The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』(60/82)PDFで表示縦書き表示RDF


The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』
作:レイ@名無し



60   その星の天と地で


「制圧軍本隊のケイ中将より、電文が入っております」
 副官の声で、マルツァーは目が覚めた。
「今出る」ごそごそと、仮眠を取っていた寝椅子の上でうごめく。
「いえ…中将のお計らいで、録画でありますので、返信は不要とのことであります」
 ふーん、とまだ眠たい頭を抱えて、上半身を起こした。返信の不要な連絡なら増して不要なのだがな。寝ぼけついでにいらぬ悪態をついてみる。
「まあ……律儀な女だし…」
 二次元スクリーンに映る女性将官を眺めつつ、上着を羽織ると二つほどドアをくぐってブリッジに上がった。
「あと五時間後か…」
 惑星破壊ディストラクションのリアクター到着と、即時展開までのカウントダウンである。
 ラントゥール星住民の収容は打ち切り、上空の艦隊も撤退終了し、一応は予定通りに進んでいることに、自尊心を満足させた。
「到着した後が大変そうだ。――――そういや、おい。ラントゥールからの怪しい発信電波はどうした?」
 急に思い出して、近くにいた士官に問いかける。
「は…司令官殿が無視せよとおっしゃいましたので、命令どおりでありますが……」
「まだ発信されてるか?」
「暫く前に途絶えております。試しに受信を?」
「………いや、いい。これ以上の面倒は止めておこう……地上部隊の撤収は」
「既に終わってます。あとはパワー・エージェントの回収だけです」
「“狩り”が続いてるか…中央情報局から文句は来ていやしないだろうな」
「元々管轄外でありますから、当方として二十五時間前に、協力打ち切りを通告しました」
「結構」
 エージェントの徹底した取り扱いには、密かに舌を巻く。
「…攻撃衛星の回収は?」
「損壊したものはしておりません。惑星破壊ディストラクションには邪魔でしょうか」
 そんな事を聞くなよ。とでも言うように口を尖らせて、手を横に振った。
「俺は担当者じゃない。ケイ中将殿でなくてはわからんだろ。――――? 呼んだか?」
 先ほど彼を昼寝から起した副官が、マルツァーのキャプテンシートをノックするので振り返った。
「その、ケイ中将は、何とおっしゃってましたか?」
「なに?」
「後で指示を貰うようにと言われております」
「そっ……そんな話は聞いてないぞ。そんなに重要だったか?」
 慌ててキィを叩いた。
 
 
 かなりきつめに舌打ちしたい気分だった。
 せっかく捕捉しかけた獲物を、見失ったからである。
「なんてことだ!」
 “裏切り者狩り”をするため、彼の前に現れた敵の攻撃をかわしつつ、アルダたちが消えた方向をスキャンする。
「こんな手間取るとはっ!」
 いたしかたがない。シャ・メインよりランクは低いが、それでも三人集まってのパワー・エージェントである。
 くわえてヒブラ使徒アポストロスもどうにかしなくてはならないから、その分エネルギーは分散されるのだ。
 物陰に隠れてやり過ごしながら、ヒブラの行方を追う。
(奴らより先に、ノボアのパターンが追跡できなくなった……ヒブラの要塞に入ったと言うことか?たぶん、生体の個体登録で管理しているとすれば――殺した使徒アポストロスかノボアのパターンに擬態してみるか……)
 その価値はありそうだ。
 そして、それが先決である。
 シャ・メインは反撃を止めると、使徒アポストロスが消えたポイントを探しだす。およそのデータは彼の能力を最大限に生かして取っていたから、最大限に引き上げられた分析能力は、瞬時に判断を下した。
 あとは小うるさい連中を、せめて足止めできれば……。
 焦っているのは、シャ・メインだけではない。
「メイラン!集中力が落ちている!」
 ややキレ気味にギトリは叫ぶ。
「こんな長期戦向きではないのを、忘れたか!」アテンカは庇ってか、代わりに返答した。
「あっ?」
 メイランが、素っ頓狂な声を上げる。
「なにごと!」
「シャ・メインが」
 人の体が宙に飛び出すのを、三人は目撃する。
「そんな芸当まで!」
 嫉妬が入り乱れ、三人の均衡が崩れた。
 その隙を突いて、上から経験のないエネルギーが降り注ぐ。判断は遅れた。
「暫く這い蹲はいつくばってろ」一時的な神経麻痺で、力を失い地に崩れそうな三人を尻目に、使徒アポストロスの消えたポイントへ身を翻す。













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