地球統一政府成立
完結編です。
8月14日に投稿を始めて10月14に完結編を投稿ということになりました。
最後のほうはだいぶ慣れて結構楽しかったです。
大体、普段持っていた妄想は文にしたように思います。
順平たち一家は、シリンク帝国の作戦が始まって以来、70%の期間を地球の日本で、30%は新やまとで過ごしている。
いまは、地球市民という観念がだいぶ浸透してきて、順平たちに対して国家レベルで誘拐などを仕掛けるという恐れはなくなってきた。しかし、むろん犯罪組織によるそうした行為は十分考えられるので、護衛は相変わらずついている。 今の護衛は人間半分、ロボット半分の構成である。これはリリンカム共和国から防衛軍がロボットの贈与を受け、その性能が極めて高いことから、今は国連の要人にはロボットの護衛をつけるようになってきているせいでもある。
むろん順平一家は、もっともセキュリティの厳しい要人であり、そのためにロボットが基本的に2体以上護衛についているため、最も安全な個人であるとされている。例の、国連の告発に関して、ラリムが証言者としてクローズアップされたため順平がバックにいるという正しい噂が広まり、告発のため大きな損害を被った犯罪組織からの報復が懸念された。
しかし、今の状態で順平に危害を加えたら、犯罪組織と言えども、どういう世論やまた司法からリアクションがあることが判らないほど愚かではないであろう、という予想は裏切られて、ある組織の跳ね上がりが、順平を狙って日本に潜入してきた。これは、自分のボスが順平をののしるのを聞いて、その意を迎えたつもりの行動であったらしい。
しかし、付き合いのある日本での組織にコンタクトしたが、冗談じゃないとすべて逃げられ、万が一成功したら大事になると考えた、日本の組織にかえって警察に通報されてしまった。協力者が得られなかったかれは、それでも順平を狙って、住居のある江南市に潜入したが、あっさり警察に包囲され捕まった。
無論、組織・名前をしゃべるほどやわではないが、日本の組織からばらされており、翌日には新聞一面に「吉川順平氏、○○シンジケートの殺し屋に狙われる!」との文字が躍った。驚いたのは○○シンジケートである。その本人は確かにそのメンバーであるが、順平を殺せなどとは命令していない。しかし、国の大統領の命令で、地元の検察に逮捕され、命令などしていないと言い訳したが普段から嘘ばかりついているのでたまに本当のことを言っても信用されない。
ボスは拘留されて毎日尋問を受ける羽目になった。
これは、いい機会とおもったのが、順平である。
現在世界の犯罪シンジケートは巨大なスケールになっており、政府へも影響力が強い。 しかし、ラリムの力を借りれば、彼らを丸裸にするのに訳はない。ちょうどいいから、つるんでいる政治家や官僚もあぶりだして、二度と彼らが力をふるえないようにしてやろう。
早速、やまとに目論見を話したうえですみれに頼んで、インターポールのデータベースに侵入して、世界の犯罪組織のリストを作った。それをベースに、超空間を経由して、ラリムの力を借りラーナを使って各組織の犯罪のデータベース、これは犯罪の映像も含む、を三日三晩で作った。犯罪の瞬間の映像は時間を操れるラリムにとっては、時間旅行は無理であるもののむつかしいことではない。さらに、犯罪組織から金をもらって便宜を図った政治家、官僚はその犯罪組織から依頼の内容と入金のタイミングの記録がすべてそろっている。さらにそれが弱い場合には、会見あるいは電話の記録がある。
これらの組織は日本の5組織を含み、世界で102組織構成員は23万人で、年間の収益は25兆円に達する。彼らが犯した犯罪は殺人だけで年間1200人になる。次いで、すべてのデータを関係各国の警察本部、インターポール、FBI、KGB及び世界ネットのマスコミに送りつけた。これは、当然のことながら大騒ぎになった。あまりの内容に受け取った各組織は裏を取っている所である。
その騒ぎが表に出ようとした頃、順平が世界ネットのテレビに出演した。
かれが、そうしたマスコミに露出したのは、かって日本で選挙活動の一環で出たのみで、まことに珍しいことであった。その上、近年シリンク帝国関係を含めて、世の中で一番ニュースに出る人物でもあったので、空前の視聴率となった。
「私が吉川順平です。
私がここにこうして、テレビに出させて頂いたのは、私の怒りの表明するためであります。その怒りは、最近の惑星開発に係る、さまざまなスキャンダルや不正行為、また貪欲に自分の利益をむさぼろうするもの、その実行者の個人及び、団体・組織に対してであります。また、暴力を手段に善良な人を脅し自分の利益を得ようとするもの、さらにこのような薄汚い犯罪者から金をもらって便宜を図っている政治家、官僚に対してです。
一つには、私自身を自分の欲のために暗殺しようとした組織のことがあります。この件は単なる犯罪者のおっちょこちょいが、早まったことしたということですが、しかし、考えてください。この件は、ボスが合図するだけで、何のも罪のない人を殺すというシステムができているということです。そしてボスは他の人を脅すわけです。あのようになりたくなければ言うことを聞けと。皆さんこういう存在、こういう世の中を許していいのでしょうか。
