シリンク帝国懲罰作戦、地球防衛軍の戦い2
地球防衛軍の戦いその2です
言っているそばから、「中村少尉はん。きまっせ。ぼやぼやせんと重パルス銃を構えな!あっちの方角じゃ」ガイが中村を叱咤する。
さらにガイはシュミリエ人に叫ぶ。「みな敵や!伏せろ!」
中村が、重パルス銃担当の部下に「沢田!重パルス銃をこの方向に構え!」叫ぶ。
いきなり、ガイが言った方向の樹木を縫って、飛行物体、いや戦闘スーツを着たシリンク帝国兵が10人余り飛び出してくる。持っていた、ライフル様のパルス銃を広場の人々に向けて連続で撃ち放つが、立ちふさがったロボット兵が斥力装置をフルパワーで上に向ける。パルスで発射された弾はすべて上空に大きく逸らせれる。
そこに、敵兵に向けて沢田2曹が重パルス銃を撃ちはじめ、他の隊員は自分のパルス銃及びロボットも持っているパルス銃を同様に撃つ。
重パルス銃は据え置きで、弾の重量が携帯型の3倍もあるため威力が違う。あっという間に、空中から迫っていたシリンク帝国兵10人はずたずたになってぼろきれのように地上に落ちた。
「ひえ、危なかった。ロボットの斥力装置がなかったら、また敵の数が2倍3倍いたら相当死傷者がでていたろうな。たすかったよ。ガイ!」中村は冷や汗を拭った。
「主らは、モバイルコンバットスーツもなくここに来るのは無理だっちゃ。とっとと引き上げるちゃ。あいつらはまだおるぞ」ガイがぶっきらぼうに言う。
生意気なロボットだが、話が正しいだけに言い返せないものの、中村も今の状態では帰れない。「しかし、ここに人を集めた状態では帰れんよ」
「まあ、それはそうだの。尻尾を巻いて帰ったら笑われるわな」ガイが容赦なく言うが中村は構わず言う。
「ガイ、お前たちロボットはあいつらと同様飛べるわけだ。またあいつらからのパルス射撃に関しても、人間を守る必要がなければもっと楽に防御できたろう?」いう中村に、
ガイは「まあ、ワイらだけだったら戦いも楽だわさ。では、5体は守りに残すので、15体で奴らがいる方向に飛んで行って奴らを殲滅してくるわいな。まあ、少しは犠牲がでるだろうが、わしらはしょせんロボットじゃからな」と言う。
「う、うう。まあ頼む。お前たちが帰るまで俺たちは出来るだけ警戒しながら待っている」中村がたじたじと言うのに、
「じゃあ、わしらが帰ってきたら、貨物機を呼び寄せるだな」とガイが確認する。
「そうだ。いま150人位は集まってきたな。当面ここにシュミリエ人のための資材集積所を作って、この地区の人の補給処にしようと思っている。いまのうちに、サンプルで持った来た小火器の使い方を彼らに指導する」いう中村に、
「まあ、あんじょうやってや。ワイがおらん時は、こいつ、ガイ2号でええわ。こいつに何かあれば命じてくれ。ではワイらはいくで」ガイがそういって、残るロボットの1体を指した。
15体のロボットは編隊を組んであっという間に去っていった。
それを見送って、中村は再度ラジムを呼び寄せ、サンプルとして持ってきたパルス銃を渡した。
「我々は、シリンク帝国のまとまった部隊は殲滅するが、ある程度は取りこぼしがでるので、これを君らに支給するつもりだ。いま、5丁あるので君の部下も呼んでくれ」
ラジムが呼び寄せた部下たちにも銃を渡して、射撃法を教える。
中村はラジムに「この地方で、1000丁これを渡すのと、重力コントロール機、これな、俺が背負っているやつを500セット渡す。また、食料を1000トン、仮設ハウス50棟分などをここにおろすので、引き取ってほしい」と言う。
しかし、ラジムは「ええ!おれは単なる下級将校で、そんなものに責任は負えないぞ」としり込みする。
「じゃあ、だれかいるか?」聞くと、周りを見渡して、「いないな。しょうがない。とりあえず俺が責任者と言うことで引き取るよ。置いていくつもりのもののリストはあるのか?」
「ああ、これだ。翻訳はしてあるので読めるだろう?」
メモを渡そうとするが、ちらッと横をみたラジムがいきなり叫びだす。
