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シリンク帝国懲罰作戦、地球防衛軍の戦い3

書いていくと、最初の目論見とどんどんずれていくことがあるんですよね。

そのあたりがまた楽しさでもありますが。


 歩いてくる人々を見ると、やはり、地球人と姿形に大きな差はないが、どうも皮膚の色が赤みがかかっている。やはり髪はちゃんとあって、黒から灰色までで、カラフルな色はない。

 艦の50mほど手前に待っている栗田のところに、先頭を歩いてきた年配の男性が、栗田の前に来て頭を下げる。どうやらこれが挨拶らしいので、栗田もややあわてて頭を下げる。


 その後、男性は栗田を向いて、ゆっくりとしゃべる。「私が先ほど通信機で連絡したマカリチノ惑星評議会の議長のニラムスル・サンデ・キクルロです。良く助けてくださいました。深くお礼を申し上げます」ニラムスルは再度頭を下げる。


「いえ、頭をあげてください。私は地球防衛軍のマカリチノ惑星分遣艦隊の司令官の栗山大佐です。これはあくまで、銀河連合から依頼された任務ですから。

 まず我々の戦果を報告しておきます。我々の撃破したシリンク帝国の部隊は、宇宙にいた艦を巡洋艦3隻、小型宇宙艦7隻に加え、地上では小型宇宙艦33隻、地上掃討機を256機が機材の主なところです。またそれに加え、地上設置型の熱線砲及びミサイルさらに地上部隊も相当する殲滅していますが、あくまで貴惑星の要塞への攻撃部隊のみです。他に、敵の有力な部隊がいれば教えてほしいのですが」


「その件では、すこし気になるのは、敵が攻め入ってきたとき、敵の最大の主力艦が10機ほどいたという情報があります。今はいないようようなのが気になるところですね。

 あいにく、地上については、敵の有力な部隊というのは特には聞いておりません。しかし、私に入っていた情報によるとわが方のいずれの基地も、もう長くは保たないということだったのですが、そうですか。あなた方が撃破してくれたのですか。ありがたいことです。よろしければ、私どもの建物の中にお入りになって、現在の状況をもう少し詳しくまた、ここに来られたいきさつなどもお聞きしたいが」というニラムスルに栗山は言う。


「いや、私どもの艦の方が、最新の映像情報が多いと思いますし、話し合いにも便利だと思いますが、よろしければ、いかがですか?」


「おお、よろしいのですか。それは是非、あれだけ強力なシリンク帝国の艦船を、軽々と打ち破る艦の中は是非見たいとは思っていました」そう言って、ニラムスルは随員を振り返ると、随員も喜んで頷く。


「なにせ、戦闘艦ですので、入るのはただの階段ですし、中は手狭ですがご容赦ください」中に導きながら栗田が言う。


 中に入り、手狭ながら小会議室に案内し、パネルに各要塞でのシリンク帝国の攻撃部隊への防衛軍の攻撃の様子を写す。

 皆「おお、〇〇は持ちこたえておった。おお、××も」などとそれぞれについて、論評する。


 一通り見せ終わったあと、「いかがでしょう。少なくとも宇宙から偵察して、発見したところではすべて敵は排除したのですが、見落としなどはありませんよね?また、一般市民の方はあちこちに分散して避難しているようですね」と言う栗田にニラムスルが聞く。


「はい、おかげで思ったより多くの要塞が生き残りました。かれらが要塞への攻撃に集中してくれて助かりました。一般市民への被害も少ないようですし、これからも復興もやりやすいと思います。しかし、皆さんはいずれお帰りになるでしょうが、シリンク帝国がまた帰ってくるということは?」


「はい、その点はご安心ください。シリンク帝国は、そう、あと半月余りで処分されます」栗田がきっぱり答える。


「処分?」


「はい処分です。シリンク帝国が2度と力を持つことはありません」


「そうですか。そうでしたらありがたいのですが。ところで、我々はこうして救われたわけですが、実は我々がこのように準備ができ、ある程度シリンク帝国に抵抗出来たのもスーワリートム星の皆さんの知らせがあったからなのです。彼らが2年ほど前に知らせて頂いたおかげで、ある程度の準備ができました」とニラムスルが言う。


「スーワリートム星?副長、データはあるか?」聞く栗田に、副長が答える。


「はい、スーワリートム星はここから11光年の距離で、まだシリンク帝国の侵略を受けていないとして、今回の対象のリストから外されています」


「この星系から消えた敵の主力艦が、スーワリートム星に向かったのでなければいいのですが。われわれもずいぶんお世話になっている種族です」ニラムスルが言う。


 栗田は副長と顔を見合わせる。「とりあえず、このマカリチノ星は大丈夫ですね?」栗田の問いにニラムスルが答える。「ええ、まず問題ないと思います」


 栗田がおもむろに言う。「では、万が一のことを考えて我々の戦闘艦5機をこの星系に残します。他は今からスーワリートム星に向かいます。また、10万トンの食糧や小火器を積んだ貨物機が来ていますので、中にはセルロースつまり樹木や草をでんぷんに変換する装置も含まれます。下す場所など残す艦隊にご指示ください」