私は許しません。
そこに見ているあなた、もう知っているでしょう?私が、世界の102組織、その構成員は23万人の過去10年間のすべての犯罪行為を告発したことを。彼らの犯した殺人のみで、過去10年間に1万3千人になります。私はそれのすべての証拠をそろえてインターポールをはじめとする警察機関送りました。むろんあらゆる重大犯罪についても同様です。あなたは、でも警察や政府には自分の息のかかっているものがあるから大丈夫と思っていませんか。残念ですが、こうした汚職公務員また、金をもらってあなたたちに便宜を図った政治家もすべて証拠をそろえて告発しています。
もう逃げ道はないですよ。新しい、地球の統一国家にはあなたたちの居場所はありません。死刑になるか、暗いところで過ごしてください。さようなら」
この順平の短い談話は、世界中に賛否の渦を巻き起こした。
また、こうして順平から証拠を受け取った警察組織も犯罪組織の対象人物を逮捕拘留せざるを得ないし、裏で動いていた公務員も政治家も同様であった。まっとうな意見は、今までだれにも手をつけられなかった巨悪を滅ぼすのだから問題ない、と言うものものである、しかし、あれは民主主義を無視しているという意見、基本的な人権の侵害だという意見、さまざまな意見が飛び交った。
順平にもインタビューがあったが、「民主主義、みんなで犯罪組織の食い物になって不幸になろうという主義ですか?基本的な人権、自分の利益にとって都合の悪い人を殺す人の人権?」と順平からせせら笑われた。
また、特にこれらの組織に雇われた弁護士連中の大きな声として、『あれらの証拠は非合法に得られたものであるので採用すべきでない』というものがある。
これもまた順平にせせら笑われた。「非合法?あの証拠は真実です。事実を証明しているのですよ。じゃ、いま拘留されている連中は、殺人を犯したことは事実だけど、その証明の方法が悪いから釈放してまた殺人を犯させたい?また、非合法に金をもうけさせたい?」
そして、記者会見を開いて順平は以下のように述べた。
「はっきり申ししますが、今の地球にとって、あれらの組織犯罪は死に至るガンです。誰も手を付けならないから、私がラリムの手を借りて決着をつけました。地球が宇宙に成熟した惑星ですと言うためには通らなくてはならない道なのです。たしかに、彼らがいなくなれば、弱小だった犯罪者が湧いてきて、もっと事態は悪化するかもしれません。
しかし、私はこれで、人々はどんな犯罪も暴こうとすれば暴けること、その場合犯罪は結局効率が悪いということを学んだと思うのです。また、今の人々の知能をあげるための療法が効果をあげていることを、ボジティブに受け止めています。そのような学習効果を、全体として賢くなった人々が受け止めて、暴力や犯罪によって得られた金で人を動かすことは出来ないし、やらせないと決意すれば、そうしたまあ、チンピラが大きい顔をできるのは長くないと思います。
また、公務員、特に警官の給料については、いま大きくベースアップをすると聞いていますので、貧しさの故の犯罪というのはなくなると思います」
さらにラリムの存在について聞かれたのに対して以下のように答えた。
「かれは、我々地球人類にとっては歴史にかってない最大の贈り物です。かれは、ほとんど全知全能ですが、自分で方向を出さず必ず導きます。いわば、神にはならないのです。そして善なる存在で、絶対に嘘は言いません。彼の言葉であれ、念話であれ完全に100%信用できます。おそらく後世の歴史家がかれがどんなにこの地球にとって、大きい存在であったかまたどれだけ貢献したかを必ず書きますよ」
これに対して『ラリムは、あなたのことばかり聞いているように見える』という意見があり、こう答えている。
「ラリムには彼なりのプライオリティがあって、やはり面白く思うことに執着します。私が、かって地球に来ないかと誘った時、我々と一緒にいると面白そうだということを言いました。たぶん、彼は私といると、面白いことに出会えると思ってわりに私の近くにいるのだと思います。そうなると、私もいろいろ頼みやすいですからね。今回の件もそうですね
いずれにせよ、かれの言葉として『犯罪組織が文明社会に住み着くのは必然だが、場合によってその存在が大きくなりすぎ、悲惨な不公正と階級差が生じることがある。犯罪組織はどこかで、大掃除が必要』と言っております」
かくして、地球上から大規模な犯罪組織は姿を消した。その構成員及びそれに加担したものたちは刑法上の罪を得て、死刑になったものもいるし、服役したものもいて、その影響力は消えた。
たしかに、それに抑えられていた連中が蠢動したが、地球全体の動きとして特に司法公務員の給料を大幅にアップして、さらにこれに日本から始まった知能を伸ばす療法で優秀な人員が増えていることもあって、目立った問題は生じていない。