「あ!あ!ジェナイン!ジェナイン!」ラジムは叫ぶとともに走り出す。走る方向を見ると、木の影から5人ほどのグループがでてくるところで、3人ほどが女性だ。走り寄るラジムに気が付いて、一人の女性がぱっと顔を輝かせ、両手をあげて、「ラジム!まあ、無事だったの!まあ、うれしい!」とラジムに向かってやはり駆け出す。
2人は、激しく抱き合ってくるくる回る。「奥さんの、ジェナインだ。ラジム中尉は、ずいぶん探しても見つからず、すっかりあきらめてかけていたんだ。良かった」部下の一人がしみじみ言う。
やがて、ラジムが奥さんと仲間の4人を連れてくる。
すこし照れたようにラジムが言う。
「これが俺の奥さんのジェナインだ。探しても行方がわからなかったんだが、ここで会えるとはな。ちなみにこの人が、この地方の知事だった、サイマルマン氏だ。荷物の引継ぎはサイマルマンさんにしてくれ」サイマルマンと言う老年に差し掛かった元知事が挨拶してくる。こっちの挨拶は手のひらを相手に向けて肘から上に上げる動作だ。
それからは、極めてものごとがスムーズに進むようになった。
まず、1時間もしない内にガイに率いられたロボット隊が帰還してきた。
「この周辺の奴らは片付けたで、あいつら弱いもんには強いが、俺らみたいな強いもんにはさっぱりや。だいたい、ガッツがないわい。ええと、片付けたのは73人の兵士と隠していた地上掃討機2機やな」とガイが報告する。
さらに、サイマルマン元知事一行が向かっていた、ほど近い山麓の要塞。これは、シリンク帝国の侵略が察知されたとき、急きょ各地方に作られたもので、いまでも1万人位は避難しているはずだということであった。中村の知らせにあさま3号が着陸して、サイマルマン元知事をはじめ数人を中村たちと共に乗せ、その要塞に向けて飛び立った。残った150人あまりのシュミリエ人にはロボット兵10体が護衛で付いている。
あさま3号に再度乗船した中村は、シュミリエ星の作戦のその後の動向を聞いたが、その後も防衛軍の戦闘宇宙艦は哨戒を続け、見つかるまとまった部隊及び地上掃討機を片つけているが、数は少ない。
シリンク帝国人は、他の種族をきわめて残虐に扱う反面、どんなに絶望的な局面になっても降伏ということはいっさい申し入れもしない民族ではあるらしく、地球防衛軍も容赦なく全滅させている。どっちにしても迷惑な民族ではある。
ちなみに、シリンク帝国人のシュミリエ星への侵略の目的は、住民を皆殺しにして、自分たちの惑星にしようとしたらしい。地球の1.45倍の重力と、やや乾燥ぎみの気候がかれらの好みにぴったりらしい。
作戦開始後5日目にして、シリンク帝国軍のシュミリエ星への侵略部隊は、99%は消滅した。恒星系に、主力戦闘艦が思いがけず1隻現れたが、惑星の周りを哨戒していたC5号艦が発見し、タイムゾーンに入った5機で急襲して艦の速度を上乗せしたレールガンのつるべ撃ちで穴だらけにして爆発させたそうだ。
他の星系の作戦も、超空間通信による連絡によるとあらかた終了したらしいが、マカリチノ支隊がマカリチノ星の敵は片つけたものの、近隣のスーワリートム星がシリンク帝国艦隊の攻撃を受ける可能性があるということで35機で向かっている。
シュミリエ星支隊、ミセルナン星支隊およびリセンカノ星支隊は、その1週間各担当惑星で観察と残存勢力の撃滅を続けた。その間にスーワリートム星系の会戦マカリチノ支隊栗山艦隊35機が170機のシリンク帝国艦隊を撃滅したという報告に艦隊中で大きな話題になった。
その後に地元勢力が対応できない場合に備え、司令官をジューピアーノ・ラミス大佐とし、各惑星に3機の戦闘艦を残して、他はこれらの惑星を離れることになった。遅れた来た栗山艦隊が合流し、10機がリリンカム共和国の連合第3軍との交流会に向かい、残り178機は地球への帰途についた。すべての艦に損傷もなく作戦は終了したわけだ。
