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◆TRADITION 4◆紫紺の玉座
59   千年の眠りより
 何と言う宿命なのだ。アルダは心に思った。
 ユーデリウスやルイーザすらも翻弄される、何もかもが予定調和的な宿命の中、ひたすら意志の遂行を成し遂げようとするものたちは、その時、その時に、必要な因子を抽出して時代を織り上げていたのである。
 アルダも、その一因子であるのだと思い知る。
「ギャラクシアンと『遺伝子(DNA)監視委員会』の無い今となっては、推論に過ぎません。歴史の偶然性を追及し、実証性に欠けることを恐れずに申し上げますれば……帝政の初めにはユーデリウスの血が在りました。ユーデリウスの甥ユーデリウス二世――――」
 万物の法則性。
 ヒブラの導主(ラウ)たちが求めたのは、恐れ多くもあらゆるもの全てに含まれる、数学的な法則であった。
 しかし、その数学的法則は誰が定めたのだろう? 偶然に? 意図的に?
「最初に血があるなれば、最後も血であるだろうと――――」
 低く、空間に響く導主(ラウ)の声を受けながら、ユーアンは母像の前で上体を巡らした。
 歴代の皇帝たちは、彼らは血の繋がりが無いというのか?
 どこかで、自分と同じ血を持っていたのではないのか?
 そんな疑心が起きてくる。
 ああ、でも!
 そんなことは今更わかるはずもないし、調べてどうするというのだろう!
 誰も、母と云う人すらここにはいないというのに!
 急に込み上げてきた孤独感が、ユーアンを不安にさせた。
「――僕は…母から……千年……千年をこのために生まれ、眠っていたと…」
 ずっと、幼い頃から精神(うち)にある、切ない郷愁の理由。
 ようやく、自分の全てが分かったような気がしていた。
 沈黙が、その場を支配した。
 皇帝たちも黙したまま、かつての栄光を控えめに主張する。
「そう言う事ですか………でも、僕は―――」
 でも。
「貴方たちも、ルイーザも、僕よりずっと辛かったのですね……」
 頭上で、ゆったりとホログラフの星雲が揺らめいた。
「何をしたら良いのです?これから、僕に何ができますか?」
 前向きなユーアンの言葉に、生気を得たような流れを感じる。
陛下(サイアー)はルイーザとの対面を望まれました。この奥に在りますルイーザに。それから先は、私どもですらわかりません。ルイーザが陛下(サイアー)の手解きをしてくださるやも知れませんし、陛下(サイアー)が手解きを為さるやもしれません」
 そう言うと、導主(ラウ)は手を差し伸べて、奥を指し示した。
 その二人を見守るアルダに、遅れて入ってきた使徒(アポストロス)が何事か耳打ちする。
「――――サブ・システムの介入が始まりそうです。〈玄室〉に入られたほうが」
「マッシモたちは入り口に?」
使徒(アポストロス)の数を増やしております。ですが……」
 言いよどんだ。
「なに?」
「新たな侵入者か、何か確認したようで――」
 事態は次々と信じられないような展開をする。アルダには新たな侵入者が、何者か理解できた。
(一度ほつれた堅牢な要塞は、たやすく崩れやすいもの……)
「パワー・エージェント…彼ならば容易い……」
 早急な手を打たねば、今度こそヒブラは危機に陥るだろう。
「他の使徒(アポストロス)に対して、回線をオープンにして。私の回線も介入させる」
 こちらからは発信ができないので、中継用の回線オープンをすれば、異常事態に気がついてくれるだろう。
 他の使徒(アポストロス)潜入(ダイブ)しやすくなり、意図は汲んでくれるかも。
 アルダは、マイヤーと共に戦闘体勢へと構えていった。
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・当作品より1千年前(推定) → Galactic ILLUSION
・当作品より2千年前(推定) → 外伝 『空白の言葉』
・シリーズ完全独立物語:地球篇 → ダブル・イノセンス





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