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◆TRADITION 4◆紫紺の玉座
65   遠き血、遠き魂
 ――惑星グーヤーで、貴女に呼ばれてから――。
 ルイーザを真正面に見据えて、なにも考えるところ無く、自然と足が前に進み出た。
 アルダの眼には、ユーアンが権威ある皇帝の着衣を纏い、まるで玉座へと歩んでいるように映る。
「還っていらっしゃいました……。哀れな黄金の瞳(ヒブラ)の元に…」彼女のかすれた声に、一同が頷いた。
 かつてあった帝政共同体の皇帝たちは、あのようにして皇位継承を知らしめたことだろう。そしてユーデリウスの意志を受けたのだと、高らかに宣言したのだ。
 だが、この孤高の皇帝は、何を(しら)すというのだろう。
 なおも歩を止めることなく、皇帝は向かう。迷いは感じられない。その先に、ルイーザの近くにあるコンソール・デッキが彼を待つ。
 階段を上がって今一度、哀しい女神と対面をした。
 言葉はない。
 それなのに――彼女と交わしているような感覚――。
(再会は、果たされましたね…黄金の瞳(ヒブラ)ルイーザ…)
 “……かつて、〈緋い大帝(グランド・カーブ)〉と呼ばれる者が在りました。わたくしは太祖ユーデリウスの、かねてからの願いでその者を守護し、導きました。彼女は終わりの名に血を残すでしょう……母の手を離れ、眠りにつく幼児(おさなご)は呼ばれるのです………”
 
 ――「ユーデロイト」は、ユーデリウスの意志を継ぐもの、皇位継承者の証
 ――「グレス」は、母からの唯贈り物、永久(とわ)なる至高の息吹
 ――「ユーアン」は、あなたと言う人…汝在る者
 ――「ウティス」は、何者でもない者
 
(存じております。私は、私であって私ではない者……『在る者にしてたれにも非ず』――名はいただいております……しかし黄金の瞳(ヒブラ)の承認を得ねば、私は太祖が開かれた鍵門に拒まれてしまいましょう――)
 “ああ!鍵門!――わたくしは………わたくしの名を呼ばれたのは……懐かしい…その響き……”
(ユーアンは、参りました)
 “…ユーアン……その名は…遥か遠き時間の彼方から定められていた、高貴な名―――ギャラクシアンにすら託されず、ユーデリウス御自身により語られるものです………わたくしの呪縛を解くために……わたくしの祈りの内に、夢を観る者よ―――お待ち申し上げました…”
(――貴女の力及ぶなれば、見せて欲しいのです。輝かしき御世を。太祖の魂を。我が母の優しさを)
 この宇宙で随一の、希代の巫女は微笑んでユーアンを見つめた。
 “良いですとも。ユーデリウスが血を受けた、寂しき孤児(みなしご)よ……”
 そこから先は、ルイーザの声を聴いたか、定かではない。
 そっと、コンソールの上に指を滑らせた。
 名を――
 名を云うがよい――
 
 誰の名を?
 
 (ブロッド)の名を――
 
 初めの名には初めの名……
 〈ユーデリウス〉
 
 先なる刻印は、
 〈レヴィンス〉
 
 後なる刻印は、
 〈カロルシア〉
 
 終わりの名には終わりの名……
 〈ユーアン〉
 
 還るのです――
 遠く貴き血の流れよ、遠く分かたれた魂よ――
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