The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』(34/82)PDFで表示縦書き表示RDF


The ORPHAN 異伝 『千年の夢幻』
作:レイ@名無し



34   我が名はユーアン


『僕は―――』
『私は―――』
 二重の音声が彼女に向かって発せられた。
『私は、いまルイーザより名を得た――』
 空気が、急に冷えたように硬直してくる。
「ルイーザが…名を与えた……」
『名は―――ユーアンである』
『ユーアン・ウティス=グレス』
 二人は峻厳な口調で語りながら、彫像とコンタクトを取るように振り返る。
 それからまたアルダを見やって、言を継ぐ。
『―――太祖ユーデリウスは、クラオン帝により自らの民を手元に揚げられたが、ルイーザは己れの哀しみの呪縛に閉ざされ、解放を待ち望んでいる。
 私はユーデリウスの力を借りた母の代理として、そしてユーデリウスとルイーザの願いを負い、ルイーザの鋼鎖かなぐさりを解くために在る――。
 黄金の瞳ヒブラに集いたる者を労おう。我は”ユーデリウスの意を継ぐ者“「ユーデロイト」の称号を得る者』
 何という――!
「貴方がヒブラを導くというのですか?霊帝ユーデリウスが望むと?お母上の代理って――」
 その瞬間に一気に湧き上がる思いの中、言葉にできる疑問はこれだけであった。
 そんな少女の思いを知ってか知らずか、ユーアンと名乗る彼はオレンジの瞳からより強い光を放つ。
最終千年期ラスト・ミレニアムが終わりを告げる。紫紺の玉座にいます皇帝に、分かたれた御霊があるなれば、呼び合い引き寄せるは自然であろうと云う。
 ヒブラ解放のために、汝いたつべしと――――汝、アルダよ。我を見失うな。私はまたこの星に来る。………我が呼んだがために人の手により生まれた者よ、惑わされるな』
我が使徒アポストロス――』
 彼女にそう命令すると、ノイズが走ったように姿は掻き消えた。
 余韻の残る現場に、大人たちが駆けつけたのは数分後だった。
「どうしたことだ!〈玄室》に?」
「間違いありません。異常な数値のエネルギーがここに出現していました」
導主ラウにも知らせよ!」
「〈玄室〉内および〈回廊〉にトラブルがないかチェックしろ!ディフェンサー!」
「まったく機能しておりません。と言うより不具合があった痕跡すらありません!正常に稼動中!」
 血相を変えて走り回る連中から、アルダはこっそりと離れた。
 今”ユーアン“から言われた事と、彼の姿を忘れないように。
(ユーデリウスの分かたれた魂に…使徒アポストロスの任を命ぜられました――)
 こころ密かに、ルイーザに思った。
 ――浸ってしまった。
「違反かもしれないけれど…マイヤーの力を借りれたら…」
 一度は飛び出してきたものの、ヒブラの元に戻らねばならない。
 唯一の理解者であろうマイヤーに連絡をすべく、彼の派遣先部隊へ向かう。
 自殺行為を承知で機体の高度を上げると、モーターの悲鳴も聞く耳持たず、空気を切り裂くほどにスピードを上げた。













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