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◆TRADITION 3◆其は汝(な)が名なり
40   憎しみのシャ・メイン
「どうした?」
「ユーデリウスから始まったのだと思う?」
「……彼がいなければ、こうはならなかったと思いたいが…彼でなくても、誰かがやっていただろう」
 ただ、ユーデリウスと言う名であっただけなのだ。
「そうね……」
 スピードは出ているはずなのに、流れる風景はゆっくりとしていた。
 これから起こる運命のうねりが、時間と空間を歪めているのだろうか。
(なんとしてでも、陛下(サイアー)を迎えねば………!)
 何と願おうと、「事」は起きている以上、対処せねばならない。
 アルダをマーキングしている、エージェントが気にかかる。
 あの男に妨害される前に、彼に接触できればいいが……。
「〈回廊〉に入ったら、私は潜入(ダイブ)してみる。それから接続したままで行こうと思うけど、大丈夫かな?」
「パワー・エージェントのレベル次第だ。奴は強そうだな。ビリビリきてるよ」
「――――違う。何か……膨れ上がったものを感じる…複数的な威力だ」
「!大体のエージェントは撤退したのではないのか?」
「だといいのだけど。もしも“彼”狙いだとしたら、かなり厄介ね。道士(メンター)使徒(アポストロス)は臨戦態勢が取れるか疑わしいし」
「……死んでも阻止する覚悟がないと、だめなようだ」
 マイヤーは、笑った。
 それが何故か、彼女に不思議と安堵感を与える。
(良かった…)
 マイヤーと言う、最大の良識を味方に得たことが。
 だいぶ時間が経った。
 ヒブラ本拠地に到着するまで、もう少しである。
「ここらで乗り捨てるかい?」
「そのほうがいいかしらね」
 エア・フライトのスピードを緩めた時だった。
 急激な風圧を受けたように、アルダが体を支えて悲鳴を上げた。
「アァッ!」
「来たか!」
 エア・フライトのキャノピーを緊急ボタンで吹っ飛ばすと、二人は投げ出されるように外へ出る。
「あの男!」
 目に見えないエネルギーが、アルダに向かって飛んでくる。
 かろうじて身をかわすと、地面が大きくえぐれた。
「シールドを張れ!」
 数メートル先からマイヤーが叫ぶ。
「耐久テストをしたのか!」
 嘲笑するような、あの男の声がした。
 暗闇からキーンと音がして、二、三本の閃光が走る。
 一発が瓦礫に当たって火花が散り、一発がマイヤーのシールドで弾かれた。
「こんなものでッ」
「ヒブラは、こんなものか?」
 エア・フライトにまたがり、レールガンを構えるシャ・メインが現れた。
「――我々は、攻撃するための力ではない!」
 叫び返すと、脇にある鉄屑のような塊をシャ・メインに振り投げた。もちろん、腕力ではない。
「防御に徹すると言うか!立派なものだな」簡単に鉄屑を粉砕する。「自らが、この銀河系宇宙の最大の敵であるのを恥じていないとは!」
 エア・フライトを地上に降ろして、蹴飛ばして倒すと、アルダを睨みつつマイヤーにも攻撃した。
「仮想敵に仕立てたのは星間共同主権(ダハト)だろう!」
 飛びのけながら、マイヤーは物陰に隠れた。
「仮想どころか!帝政の亡霊めが、世迷いごとを!」
 生々しい、怒りの塊が押し寄せる。
(これでは防ぎきれない? クリアランス級は、こんなにも!)
 圧倒的なパワーの格差に、アルダは体勢を立て直そうとした。
「あの少年を放り込んでおいて、星ごと消そうとする輩が!」
「ノボアか…あんな小僧がヒブラにとって、何の価値だと?」
 アルダの眼前でオーロラのように光が散った。シャ・メインの直撃を食らって、エネルギーが四散し、シールドで防いだもののダメージは大きい。
 そこに加えて、複数的な存在が近づくのを感じる。
(これもエージェントか?)
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・当作品より1千年前(推定) → Galactic ILLUSION
・当作品より2千年前(推定) → 外伝 『空白の言葉』
・シリーズ完全独立物語:地球篇 → ダブル・イノセンス





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