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The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』
作者:
レイ@名無し
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53 様々な痕跡
霞み漂う茫洋たる世界。
一度は訪れているが、あまり経験の無い深さである。
(前は夢中で飛び掛っていたけど――なんて緊張に満ちた……重苦しい………)
映像に見る、脳内シナプス
様
(
よう
)
の構造体に、彼の意識はがんじがらめであった。
幾重にも張られた精神シールドは、機密に守られた一種の暗号コードであり、容易に解けないものであることは一見して判る。それはヒブラや解放戦線に対するものと言うより、むしろ政府エージェントから少年の情報を守るためと、およその推察ができる。
この処置を施した人物は、味方を欺き、少年本人に過大なストレスをもたらしたほどに重要な情報を得ており、高高度の機密を取り扱うには、余程の高官でないと有り得ない。
と、言うことは……
星間共同主権
(
ザ・ガバメント
)
の深部に、真実を知り得る者がいる。
(しかし……泳がせてヒブラの内部情報を取ろうとするには、辻褄が合わない………)
賭け的に、あえて少年をラントゥールに放り込んだ意図が読めるのである。
これは考慮すべき事なのか、アルダには分からない。
ただ、時間は無い。
必然的で、人為的な運命。
(このコードに攻撃性はない…剥がすことは不要か…)
シールド上に点在する別種のコードは、シャ・メインのものだ。反応は弱々しく張り付いている。
それでも触れれば、シャ・メインの感知するところであろうから、そこは避けて広大な意識野の海を泳いだ。
精神を統一すると、自分の解除コードを探す。まるで分厚い鋼鉄の板に、針の穴を開けたくらいでしかないものだが、足がかりはそこしかない。
(でも、
道士
(
メンター
)
やドクターですらできなかったことを、私が勢いとはいえ――)
不思議に思いながらも、手探りで自分の足跡を辿る。
程なく、そのピンホールは見つかった。
壊れないよう解除コードにそっと触れ、診断する。
(ここからどうコードを組み立てて、穴を広げられるだろう?)
どうも自分は、シールドのコードと似て非なるものを刻んだらしい。
(まるで…死んだように冷たい――――そうか……死んでいるから手の施しようがないと言うのか……擬似仮死状態にして無反応を装えば、経験の浅い者がダイブしても見逃してしまう可能性がある。すると………これに似せた蘇生コードを感染させたら解除できるかもしれない)
ピンホールからは、心臓が脈動するような、温かい光が漏れているのを感じた。
その光はアルダも良く知っているものだ。
(ルイーザが―――やはり…と思って良いのか……)
心強さを得た気になる。
周辺一帯のコードを読み取り、ピンホールを中心に羅列のパターンを確認すると、当たりをつけた所でそれを裏返しにした。
(これが正解ならば、なんと簡単なもの! 死と生は表裏一体なのだから、組み込みさえ合っていれば…)
撫でるように貼り付け、押し込んだ。
それは彼女の努力を裏切らず、あっという間にシールド全体に広がったかと思うと、消滅し始める。
(なんて容易い………成功ね…あとは、正常に戻れば文句なしだけど――)
一抹の不安を抱きつつ、崩壊するシールドを見守った。
複雑で難解であればあるほど、裏は返しやすいと言えよう。
暗い光景は、光に満ち溢れていく。それと共に不安定な形を作っていた、ランミールトたちの人為的記憶が光に取り込まれ、融合していくのがわかる。
(なんて圧倒的な―――)
光。
直視するには眩しすぎる。
だが、問題はそこからで、本当の少年の心を探し出さなくてはならない。強制的に閉じ込められた心が、健常であればよいが――――。
見えたものは。
『……
最先
(
いやさき
)
から――
最後
(
いやはて
)
まで………宇宙の
暗黒淵
(
やみわだ
)
に取り残されたる……我らを統べる…』
ルイーザ。
映像に見る、生前のルイーザが、祈りの姿で存在している。
(…あぁ……ルイーザが―――)
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