ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
◆TRADITION 4◆紫紺の玉座
63   シェルターにて
 退避した地下壕では、彼らは手持ち無沙汰だった。
 惑星破壊(ディストラクション)を目前に、抵抗ももはや空しく、しかし長い年月を戦いに費やしてきた情熱は、簡単には棄てられるものではない。おまけに使徒(アポストロス)ボニーノに案内されてヒブラの一施設に入居したものの、時折ヒブラからもたらされる情報のみで、外界を知る手段は無かった。
「投降したほうが、手っ取り早かったとも言えますな」
 ラントゥール解放戦線を率いるケラハーは、不謹慎ながら退屈そうにスヴェンに声を掛けた。
「皆が苛立っているときに―――正論ではあるが……」
 ボニーノの話を聞いて、ヒブラに命を預ける決意をしたのは、スヴェン議員だったから、責任は感じている。戦線の重武装解除も想定内とはいえ、ここまでくると手も足ももがれた息苦しさを否めない。
 暗褐色に彩られたドーム状の隠れ家は、確かに快適ではあるが。
使徒(アポストロス)が住民の収容をしていると聞く。どれだけのヒブラ人口がいて、そんなに収容を可能としているのかね?」
 ヒブラは、あまりの秘密主義で情報が少ないため、地下都市や勢力の規模がわからない。長らくラントゥールに住むケラハーですら把握していないのだから、どれだけ彼らが静謐な暮らしをしてきたかが理解できよう。
 戦線のメンバーよりも、何故かヒブラに近しいスヴェンは、水も無しに齧りかけのパンを味わうように推論を述べた。
「人口は三十万くらいだと聞く。正確な人数は私にも不明だがね。その数を容れてもなお、住民を収容できる地下都市の規模は、相当の大きさだろうぐらいしか予測できない」
「ま、その程度で充分な説明だ。過去の偉人たちだって、考えはすまい。まさか自分の足元に敵が住んでいたなんて――――」
 ただし、ケラハーの言い方は微妙である。
 いかにもヒブラが、星間共同主権(ザ・ガバメント)の前身『星間自治連合』の首都星の地下に都市建設したように捉えられるが、ラントゥールの歴史的には、ヒブラが先であるからだ。
 あたかもヒブラがそこにいたから、星間自治連合の首都機能を付加した感がある。
「先人の考えは先人にしか判らないが―――」時代の潮流に、人はいつも翻弄されるのだ……。
 そう想うと、データを整理する手が止まってしまう。
 ――虚しいと言うのか
 ――これが生きることだと
 自分自身の声が駆け巡った。
 ハッとすると、半ば強制的に手指を動かす。そうしないと、考えに耽ってしまうからだ。
「――どうしたかね」
 再び努力するその手を止めたのは、側近の視線を感じてのことである。
「ヒブラの内部で異常があるようです――」
 ためらいがちに言うので、少々圧すように聞き返す。
「報告は、簡潔に正しく、だ。何が起こっているのかね」
「政府軍の動向について連絡を貰えるようにはしていましたので、本日、余りに音沙汰無しのため、繰り返し問い合わせてみたのですが……指揮系統に混乱が生じていると思われるのです」
 スヴェンに不安がよぎった。ケラハーがここに居なかったのは幸いかもしれない。詳細は尋ねないことにする。
「そのことは、他言不要だ。これ以上に何か起こるようであれば、私が直接赴いてヒブラに聞く」
 結束力の強そうなヒブラにでさえ、内部分裂があると見える。何処の世界にも、一枚岩など無いらしい。
 じりじりと、時間が無駄に過ぎていくのが惜しかった。
 導主(ラウ)、と言うヒブラの長老を信じるしかないが……。統制が取れない場合は、覚悟しなくてはならない。
 いや、覚悟は既にしていたではないか………。
小説よりすげぇGIFアニメだと思ったらWeb拍手→


主要キャラ

イラスト展示室

小説チャート

本館Site

・当作品より1千年前(推定) → Galactic ILLUSION
・当作品より2千年前(推定) → 外伝 『空白の言葉』
・シリーズ完全独立物語:地球篇 → ダブル・イノセンス





+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。