挫折、そして泣きっ面に異世界
まず言っておきますが、俺は天才って奴が大嫌いです。
イキナリな話で、申し訳ないですけどね。
俺もね、以前は自分にも、そこそこ程度の能力は、備わっていると思ってたんですよ。
ある事柄に関していえば、地元は元より、それなりの範囲に名前が売れてますし、色々と実績も残してます。
高校出てからは、それの縁で就職。
今もね、それでメシを食っていける位には、関わっている事ですしね。
そりゃあね、飛びぬけて凄い全国ナンバーワンだの、怪しげな独自技術のスペシャリストだったりはしませんがね。
継続が力になってるだろうって、確信できる程度の自信はあるんですよ。
それでも、天才なんていう手に負えない奴は、物事をある程度以上に突き詰めれば、意外にポロポロと出会ってしまうものでしてね。
今だってそうだ。
人の努力をあっさりと無にしてくれる。
「凄い、凄い凄い!!
僕は貴方みたいに凄い人には、始めて出会いました!!」
「そりゃ、光栄の至り」
おいおい、マジかよもうっ!!
今の今に修正したばかりで、もうアラートが鳴りっぱなしだ。
ええと、ここの数値を修正、シールドの追随パターンをBへ。
あーもう、どうしてあれだけ収集したデーターが、こうも短時間で塗り替えられていくんだ。
「僕の攻撃をここまで凌ぐなんて!!」
全く嫌になるな、くそっ!! 基本負ける事は考えてないんじゃねえか。
機体スペックはこちらが優位なのに、動きの先を取られて後手にまわされている。
操作技術はともかく、攻防と間合いの出入りの感覚が、まるで予知能力じみてやがる!!
データー収集からの先読みでの封殺は、こちらの持ち味だってのに、とっさの判断の部分で遅れを取っている。
つまりこいつは、俺があちらの癖を読んで、先取りしようとしているこちらの動きを見て、瞬時に行動を変更しているって事だ。
それでも凌げているのは、その反撃行動が、収集したデーターの対応範囲に収まっているお蔭で、それに対応した操作マクロのパターンが、俺の指示よりも先に機体を動かして防御できているからだ。
ぶっちゃけ俺の操作技術というよりは、蓄積した戦闘データーのお蔭……つまりは俺の手掛けた戦闘ルーチンと、それに対応できる機体の優秀さに他ならない。
とはいえ、そんな勝手に暴れまわる機体を宥めつつ、かつパラメーターを一部変更するだけで、立っている事すら難しくなるという、膨大な要素の絡む機体操作のマクロパターンを、適宜修正しながら適用していけるプレイヤーは、俺くらいしか居ないだろうけど。
それでも少しずつ、こちらの予想範囲を超えて、防御をちょいちょい突破してくる攻撃が増えてきた。
機体中枢を中心にカバーしているシールドで、守り切れない部分を削っていく。
「本当に、この機体は凄いよ!!
あなたの組んでくれた機体で、あなたと戦えるなんて!!」
嬉々とした声が届く。
いや、その機体でどうやって、こうまで俺の機体を押し込めるのか、想像もつかないよ!!
俺の『ケイオス』は、在り物の機体に限界を感じてから、自分での散々手を入れて来た、俺の年月の結晶。
そっちは素の初期機体を効率化して、駆動部やら関節のロスを丁寧なフィニッシングで、小さくしただけの機体なんだぞ。
名前こそ『ジークフリード』なんていう大層な名前がついてるけどな、よく動くだけの既製品なんだよ!!
仕事のお得意さんから頼まれた片手間のやつなんだ!!
「なあ、君ってさ、例のゲームを結構やってるんだろ?
うちの知り合いの子がさ、今度始めるらしいんだ。
だからさ、初めてでも使いやすいようにしてやってくれない?」
そんな風な事を言われて、ちょっと手を入れただけの代物なんだよっ!!
そんな機体で全国百傑に乗り込んでくるとか。
今迄に、俺を踏み台にしてランカーに成っていった奴でも、もうちょっと自分で手を入れてたよ!!
ああ、これが天才って奴か!!
そんな漫画みたいな奴、本当に居やがるんだなぁ。
せっかく、引退ランカーの繰上げで、晴れてランキング入りだと思ったのになぁ。
確かにフレッシュマン大会の優勝者に、101位への挑戦権があるのは知ってたけどさ、このタイミングで来るかよ!!
