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◆TRADITION 4◆紫紺の玉座
46   希望と焦りと僅かな叛乱
星間共同主権(ザ・ガバメント)に連絡を取り、何としてでもヒブラを守るのです」
 マッシモの作戦は変更されたらしい。導主(ラウ)と数人の使徒(アポストロス)は、少年と共に独房に閉じ込められた。「ここがアンチパワー・フィールドであるのを、お忘れなく。使徒(アポストロス)も使い物にはなりませんぞ」
 独房棟の向こう側から聞こえる、かなりの人数の足音も、導主(ラウ)らを救出に来たのではないらしい。
「……導主、情報では明日、惑星破壊(ディストラクション)が実行されてしまいます。星間共同主権は道士(メンター)マッシモの言い分など聞きもしないでしょう。どうされますか」
「どうもこうも、叛乱分子――とは言いたくもないが……彼らとて死にたくはないし、ヒブラを失いたくも無いのだ。私がルイーザを信じ、アルダを信じ、そして自分の直感を信じるなら――」
 この得体の知れない少年が、答えを握るであろう。
 この場合は、他力本願になるしかない。
 医師が、カプセルを開いたので、少年の状態を見に寄った。
「覚醒しつつあります」
 囁くように小声で、周囲に告げた。
「精神状態は不安定ですが――」
 そう言ううちに、少年がうっすらと眼を開き始める。明るい光が薄目にも差し込んだせいか、体が敏感に反応してビクっと動いた。
 眉をしかめつつ、首を僅かに動かしながら、オレンジ色の瞳をはっきりと見開いた。
「………」
 乾いた唇に、医師が水分を補給する。
「――アルダが……」
 聞き取りにくい、かすれた声が少年の口から漏れた。
「? アルダ?」
 聞き返すが、少年はまた眼を閉じ、暫くしてからもう一度瞼を上げた。
「僕は…」
 覗きこむ導主(ラウ)たちの顔に、問いかける。
「死んだ………?」
「いや」導主が受け答えた。「君は生きている。死に掛けているところを、我々が助けたのだが、君はいったい誰だね」
「――――………名前は………と言う名を……られたのとは違う………」
「…られた…?」
「………ここは、解放戦線…」
 逆に少年に問われた。
「解放戦線ではない。ここは『ヒブラ』の建物の中だ。君は、ヒブラのメンバーではないのに、入ってこれた。理由は知らない。どうしてかね」
 ともすれば意識が混濁しそうな少年に、負担にならぬよう聞く。
 何故って?導主の質問に、彼はふと笑いそうな瞳をした。
「……ヒブラでなくては…入れないと言われる………来ているのに…」
「なんと、不思議なことを言う」
「エイメが…死んだのに…ッ」
「!」
 瞬時に、苦悶の表情を浮かべるので、傍らで様子を見ていた医師が導主(ラウ)を止める。
「精神が混乱を起こしています。本来の記憶と、人為的な記憶処理が入り乱れているようです。しばし安静を――」
「エージェントたちが施したシールドは、解除できないものか?」
「暗号コードは解析不能でしょう。しかも、アルダの残した解除コードですら、我々の手に負えるものではありません」
「ますます不思議なものよ。少年は様々に手を加えられ、そしてアルダでなくてはならないという。彼らは何者か?――アルダは、調整を受けねばならぬ身で、特別な使徒(アポストロス)というものでもない。何が彼をここへ導き、何がアルダを選んだというのだろう。ルイーザの思し召しか?太祖ユーデリウスが、ここまで望まれたというのか?」
 返す返すも腑に落ちない事態である。
「…ですが、如何せんこのままでは――」
 無駄にするなと言ったばかりなのに、時間は無情にも過ぎていく。
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