第1話 〜春先にバケツ水〜
何で
こういう事に
まき込まれちゃったんだろう?
目の前には
綺麗系のお姉さん方が5人。
怖い目で睨んでいる。
…だけならまだいいんだけど。
「あんたなんか、
真に似合わないんだよ」
「たいして可愛くもないくせに」
「真には坂田亜季っていう
れっきとした彼女が
いるんだからね!」
口々にそう怒鳴られる。
真っていうのは
学年が2年の先輩。
佐藤真。
頭のいい、
ちょっと怖い感じの人だ。
人気があるっていうのは
見ただけでわかった。
あたしのクラスにも
ファンがたくさんいる。
あたしが真先輩に似合わないのも知ってるし。
たいして可愛くもないのなんか知ってるし…。
坂田亜季さんだって見かけた事はあるし…。
だけどね。
真先輩は
あたしと何も関係が無いし。
そりゃ、
確かにカッコイイなぁとは
…思うけど。
好きとか。
そういう気持ちなんてない。
それを言おう言おうって
してるんだけど。
ぜんぜん口を挟めない。
日野灯 高校1年。
どこにでもいる
平凡きわまりない
地味めの女の子。
ちょっと近眼でメガネ。チビ。
コンタクトは
アレルギーっぽくて、
合わない。
髪型は…
肩までの髪を
横でひっつめてる。
色は染められない校則。
だから。真っ黒。
何だか客観的に考えてて…
イヤんなったくらい普通。
「ちょっと聞いてるの!?」
いけない。手が…。
目の前の
茶髪の女の子の手が。
上がる。
殴られる。
と身を竦めたんだ。
そしたら。
ばしゃん。
って。
冷たさと同時に音がして。
あたしは
ずぶ濡れになって、
そこに居た。
***
「困ったな…。」
彼女達は笑いながら、
去っていって。
あたしはそれで
解放された形になった。
女子トイレの個室で
体操着のジャージに着替えて。
でも。
こんな姿で帰れない。
お母さんが何て言うか…。
心配かけちゃうし。
まるで苛められたみたいな…。
って。あれ?
これって…
イジメ…なのか…な…?
喉の奥がツンって痛くなった。
ダメ。
泣きそう。
こんな
訳のわからない事でなんか
泣きたくない。
なんで?
なんでこんなことになったの?
気にさわること、
あたし、したかな?
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