今の今迄、ランカーへの道に全く関係無い時は、新人なんぞ散々蹴散らしてたのになぁ!!
いざランカーへの道が見えた瞬間に、こんな天才君と当たるとか、神様はよっぽど俺が嫌いなのか!!
もしかして社員がランカーなのは、外聞が悪いとかな理由で、誰か手を回してないだろうな?
社員でランカーなんて奴は、結構居るじゃねーかよ!!
いや、落ち着け落ち着け、今はそんな事はどうでもいい。
やる事をやらねば。
「とはいえ……くそ。 どうにか見つけた隙をつくにも、相打ち狙いしかないとかな」
今、天才君の機体『ジークフリード』は、両手持ちの大剣を、左右の袈裟切りを繰り返して、縦の回転を維持。
時折、こちらの機体のサイドに隙を見つけては、一撃離脱で削るように攻撃してくる。
こちらが押し込んで剣の回転を止めてしまえばと思うのだが、抜群の感覚でこちらの動きに合わせて引いていきやがる。
それに下手に押し込めば、大剣の回転は下から上への切り上げ、あるいは横回転に変化して、首なり足なりを狙って、するりと致命の一撃を送り込んでくるのを、散々収集データーで見せ付けられている。
見つけた隙だって、ぶっちゃけるとフィニッシュの傾向に、こちらの首の右から入れる袈裟切りが多いというか、お気に入りだというのを知っているので、ちょっと隙を見せたら食い付いて来たって言う程度のものだ。
それに合わせて一撃入れられれば、道が開けるかなーという希望的観測だが、やらねばジリ貧で負ける。
(……くそ、やってやる!!)
「そろそろ決着をつけます!!」
「やってみろ!!」
俺は右手の剣を振り上げ、強引に相手の剣に叩きつけ、攻撃に割り込ませた。
「そんな荒い攻撃なんて!!」
その一撃を天才君は、あっさりと回転の力を込めた一撃で叩き落し、こちらは叩き落された剣に引かれて、首を差し出すようにたたらを踏む。
その隙を見逃さず、ツバメのように翻った剣が、こちらの首を狙ってくる。
剣で防ぐのは間に合わない。
剣を捨て、右腕を首に添えて、つんのめるように突撃する。
「な、なんてことを!!」
「なんとーーーー!!」
回転の変化直後、スピードが乗り切ってないタイミングで懐に入れば、いくら両手剣でも軽量級のパワー、腕の一本は落とせても首まではっ!!
ガツンと衝撃。
腕、肩、背中にダメージ。
アラート表示で真っ赤になる。
「構うかぁあ!!」
頭から相手の胸元へ突っ込む。
万歳する相手に左腕で構えていたシールドを!!
シールドを……。
「……くそ、ここまで来て」
左腕が上がらなかった。
盾でぶち上げようとしたが、だらりと下がったケイオスの左腕に力は戻らなかった。
「くそ」
胸元をひしゃげさせ、ふらつきながらも体勢を立て直したジークフリードが、その剣を振り上げるのを感じた。
「ごめんなさい」
画面の表示が落ちた。
「ぐぞおおおおお」
俺はボロボロにされたケイオスを、エディタで修正しながら悔し涙に濡れていた。
「ごめんなさいとか!! お前なに様だよオオ!! くっそーーーーーーーー!!」
ああ、これでまた万年101位の記録が伸びた。
「やっぱり、俺には無理なのかよ」
このゲーム、『ミッシング・ウォー』に出会ってから、俺は全国百傑を目指して色々と研究してきた。
恥を忍んで、ランカーの機体のメンテを引き受けたりして、そのカスタムを真似ては試行錯誤してきた。
ノウハウの蓄積は、高校時分の小遣い稼ぎにゲーム内ショップで、各関節や駆動部だののパーツのパッケージを売ったりしてた位で、あげく後にはゲームの管理会社に勤めているランカーに、高校を出たらうちにおいでと言われて、本当に入社しちゃう程度になっている。
一応、高校は工業で情報処理やってたが、やってる仕事は営業兼広報で『カスタムQ&A』とか、解説本のライターとか、使いやすい初期製品のバランス取りとか……選択授業だった、製図関連のCAD弄った経験の方が、役に立つとかな状況になっている。
ちなみにゲームで古い馴染みには、俺が就職した事が身内バレしている。
そんな俺が、やっと101位まで上り詰めたのは、中学最後の夏休み大会。
始めたのが中学入学して、それなりに経ってからだから、一年とちょっと掛かった計算だな。
そこから、あと少しと願い続けながら、その順位で固定されてから現在で五年以上になる。
ランカーもあらかた入れ替わる中、ずっと維持している101位に『無冠の帝王』だの『門番』だの『栄誉の守護者』だの『公式ランカー認定官』とか言われている。
全く嬉しくない。
「やる気が起きないな」
仕事と別に続けている、カスタムの依頼だとかアイテム作成依頼だとか、メールが溜まっているものの、粗方消化できてない。
ここのところ、休みの日はあの天才君のデーター取りだとかに掛かりきりで、マクロ設定したりケイオスいじったりに、かなりな時間使っていたからなぁ。
……俺、これでも社会人か?
