開いて
 先生(誰か見えない!!!どうせチビ!)が
 出てきたもんだから。



 クラスぶんのノートと
 あたしの鞄。



 廊下にバラまいた。






 「……どういう器用な落とし方をしたら。

  こうなる?
  日野よ…」


 ちょっとトボけた声で、
 体育教師の秋山ちゃん(41歳男性・既婚者)が
  あたしに声をかけた。



 同情するなら
 手伝ってくれええええ。


 




 そして夜。


 自宅。

 部屋で。

 お風呂あがり。



 あたしは気がついてしまった。


 できれば
 気がつかないままが幸せだった。



 背筋が寒くなる事実。




 翔子から預かっていた
 ピンクの表紙の


 『略奪計画ノート』が…




 カバンにないっ!!!







 


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