各惑星に残った艦は、ときおり地元軍からのまとまったシリンク帝国軍発見の報告に応じて殲滅に向かったが、1か月後にはそれも途絶えジューピアーノ・ラミス大佐の指揮下に帰還した。
シュミリエ星にあさま1号から3号までの3艦が残ったが、中村も当然残っている。かれはしばしば力強く復旧にとりかかったシュミリエ星に降り立ち、ラジムなどと交流を深めている。シュミリエ星では、あるていどシリンク帝国の侵略を予見して資材等も蓄積していたのが功を奏したことになって、これが復興を早めているが、半数の人々が殺された傷跡は深い。
中村はいつの間にか、ガイが副官のようになって、「中村はん、もうちょっとびりっとせんといつまでも少尉どまりでっせ」などとはっぱをかけられる毎日である。
ちなみに、今回配備されたロボットは地球防衛軍の活躍に鑑み、贈呈ということになったので、中村とガイは当分は一緒に活動することになったようだ。
ちなみに、他のロボットも基本的に同じ性能らしいが、やはり日本語が変だというのは一般に言われれいるものの、ガイのようなため口をきくものはいないようだ。ロボットも進化すると個性もでるとはいうが、ちょっとガイの場合には個性的すぎるようだけど。
マカリチノ支隊栗山慎吾大佐は地球型の惑星が近づくのを見ていた。
「大佐、きれいですね。あんなに美しい惑星がシリンク帝国に蹂躙されているとは許しがたいですね」
副官のレオン・クリーヤーが言うが、
「しかしシリンク帝国というのはどういう意図で、侵略して住民を迫害し殺害までするんだろうね。効率が悪いと思うけどね。資源を狙っているなら適当にあつかって、採掘させた方がいいだろうし、食料ならやはりそれなりに扱って栽培させた方が効率がいいとおもうけどな」栗山は反問する。
「実際、かれらは征服した星で必ず虐殺を行っている。脳を生体コンピュータにするのは理屈としてはわかるけど、知的生物を食べるというのはどう考えても理解できない。いくら、相手の人権などを考えていないといっても、知に対する尊敬と言うか理解が全くないように感じるな。
そういう彼らが、そこまでの文明を築き上げたのが信じられない。どういう社会構造をしているのか、調べてみたいな」
実は、シリンク帝国の社会は完全な上意下達の世界で、皇帝を頂点とするピラミッド社会である。
かれらに普通の知的生物にあるいわゆる情緒なるものはほとんどない。どちらかというと、命令されたことをどう効率よくこなすかのみが関心事で、情緒らしいものが発揮するのはいじめてもいいと許されている他の種族を追い詰めて殺害するときである。すでにこの社会にも人工子宮は使われており、年間5%という高い人口増加率はそれが故である。
子育ては、女の役割りではあるが、誰が誰の子かはわからないようにされ、子供に対してはひたすら厳しく育て、いわゆる愛情なるものはなにか理解できないということになっている。こういう社会で創造性が育つわけがないが、その通りで、基本的には数々の先進技術はすべて他の種族から取り上げたものである。
最初にシリンク人が生まれた惑星の場合も、同じ惑星の知能に優れた種族を奴隷にして、数々の技術をものにしている。人口増加率を高く保っているのも、戦士を増やして他の種族を征服しようとしているが故である。また、征服した種族のかなりの割合をできるだけ残虐に殺害するが、これは一つには彼らの単純な感覚に強い刺激を与えるからであるし、単なる習慣でもある。
未開の地に住む種族であれば、大した害はないが、2000億からの国民を数えるとなるとシリンクなる存在はすでに大災害になっている。
マカリチノ支隊がマカリチノ恒星系内でジャンプから出たとき、索敵によって近くに3機の宇宙艦を探知した。距離は2天文単位(3億km)程度だ。あきらかにシリンク帝国の艦である。栗山は僚機に連絡した。
「破壊する。A1〜A10、亜光速で近づきレールガンを撃ちこめ」