ああ、今更だが自己紹介しておこう。
俺の名前は『杵島木 一哉』
プレイヤー名は『KAZUYA』、愛機は『ケイオス』だ。
MMORPG『ミッシング・ワールド』と派生ゲーム『ミッシング・ウォー』では、そこそこ有名なプレイヤーだと思う。
何で有名なのかの一端は既にご存知だろう。
ついでにゲームの紹介も。
うちの会社が管理をしている関係で手前味噌な話になるけど。
元々、ミッシング・ウォーはミッシング・ワールドの中の、一要素でしかなかったんだ。
さらに言えば、ミッシング・ワールドも当初は、十把一絡げの有り触れた国家戦争をモチーフにしたMMORPGでしかなかった。
それが中世の剣と魔法の世界に、何をトチ狂ったか王家の秘密兵器として、巨大ロボットである所の『機兵』が導入された時から、ミッシング・ワールドは名前が売れ出した。
俺が中学に入った頃には、稼動三年位になっていたけど、名前がバーっと出たのはそのタイミングだったな。
それ以降、どんどんと規模が大きくなっていった。
しかし、数万人規模のゲーム世界の中に、機兵は百機足らず。
その希少さと笑っちゃうような強さから、機兵のRMT(現金でのトレード)が暴走。
社会問題になる程に話が大きくなった。
いやあ機兵が歩くだけで、カンストレベルのプレイヤーが死にまくるんだよ。
何を考えてるんだって話題になってたなぁ。
それだけに金持ってる連中は派手に動くし、場合によっては色々と噴出した事件によって、ゲーム会社の危機にもなってたと思う。
そこで対応策として、ミッシング・ウォーが現れたんだ。
つまりは機兵による、戦闘だけを抽出してのランキング戦。
そして全国百傑たるランカーのみに、ミッシングワールド内で機兵を使えるようにしたんだ。
これで、ランカー以外には機兵を使えず、トレードも出来ないようになり、問題は終結。
うまい事を考えたよね。
これで誰でもが機兵を動かし、カスタムの自由度やその強さを楽しめるようになった。
俺も機兵の登場から、ゲーム自体に興味はあったんだけど、あからさまな現金が飛び交うさまに引いててさ、一寸躊躇してたんだよね。
面白そうなんだけどなって、ずっと思っていたから、このチャンスには飛びついたね。
そして全国百傑に、最も近くて遠い男と呼ばれるように……。
さて、気を取り直して。
実は俺は機兵が使いたくて、ランカーを目指している訳じゃない。
何故かというと、俺は既にミッシング・ワールド内で、機兵を持っている。
それも複数……でもこれは、ある種の名誉職扱いなんだよね。
ぶっちゃけると、ゲーム内ショップでの評価になる『お助け有難うポイント』(俗に感謝ポイント:良心的なショップにプレイヤーが投票する)の一定評価と、全ランカーの内での最多名誉点(主に勝利等で貰えるポイント)を持っている為だ。
ショップの方は、ほぼ商売っ気なしでやってたし、感謝されるのは嬉しいので良いのだが、問題は名誉点の方だ。
これは単純に、ランカーの変動は年四回のグランプリでしか変わらない上に、普通の大会ではポイントが稼げない(そのかわりグランプリは桁が違うポイントが入るが)のに比べて、圏外の俺は引っ切り無しに地方大会等の優勝者に狙われるから、大会優勝に準じたポイントが入る(グランプリでのポイントに比べれば一桁少ないが)
それを五年も繰り返していれば、嫌でも溜まる。
ただ、あくまでもそれはミッシング・ワールドの中だけで通用するもので、ランキングには全く関係ないけど。
ランカーになるにはグランプリでの直接対決で勝つか、ランカー引退での繰上げしかないのだ。
今回はその繰上げが見事に潰された。
それじゃあ、なぜランカーを目指しているかといえば……ぶっちゃけ、意地です。
名誉点にも関わるけど、ミッシングワールド内の機兵に使える資源というか、カスタム等に使えるお金みたいな物は、初期状態の機兵分+ワールド内で稼いだ物+名誉点の変換分なのだ。
つまり俺は、基本的にワールド内では最強と思われても、仕方が無い程のポイントを使える。
実際使っているし、ワールド内で負けた事も無いから、溜まる一方。
それがランカーになった事の無い、万年101位だったら格好がつかんでしょうが!!