「おお、10万トンの食糧、またその言われた装置は助かります。食料の面で不安があったのです。何から何までまことに感謝します」言うニラムスルに、


「地球人の我々も、ちょっと前までいわゆる野蛮人だったのです。これらの貨物機の食料等は、銀河連合の有力種族のリリンカム種族の贈り物です。我々の戦闘艦等の武器は我々の自前ですがね。今後、友人になっていただければそれが、何よりです」栗田はにやりと笑い、敬礼して「それでは!お別れです」

 と副長に一行を出口に案内させる。


 栗田は、早速遠征軍の司令官のカーターに超空間通信で連絡をとり、スーワリートム星へ向かう了解をとった。カーターからは、35機で足りない場合を考えて、彼の編隊から60機が別途スーワリートム星に向かわせるということになったが、これらは半日ほど到着が遅れる見込みである。


 ジャンプによる超空間から出ると、恒星系内はエネルギーの渦であった。


 いま、まさにシリンク帝国の主力艦と巡洋艦に、小粒な艦の大艦隊がぶつかり合っている。

 シリンク帝国は、主力艦が100隻に巡洋艦70隻程度の艦隊、小粒な艦は300機以上いる。互いに盛んにミサイルとレールガンを撃っているが、シリンク帝国は主力艦にはほとんど損害がなく、巡洋艦にのみ被害が出ているようだ。一方は、小粒な艦といっても全長は150mほどか、たまご型で俊敏な動きだが、被害が大きい。ミサイルやレールガンに当たってどんどん数を減らしている。


 標準の手続き通り、亜光速で超空間に入った栗田の艦隊の、速度ベクトルは交戦中の艦隊を向いている。『好都合だ!』栗田はとっさに命じた。

「このままの残存速度のままで、シリンク艦隊に突っ込め。レールガンとミサイルの全力発射。ロボットを時間フィールドに入れろ」


 35機の艦は亜光速のまま、シリンク艦隊に突っ込む。むろんシリンク艦隊も気がついて迎撃してくるが、極めて短時間のことで、散発的で時間フィールドに入ったロボットが楽々さばく。

 たちまち近づき、各艦可能な限りのレールガン、ミサイルを撃ち放つ。これらは時間フィールドに入ったロボットにコントロールされている。

 結果は爆発的であった。極めて短時間のことで、大口径レールガン、迎撃用レールガンもミサイルもいずれも装備したガン及びミサイルポッドの1発ずつ撃つのが限度であるが、時間フィールドに入ったロボットのコントロールにより8割以上が命中する。いずれも亜光速の加速が乗った状態であるので、耐えられる防壁などはない。


 35隻が大口径レールガン4発ずつ、迎撃用レールガンを10発、ミサイルを10発ずつ打ち放った。お互いに的が重ならないようにした統制射撃ではなかったが、シリンク帝国の最も運のよい艦、主力艦には一発だけのミサイルが当たった。


 しかし、それで充分であった。その運動エネルギーは艦体を豆腐のようにぶち抜いてあたった対象をばらばらに引き裂いて熱に変換した。ミサイルそのものの爆発はそれにわずかな一部のエネルギーを加えただけであり、運動エネルギーが熱に変化した爆発は頑丈な主力艦をばらばらの破片に変えた。


 いままで、堂々とした、全長500mで最大径が50mの、大抵の攻撃は平然と受け止めることのできる巨艦が、一発の亜光速のミサイルが当たった瞬間、わずか100マイクロ秒で閃光とともにばらばらの破片になってそれを猛烈な速度でばらまいている。

 乗員として乗り組んでいた500名は、熱で蒸発してしまっている。

 もっとも運のよい艦がその有様であったのに、最も運の悪い艦、12発のミサイルと7発のレールガンが当たった艦はどうなったか。結局ばらばらの破片になった点は変わらないが、溶けた破片であった点は異なっている。


 スーワリートム星防衛艦隊の司令官ラムジラムンは、シリンク帝国艦隊に自分の民族の命運をかけて挑戦している。

 文明が発達し、宇宙飛行も古くから行っているスーワリートム人はすでに超光速飛行も実現している。かれらは、極めて残虐なシリンク帝国の情報に触れ、それがかれらの恒星系がある星区に進出してくるとの情報を手にいれ、軍備に関して出来るだけの準備をするとともに、接触のあった惑星に警告をして回っている。

