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◆TRADITION 4◆紫紺の玉座
62   自らが欲する理由
 シャ・メインは応えもせずに、回線(チャンネル)を閉じる。
「さすが、クリアランス級のエージェントはプライドも高い。格の下がる俺とは会話もしたくないんだな」
 どこから調達したか、肩にレールガンを担いでギトリが現れた。「もう少し疲れてもらったほうが、当たるだろうが」
 これ以上の消耗は避けたいシャ・メインである。だが、これといった策もない。
 メイランとアテンカも姿を現し、岩場に腰掛けて見守る。
「………聞いていいか?あんた、クリアランス級だろ。ラントゥールは、そりゃ出世コースだろうけどさ、わざわざこんな星に来なくても、あんたは間違いなく出世する。ついでに素直に本星に帰ったって問題はないだろうが。これだけ俺たちに手間ひま掛けさせて……あんたを仕留めずに俺らは帰られない。手ぶらで帰ってもただでは済まない。“狩り”をする立場も考えて欲しいもんだ」
 油断無く窺いながら、ギトリが尋ねる。
「――理解など得ようとは思わん。私には、この星ですべきことがあるからこそ、ここに赴任し居残った。それだけだ」
「これはこれは。さぞかし重要な任務を背負っておいでだ。だがなあ、特にクリアランス級のパワー・エージェントは足抜けの出来ないヤクザな商売なの、知ってて任官したんだろ。死ぬまで個人たることは不可能な、組織の一部なんだ。それになあ…惑星破壊(ディストラクション)でカタはつくだろう」
星間共同主権(ザ・ガバメント)は手ぬるいのだよ―――一千年、ラントゥールと言う存在に恐怖し、人類が築いた自由世界に汚点を残し続けたのだ。やるなら最初から惑星破壊(ディストラクション)をしてしまうべきだった。ヒブラのような病原菌が増殖する余裕を与えてしまったのは、政府の怠慢なのだ。リヒマンは英断を下したが、それで禍根は絶てるとは思えん」
「たいしたエージェントだな、あんた。自ら鉄槌を下すってヤツか。いいじゃないか、惑星破壊(ディストラクション)にお任せしとけば。何もかも政府の責任だから、あんたが悲劇のヒーローぶったって取り越し苦労ってもんだ」
 彼らに語る言葉は、もう無かった。
 わかるはずもない。はじめはこうではなかった。生真面目に取り組む、と言うより自分の能力を活かすには、この根深い問題に直接身を投じてみたかったのである。
 人類が顔を背けたがる、闇の正体を暴いて白日の下へさらし、この程度のものだったのだと公言するはずだった。
 意識の変遷は、やがて訪れる。
 シャ・メインには、この星だけが道標のように瞬いて見え、ここに呼ばれたと感じたのは気のせいではないだろう。
 自分にすら説明は困難であるし、その原因の究明を欲したがためにも、荒廃の大地に降り立つ――
(俺は――迷ってはいない――――)
 あの少女が――
 暫く忘れていた、ダハトでの出来事。
(あれは………)
(あの女――?)
 ふと擦れ違いに出会った、微かな面影。
 いつも見上げている、『月』(ムーン)
(………重なった………?)
 黄金の瞳(ヒブラ)が視ている――――
 押し黙るシャ・メインを負けと判断したか、ギトリがレールガンを構える。
「俺たちは、生きて帰りたいからな。…頼むよ」
 他の二人も照準を合わせた。
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・当作品より1千年前(推定) → Galactic ILLUSION
・当作品より2千年前(推定) → 外伝 『空白の言葉』
・シリーズ完全独立物語:地球篇 → ダブル・イノセンス





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