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こんな夢を見た-沈黙病

作者:青葉台旭
 世界中で、五秒間(だま)っていると脳を侵されて狂暴化するという病気が流行していた。
 教室では僕以外の生徒全員が、誰かと途切れなく話していた。
 病気に感染した人間は話すのを()めると脳に異常をきたして狂暴になってしまうからだ。みんな狂暴化するのが嫌で必死で誰かと話していた。
 教室内でただ一人、僕だけが黙って机に座っていた。
 僕は病気に感染していないので黙っていても平気だった。
 ふと教室を出ようと思い、僕は立ち上がって出入り口まで行って引き戸を開けた。
「ガラッ」と、戸を開ける音が響き、教室中の全員が僕を見た。
 しーん、と教室内が静まりかえった。
 みんな、話をするのを忘れているようだった。
 突然、クラスメートたちが鬼のような形相になり、僕を追いかけだした。
 僕は必死で廊下を走って逃げた。
 狂暴化したクラスメートの集団に追いかけられて、僕は女子更衣室に鍵をかけて()()もった。
「おーい! ○○(僕の名前)! 出てこい! ぶっ殺してやる!」
 女子更衣室の外から、同級生たちの叫ぶ声が聞こえた。
 狂暴化しても話すことはできるようだった。
 僕は、どうしようかと迷った。
 そして、窓から逃げる事にした。
 女子更衣室は一階にあり、窓を開けると学校の隣にあるお寺の敷地だった。
 僕は、窓からお寺の境内に降り立った。
 庭の真ん中で、和尚さんが竹ぼうきで敷石を()いていた。
「おやおや、どうしたんだい?」
 和尚さんがニコニコ顔で話しかけてきた。
 直感的に「この和尚さんも感染しているな」と思った。この和尚さんも話すのを止めたら狂暴化すると思った。
 僕は、和尚さんとくだらない世間話を長々と続けた。
 しかし、和尚さんと話していては、狂暴化したクラスメートたちに追いつかれると思った。早くここから逃げなくてはいけない。
 その時、フラリと知り合いの漫画家が寺にやってきた。
 いつも温厚なその漫画家は、相変わらず温厚な笑みを浮かべていた。
 僕は、直感的に「この漫画家は感染していない」と思った。
 そこで、漫画家に和尚さんの話し相手になってもらって、その間にお寺の(えん)(した)へ逃げようと思った。
 僕は漫画家に話しかけた。
「このあいだの漫画、とても面白かったですよ」
「うん。あれは○○漫画賞(有名な漫画の賞)を受賞したからね。これからその授賞式さ。忙しいから、悪いけど君の話し相手をしている(ひま)は無いんだ」
 そう言って、漫画家はサッサと何処(どこ)かへ行ってしまった。
 その時、和尚さんが「ブギャー」と叫んだ。
 僕と漫画家がしゃべっているあいだ黙っていたのでウィルスが脳に侵入して狂暴化したのだった。
 僕は必死で和尚さんから逃げた。
 お寺の縁の下に潜り込んだ。
 和尚さんも縁の下に入って来た。
 僕は追い詰められた。
 そこで目が覚めた。

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