 シリンク帝国の支配下にはいるという選択肢は、その支配体制の情報からあり得ないものであった。しかし、その文明は唾棄する対象であるが、かれらの戦闘艦は強い。特に主力艦はスーワリートム星防衛艦隊の全力を尽くした攻撃が全く通じない。一方で彼らの艦隊は、シリンク帝国の艦船の攻撃に耐えられずどんどんその数を減らしている。最初500機を数えていた僚機はすでに300機を下回っている。このままでは全滅して、われらが美しいスーワリートム星が、そしてその住民15億人が蹂躙される。


「神よ!」彼は全能にして慈悲深き神スワレミウメンに祈った。


「司令官!艦隊が突然現れました!あれは、超空間ジャンプからの通常空間への移転ではないでしょうか。突進しています。シリンク帝国の艦隊の方向です!」観測員が叫ぶ。


 その監視盤上の光点、数はわずか30〜40機が、亜光速でシリンク帝国の艦隊に急激に近づき、突然各光点が光の束を放った。と、気が付くとシリンク帝国艦隊はばらばらの破片になって、破片が四方八方に飛び散っている。


 司令官ラムジラムンはしばらく唖然としてしてそれを見ていて、ようやくその意味に気が付いた。「神がお答えになったのだ。全能にして慈悲深き神スワレミウメンがお答えになったのだ!皆、神スワレミウメンに感謝を!」指令室にいた幕僚は最初は驚いたが、こんな都合のいいことは『神の仕業以外に考えられない』と祈るのであった。


 しかし、司令官ラムジラムンはさすがに正気に返った。

「あの攻撃は超空間ジャンプで現れた艦隊がやってくれたものです。たぶん噂に聞く銀河連合の艦隊だと思います。しかし、このタイミングでの登場はやはり神のおかげです。しかし、かの艦隊には感謝をしないと。通信士、あの艦隊は、ああ10億kmほど離れてしまいましたね。スーワリートム星防衛軍の名前で呼びかけなさい」


 その呼びかけにすぐ返事があった。「こちら、銀河連合からは派遣された地球防衛軍のマカリチノ分遣隊の司令官栗田です。残念ながら、スーワリートム星の言語は翻訳ソフトを持っていないのでとりあえず、マカリチノ語にて通信しています」


「わかりました、ぜひ協議を行いたいので合流願えますか。また先ほど言われた貴国の言語とマカリチノ語の翻訳ソフトを通信で送っていただけますか。こちらでスーワリートム語と貴国の言葉の翻訳ソフトにして返します」とマカリチノ語で返してくる。この素早さは非常にレベルの高い民族だ。


 栗田は聞いていた通信士に、英語とマカリチノ語の翻訳ソフトを送るように命じた。英語とスーワリートム語の翻訳ソフトになって帰ってきたのは、彼らの艦隊がスーワリートム艦隊に合流するまでの1時間の半分の時間であった。


 その間に、栗田は総司令官のカーターに戦闘の結果を報告するとともに、戦闘の映像を送った。

「カーター司令官、我々がスーワリートム星系に着いたとき、すでにシリンク帝国の艦隊とスーワリートム星防衛軍の戦闘の真っ最中で、明らかにスーワリートム星防衛軍が劣勢でした。


 また、出現した時ちょうどわが艦体のべクトルはシリンク帝国の艦隊を向いていましたので、亜光速のそのまま敵艦隊に突っ込みまして、レールガンとミサイルを全力発射して、主力艦100機、巡洋艦70機合計170機を全部破壊しました。

 こちらの被害はありません。いまから、スーワリートム防衛軍と接触するところです」


 カーターは聞きながら、戦闘の画面を見ている。栗田の話を聞いてため息をついて言う。

「栗田君ね。これは、通常空間に現れて60秒で敵艦隊170機を完全破壊しているね。これは、地球防衛軍の新たな伝説だな」さらにカーターは言う。


「いずれにせよありがとう。助かったよ。なにより犠牲がないのが一番だ。いま送っている艦隊は呼び返すよ。いいかな?」


「はい、私もこっちの話を片付けたらすぐに合流点に向かいます」言う西村に、


「いや折角だから。歓迎されたらいいと思うよ。宇宙のかなたから現れて惑星の危機を救ってくれた英雄たちだ。今後の交易に大いに役に立つよ。スーワリートム星人はずいぶんレベルが高いようだからね。まあ1週間かな、その後、君の艦はリリンカム共和国に来てほしい、他の艦は地球に帰る艦に合流して帰ってもらう。凱旋だ」


「了解しました」画面で栗田とカーターはお互いに敬礼をする


終盤に入りましたが、最初はぼんやりしていたスペースオペラがだいぶクリヤーになってきました。

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