さて、惑星開発については、最も必要なものは金と人材であるが、先進諸国は近年デフレ気味で投資先が限られていたこともあって、資金調達に問題はなく、人材も豊富なのでこれらが領有した惑星の開発は急速に進んだ。 もっとも、日本が開発している新やまとは開発5年目にして3千万の人口を抱えるまでになっており、すでに総GDPも日本本国に近づいているので、ここまで急速な開発をできているところはない。
問題は途上国である。これらは、それなりの領土を分配され、ある程度の宇宙船の割り当てもあったが、人材ととりわけ開発資金がなくその開発は遅々としており、結果としてそれらの国は貧しいままである。こうした国が数としては多数の状態で、地球国家どころではないということで国連も本格的に力を入れ始めた。
それに、やまとが協力している。
かれの提案は、まず資金獲得の手段として、これら途上国の所有している土地と、明らかになっている資源を担保に資金調達する。さらに、先進国のエンジニアによる開発専門家部隊を結成し、まずプランニング・設計をする部隊と、現場で施工管理する部隊、直接施工にあたる部隊とを組み合わせて、各開発惑星と現場に送り込む。さらに重要なのが、貨物宇宙機と重機とロボットの調達である。どちらかと言えば、単純な労働力はそれほど重要ではないのである。
国連内に、惑星開発協力機構を作り、まず、やまとは順平の影響力も使って、200兆円の融資を世界の銀行や年金管理機関に約束させた。担保は何しろおおむね惑星3つが使えるので十分である。
さらに、その潤沢に使える金を使って、貨物機、重機、ロボットの調達、人材の募集を行って、たちまち巨大な組織を作り上げた。幸い、日本の新やまと開発が一段落し、機材が余剰になってきたのことが、これら機材を入手するのに有利な点であった。
惑星開発協力機構は成立1年にして、すでに10万人の人員を抱え、さらに月に1万人以上の増員がされているが、むろん彼らには十分な給料を支払っている。結果から言えば、途上国対象の開発は5年で大体の目途がつき、すでに途上国の国民の半分以上が移住済である。
2035年、地球圏として地球および7つの植民惑星の人口は95億を超えている。その全体のGDPは植民開始前の7500兆円から、約2京円になっている。日本と新やまと旧日本圏ではでは2千兆円を超えている。この時点では、地球および植民惑星で、すでに貧しさで食えないという人はいなくなった。また、財産を多く持つものはむしろ後ろ暗いということが市民意識として浸透してきて、『世のなかに貢献する』と言うのが子供のいう将来の目標になってきた。
日本発の知能増強療法は効果が明らかに現れ、とりわけ惑星開発と並行して力を入れてきた途上国において効果が著しく、さらに教育の徹底とも相まって、将来の国を背負って立つ人材の確保に明るさが見えてきた。これで、地球人類としても概ね胸を張って銀河連合とつきあえるかなという所に近づいた。
地球人類の統一国家成立は難航した。、国連と言う仮組織だったらともかく地球政府としての権力を握るわけであるので、各国の思惑がばらばらで、どうしてもまとまらない。
もうさじを投げて、ジョン・リザートがラリムに聞いた。「何かいい案はないかな?」
「帝政にしたら?」ラリムがあっさり言うのに、リザートが叫ぶ。「帝政!」
「ああ、銀河連合の加盟メンバーは帝政が多いよ。ある程度テクノロジーが進んで貧富の差がなくなっていくと、どっちにしろ圧政は出来ないので王政。帝政のほうがうまく行く場合がおおい。惑星をまたがったような規模になると民主主義と言うのはちょっと無理なのかもしれない。また、民主主義というのは、自分勝手で野心家が得をするシステムだからね」
ラリムの提言に、リザートか喜んで言う。
「それはいいかも、幸い、地球にはどっちにしろ特別扱いするしかない人物とその家族、まあ子供15人(順平の子供はすでに15人になっている)、がいるからな。これを皇帝にしても大差はないな」
その日から、リザートは積極的に動き、ついに『帝政移行地球市民投票』にこぎつけた。インテリほど、地球が一体になるべきであることは承知していて、その政府成立の騒ぎにうんざりしており、順平皇帝だったらいいかもと思ってしまうのだった。一般の人、特にようやく貧しさから抜け出したひとは、喧伝された順平一家の一連の貢献を知っており、彼とその子供たちだったらいけ好かない政治家よりずっといいのじゃないかと思うのであった。
当然、順平一家は嫌がって、いろいろもめた結果、じゃ2/3の賛成があればしょうがないから引き受けるとの話になった。
地球と植民惑星を巻き込んで投票の結果、賛成票が80.5%あって、地球統一政府は地球帝国となることが決まってしまった。
その日、地球帝国初代皇帝、ヨシカワ ジュンペイ一世となる彼が、子供たちに盛大に愚痴をこぼしたのは内緒である。
お付き合いありがとうございました。
2カ月に本3冊分ですから結構ハードだったですね。
今以下のUCLで「チート能力で作る、いつも子供が笑顔の国を」という題で別の連載をしています。
http://ncode.syosetu.com/n3396dp/
読んでみてください。