でもそろそろ限界かなとも思う。
今は機兵の操作に、アクションやシューティングを基にした物が使われている。
ミッシング・ワールド内での操作とは全く違うのだ。
元々は、フライトシミュすらも生温いと言われる程の、えげつない難易度の代物。
歩くコケル、曲がるコケル、剣を抜くコケル、振り上げるコケル。
とりあえず戦場へ着くまでに、怪我をしないのが大事かと言われていた頃もあった。
それをマクロの登録や、細かい設定で何とか動かせるようになるので、ランカーの強さ=ワールド内での強さではない。
そんな中、俺はワールド内での操作を、ミッシングウォーでもそのまま使っている。
細かい操作が出来るということは、簡易な操作で出来ない事も出来るということなのだ。
簡単に言うと、俺はケイオスで逆立ちもバック転も、某YOSHIMITU張りの自刃も出来るが、ランカー連中はよっぽど変な登録をしていない限り出来ない。
でも、そんなことは関係なく、ミッシング・ウォーはミッシング・ワールドを置き去りにして、進化し続けている。
だから、ワールド内で使われる機兵は、ランカーの一部と俺と同じく名誉所持の十何人で、四十機に満たない。
殆どが領主職だの、ギルドマスターだのばかりだ。
機兵同士の戦闘も、殆ど起こっていない。
ミッシング・ワールドは、停滞している……。
「ぐわあああああああ!! えええい、気が滅入るっつーの!!
はあ、ワールドの情勢でも眺めてニヤニヤするか……」
クライアントを立ち上げる。
……
……
……
「あー、平和だのう」
北部帝国の蛮族征伐だの、諸島連合の内輪もめ位で、中央部は平和なもんである。
動きたくても動けないというか。
大陸中央部は五ヶ国がひしめいているが、三強二弱でもある。
ただ、兵力差を簡単にひっくり返す機兵のせいで、動くに動けなくなっている。
いっちゃん弱いとこに俺が居るせいも有るんだが。
「さーて、頼まれものの剣やら作るか……」
ちなみにプレイヤーとしては、錬金術と鍛冶の一通りがマスタリーで、生産系は一通り齧っている。
戦闘系スキルの魔術と剣はそこそこより上程度。
機兵乗りのスキルである機士は、プレイヤーの腕次第なので、機兵を持ってる時点でマスタリー扱い。
珍しいとこでは、機兵鍛冶とか。
これは、ミッシング・ウォーのカスタムで、優秀と認められた者に与えられたりする特別職。
場合によってはデザインした機兵が、皆のスタート時の基本デザインとされたりするので、なかなかに栄誉である(今では仕事で基本デザイン作ってるが)
ただ俺の場合は、上位者のノウハウ欲しさに戦闘ダメージのメンテを手伝わせて貰ってたら、そいつらがランキング上位に駆け上がっていって、なぜか感謝されての推薦だったりするので、当時は非常に気拙かったりした(後々、ゲーム内ショップの評価で、獲得基準を満たしたので、ホッとした覚えがある)
とにかくそんなこんなで、ワールド内で機兵のデザインが出来るツールが使えるようになった(まあ、社員用アカウント使えば、アレな訳だが)
流石に自分の機体ばっかりに、手をかけたりって言う事は、許されていないけど。
一応、えり好みなしで受けてるから、評判は良い。
とはいえ、俺がやるのは基本バランスの調整だけ。
ワールドで使う時は、使いやすさが一番なので、まずそれで使ってから物足りなくなったり、好みを出したくなったら、その時に別の機兵鍛冶に調整してもらえばいいと思う。
で、やり過ぎて使い辛くなったら、また俺の所へ持ち込んでくる訳だ。
……
……
……
「あー、終わった。 外暗くなってるし、溜め過ぎだったな。
結局、休み潰したし……俺、ミッシングワールドとかのサービスが終わったら、どうやって生きていくんだろう?
