第一話「一つの終わりと一つの始まり」
カールゴッチの泣いた日
1914年6月27日ボスニア・ヘルツェゴビナ(サラエボ)某古屋
「ガヴリロ!!こんな計画・・やめるんだぁ!!」
「ヨーロッパに併合されて6年!!この6年・・どれだけ俺達セルビア人が苦痛を受け民族の誇りを傷つけられたか、お前も解るだろう!?止めることなんてできるか!!」
「だからって・・・そんなことをしたら・・そんなことをしたら・・世界は・・!!」
「世界がどうなろうとしったことではない!!俺達はただ、民族全ての怒りを!!哀しみを!!思いを!!あの豚共にぶつけるだけだ!!!わかってくれカールゴッチ!!」
ほこりとクモの巣に包まれた不気味な部屋。小さい部屋が1つしかない。
入り口と直結した部屋のど真ん中にある古ぼけたテーブルとイス。
テーブルの上には小さなロウソクが、電球の代わりとポツリと置かれていた。
深夜の暗闇を小さく照らすために・・。
そしてそのテーブルを口論場に、二人の青年がイスに座りながら激しい論争を繰り広げていた。
「今、ヨーロッパの各国の仲は険悪すぎる・・。そんな中でこんな計画・・火薬の袋に火を入れるようなものじゃないか!!私怨でヨーロッパ全住民を不幸にする気か!!ガヴリロ!!」
「ふん・・。計画発動後、戦争が起こってサラエボがヨーロッパ領から外れることができたら万々歳さ。俺は英雄として永久に称えられるだろうよ。」
「馬鹿なことを言ってる場合か!?なぁ・・本当に止めてくれ・・。」
「止めることはできない・・。一生に一度しかないチャンスを逃すわけにはいかない・・。わかってくれ・・?カールゴッチ・デトリー・・・。我が生涯の友よ・・。」
辺りの静けさに合わせるかのように、静かにガヴリロは言った。
「・・・・・止めてはくれないのか・・・?」
無理であろうと理解しながらも、問いかけたカールゴッチ。不安の表情が顔を包み込む。
「・・・・・止めることはできない・・。」
ガヴリロは返答すると目を瞑り動かなくなった。
カールゴッチはしばらく口を両手で抑え、目を全開に開きながらガヴリロを見つめた。
しばらくして、カールゴッチはそっとイスから立ち上がった。
ガヴリロは先ほどと変わらず、目を瞑ったまま動かない。なにかを考えているかのように。
「親友よ・・いや兄弟よ・・。お前とは・・今日が別れ・・だな。」
涙を浮かべながら腰にあった拳銃を両手で力強く握り締め、カールゴッチはガヴリロのほうに銃口を突きつけた。
ボソリと言ったカールゴッチの言葉と涙声から、ガヴリロは今の状況を全て理解し目を瞑りながらもピクリと体を動かした。
「本気・・・か?」
ガヴリロは冷静に呟く。その声はどこか冷たく悲しみが漂っていた。
「ああ・・本気・・だよ・・。ガヴリロ・・。」
堪えきれず、大粒の涙を流し手を震わせながらカールゴッチは言った。
ガヴリロは目をかっと開くと悲しそうな表情を浮かべ、口を振るわせながら言葉を出した。
「そう・・か・・。お前・・は・・いい・・友だった。兄弟のような仲で溺愛していた・・。俺も・・お前も・・。」
ガヴリロの言葉を聞き、震わせていた銃の銃口が一瞬だけガヴリロからずれた。
その隙を逃さず、ガヴリロは一瞬で立ち上がり瞬間的にカールゴッチの腕を掴み銃を奪った。
ハッとした表情を浮かべたカールゴッチだったが、一瞬で顔が青ざめていった。
「兄弟・・お別れだ。長生きしろよ・・。」
ガヴリロはそう言うと哀しみに満ち溢れた表情を浮かべ、銃の引き金をゆっくりと引いた。
一回の銃声が古屋の壁をぶち破り外へと飛び出していった。
※このストーリーの内容はフィクションです。
※史実に登場する人物は全て作者の空想上のものです。
※他国の文化、歴史等を否定、中傷する意図は全くないことをご理解ください。 |