それは1隻の主力艦と2隻のいわゆる巡洋艦クラスの艦である。A1〜A10の10隻が全力加速をして3艦に近づく。なにか連絡してくるが一切返事をしない。ミサイルとレールガンを撃ってくるがミサイルは防空用レールガンで迎撃し、レールガンは重力エンジンによる斥力でそらす。すでにロボットは時間フィールドに入っているので、加速された時間帯にいる。
一億kmで、10隻の戦闘艦がレールガンを各2発撃つ、船の速度が加わったレールガンは3隻の艦をずたずたに引き裂いた。「戦闘終了しました」10隻の艦から栗田にそれぞれ報告がある。
惑星マカリチノに接近していくと、静止軌道上に7機の長さ50m程度の小型艦と2機の巡洋艦クラスの艦が乗っている。栗田が、今度はB1〜B10までの艦に「レールガンで撃破しろ!」と命じる。
シリンク帝国のこれらの艦は、警戒の構えも取ることなく、接近する新地球クラスの艦のスピードが加わったレールガンでズタズタにされて爆発した。
その後、栗田は指揮下の10機を地上の探査に当て、残り30機は軌道に乗って周辺の警戒に当たる。
栗田の指揮者盤には探査の結果が次々に現れる。
結局、惑星の数10か所で今も現地側とシリンク帝国の戦いが続いている。現地側は要塞状の複雑な形状の構造物または山をくりぬいたような構造物に立てこもっており、シリンク帝国側は先ほど軌道にあった小型艦と多数の地上掃討機で現地側にレールガン、熱線銃を絶え間なく撃ち、時折ミサイルを撃ちこんでいる。
守る側も、レールガンと口径が大きいが弾の速度が遅い大砲を撃っているものの、ほとんど当たらず一方的に打たれるだけであるが、それほど被害を受けている様子はない。何らかのバリヤーを張っているらしい。
周辺は町らしいものもあるが、ほとんど破壊しつくされ当然人影はほとんど見えない。住民は分散して森林などに隠れているが、シリンク帝国も要塞に注力をして、これらの住民は無視しているようだ。
惑星周辺に宇宙船は検知できない。
「よし!C1〜C10は軌道の警戒に当たれ。残りはシリンク側の小型艦及び地上掃討機を殲滅せよ。むろん、目につくシリンク兵も掃討せよ。A1〜A10はゾーンA〜C、B1-B10はゾーンD〜N、D1-D10はゾーンO-Zを担当せよ。かかれ!」
各、戦闘艦はそれぞれのゾーンに飛び、各分隊長の指示で攻防を続けている要塞の場所に行き、基本的にはレールガンと熱線銃で小型艦と地上掃討機を破壊する。地上掃討機は防空用の小型レールガンで十分だ。
いずれも防衛軍の戦闘宇宙艦が通過して、レールガンと熱線銃をつるべ打ちするだけで、小型艦と地上掃討機はすべて破壊された。
C1に乗る、栗田のところには各部隊から連絡が来るが、ものの1時間程度で戦闘は終わってしまった。
栗田は地上に呼びかける。
「こちら、銀河連合から派遣された地球防衛軍の指揮官の栗田です。貴星周辺のシリンク帝国の艦船はすべて撃破した。さらに貴惑星の要塞を攻撃中のシリンク帝国の小型艦及び地上掃討機も同様にすべて排除した。貴惑星の責任者の方とお会いしたい。返事を下さい」彼はこれを繰り返し通信したが、3回目に返事があった。
「こちら、マカリチノ惑星評議会の議長のニラムスル・サンデ・キクルロです。今からお送りする地図の位置の要塞にいます。お着きになったら出ていきますので、おいでいただけますか」と丁寧に通信があり、地図の情報を送ってくる。
すぐ栗田の艦C1は指定の場所に向かい、着陸する。他のC2〜C10は上空で見張りだ。
艦が上陸すると、かなり傷ついた要塞のゲートが開いて、10人ほどの人が出てくる。
それを見て、栗田も陸戦隊を5名連れて、せり出した階段を降りていく。相手は、それを見て近づいてくる。幸い、マカリチノ星の重力は0.9Gで全く問題はなく、大気成分も疫学的な検査もの問題ない。副長は当然、艦内に残る。
後の物語を書いていると、前に書いたものを訂正したいというのが多いですね。
すでに投稿したものはあきらめざるを得ないので、3話くらいは投稿しないでホールドしていた方がいいように思います。