いやいや、今日終わらせた分のメール出しとかないとって、あれ?」
ポンとメニューがポップアップした。
見るとメールが着ている。
「どれ、機体の調整依頼? 誰だ? プレイヤー名『グラム』? 聞いた事無いなぁ。
新規の機兵持ちって……機体名『ジークフリード』………はあっ!!!!」
例の天才君だった。
「何の冗談?
流石に相手をえり好みしないで受けるつっても、流石にこの相手は無いでしょ。
俺、作業中に色々と感極まって泣いちゃうよ。
つか、基本バランスの調整はちゃんとやってるし、ワールド用の基本動作は組み込み済みだし、触るとこないから」
断ろう。
そう決めて、メールを出そうとして、もう一つメールが来た事をポップアップが知らせた。
「今度は何だ?」
メールの送り主の名前が化けている。
ウイルスの類かと思ったが、なんだか妙に気になったので、アンチウイルスのソフトを三つ程使って、検査をかけてから、思い切って開いてみた。
『最強の、最強になるべき機士様へ、
私達をお救い下さい。
Y/N』
「なんだこりゃ?
新手の嫌がらせか?
やりそうな奴は結構思い当たるけどさ」
特に最強の機士とか「ワールドじゃ最強だよねー♪」とか揶揄されているようで、ひじょうに気分が悪い。
ぶっちゃけ、最強の機士になるべきとかってのは、始めてすぐの大会で優勝した挙句、あんな機体で俺を蹴飛ばしてランキングに駆け上がって行った、あの天才君にこそ相応しかろう。
もう消してしまおうと、ゴミ箱に入れようとして、このメールが送られてきたのが、ミッシングワールドのクライアントメールだと言う事に思い当たった。
ゲーム内メールとなれば、送り先を追いかけるのは、普通のメールより簡単だ。
クライアントメールのヘッダには、プレイヤー情報なりがそのまま入っているので、普通のメールのように、IPを追っかけたりする必要はなく、ゲーム内の窓口に問い合わせれば、送り主が化けていても、何とかなるだろう。
いや、社員用のアカウントなら、自前で追っかけられるか。
「よし、追っかけてやる。
まず、ヘッダは……おいおい、こっちで見ても送り主が化けてるのかよ。
開発の連中の悪戯じゃないだろうな。
手の込んだ事に、宛先の抽出に関数使ってるしな」
関数は、ゲーム内プレイヤーの不特定多数に送る場合に、色々とパラメーター指定ができる。
たとえば、プレイヤーのスキルを指定するなどすれば、高レベル生産者へ送ったり、初心者オンリーに送ったりも出来るわけだ。
今回は……色々と設定しているが、まずミッシング・ウォーの現ランカー1位。
それから……なるほど、栄誉点獲得一位、通算戦闘数、通算勝利数、対ランカー戦闘数、対ランカー勝利数……最短ランキング入り一位。
なんというか、こんだけ色々設定して、恐らく三人しか抽出できないとか。
一番最初と最後以外はことごとく俺だとか(演習とか野良大会では、結構ランカーにも勝ってるんですよ!!)
「どう考えてもこれは、俺を狙った嫌がらせに違いない。
現一位のランカーさんは知り合いだが、ミッシング・ワールドには入ってこないから、メール見ないだろう。
となると、俺とあの天才君だけがこのメールを見るって訳だ」
判ると思うが、あの天才君は最短ランキング入りの記録持ちですよ。(最年少は別に居るが、この抽出条件には入ってなかった)
「こうなれば、これは間違いなく……俺と天才君で、なんかやらせる気だな。
ふっふっふっふっふ、いいじゃない。
やってやろうじゃないの付き合ってやろうじゃないの!!」
思いっきりマウスを握り締めて、Yを押した。
『あれ? なんで?』
そしたら、そんな声が頭の中に響いた。
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