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新やまと星の選挙

新やまとの開発は軌道に乗ってきます。

 新やまとの歴は、一日が22.5時間で1年が425日であるため、1年の長さは地球の1.09倍である。1月1日は冬至の日にしており、1年は12カ月で1月は35日かまたは36日である。

 今日の紀元3年、9月1日建国記念日は、地球時間の2028年3月12日である。なお、建国記念日が9月1日であるのは2026年1月に先発建設隊が上陸して次の設計隊等の宿舎や種々のインフラを作り始めた時期で、その時を切りのよい9月1日として、記念日としたものである。


 建国記念日ということで、多くの人が真珠市の中央広場に集まっている。

 現在、新やまとの人口は、778万3千人という数値が新やまと自治政府の統計であるが、そのうち72万人が真珠市に住んでいる。結果、真珠市は都市計画で決めている最大人口100万人にすでに近づいている。

 これは、2026年中に当初計画総人口50万人であったものを新型の航行システムの導入に伴って、100万人に引き上げそれを余裕でクリヤーして、次の地球時間1年間に総人口500万人の計画としたが、それも十分越えて今の800万人弱である。その結果、『日本もあちこち人の集まるところがすいてきた』という最近来た人の評である。


 さらに、現状ではこちらの35日または36日の一か月に50万人以上が増えているが、これらの人々は一旦は真珠市にとどまるが、すぐに資源開発基地、農場、林産基地、水産市(北海市、南海市)に散っていく。どこでも人手不足であり、経験者は引手あまたである。


 今日は、周辺の開発都市や基地からの10万人以上が集まってきていて、これらの人はほとんどが広場にきているので、広大な広場も人であふれている。

 あちこちに出店も出てにぎやかな音楽、ときおり爆竹もなって祭りらしい雰囲気になってきている。あまり混雑というものがない真珠市では珍しい光景である。


 新やまとの開発は、人口の伸びをみるように順調である。

 資源関係では、まず原油の輸出であるが、10万kL積みの油槽船が5機が、きぼう原油基地から年間2000万kLの原油を急ピッチで運んでいる。これで日本は外国から原油を買う必要がなくなっている。


 現状では、きぼう基地の周辺で原油資源は2億トンが見つかっているので10年間は使えることになるが、きぼう基地には付属して石油化学工場がどんどん増設されており、現在50万トン/年の生産量が2年後には120万トンになる予定である。したがって、きぼう基地の石油資源が枯渇するのは困ることになる。しかし、幸い約1000km東方に大規模な油層が発見されており、いま詳細調査を行っていて、2年後には原油の輸出はすべてそちらから行われるようになる予定になっている。


 鉱物については、何といっても必要な量が多いのは鉄鉱石であり、日本での輸入量は1.5億トンになる。次に電気が安くなって生産が回復したボーキサイトが3千万トンであり、他の銅、鉛、亜鉛、ニッケル、タングステン、クロム、マンガン、コバルト、チタン、モリブデン、金、銀などは合計しても2千万トンはいかない。

 これらすべての鉱物資源はすでに資源探査機の調査によって見つかって、大部分は開発済みで採掘がはじまっており、資源量として日本の需要を満たす程度の量の供給は、100年間は問題ないとされている。


 現状のところ、地球・新やまと間の輸送機の積載量は原油を除いて合計で400万トンであり、うち100万トンは食料専用となっているので、鉱物資源輸送用としては300万トンであり、年間50往復として1億5千万トンの輸送が可能である。


 しかし、地球において輸入している資源国との関係もあり、簡単に振り替えができない場合もあって、現状では今の輸送量で問題はないと考えられている。

 しかし、地球における鉱物資源は様々な資金ファンドの投機の対象にされたり、政治的なてこにされたりということがあって、供給が安定せずまた値段も不安定である。その意味で、新やまとさらに他の開発中の諸惑星という巨大な埋蔵量を持つ資源国(?)があって、安定した量と価格で供給することは日本のみならず世界の消費国にとっての福音である。


 農業については、小麦、トウモロコシは、予定通り2年目にはそれぞれ1万km2の作付けがされて、それぞれ500万トン、1000万トンが収穫され、大部分が日本へ輸出された。

 この年、地球はやや天候不順で穀物メジャーが大幅な値上げを通告してきたが、日本の場合は新やまと産で小麦のほぼ全量、ともろこしは70%が賄えたため、強気の交渉が可能であり、トウモロコシについても非常に有利に交渉できている。新やまとでは、基本的には日本以外への輸出はさまざまな摩擦を避けるためひかえる方針であり、地元で消費量が増えているトウモロコシについてなおある程度の増産はするが、小麦は大幅な作付面積の増加はしない予定である。


 一方、アメリカはニューアメリカでこれらの作物は生産を開始しており、来年には新やまと程度の生産は可能な状況で、今後どんどん増産の予定のようである、他の植民星においても小麦、トウモロコシは真っ先に栽培にかかっており、かって価格を支配してきた穀物メジャーの将来は暗い。


 コメについては、日本国内の米作農家のことを考慮して、当面新やまとでは生産しない予定であったが、広大な土地で米を作るという野心的な米作農家が多数移住してきて、なし崩し的に生産が始まっている。


 木材についても、豊富な資源は知れ渡っており、情熱に燃えた林産業従事者が熱狂的に移住してきて、あっという間に伐採、乾燥、製材のシステムを作り上げ、どんどん日本へ輸出しはじめた。日本の需要は大体年間7千万m3で、輸入が2千万m3であるが国産材は劣悪な条件で採算性が悪く、従業者の低賃金に支えられてきた面が大きい。

 彼らは、需要の半分以上を新やまと材で供給する意欲で頑張っている。昨年1年間の輸出量は約1千万m3であり、ことしは2千万m3を出荷する意欲である。


 また、さらなる熱狂に包まれているのが水産業である。

 すでに北海市、南海市は「市」としてもおかしくない規模になっており、なおも続々と漁師が移住してきている。

 水産資源については、真珠大学が中心に調査を行った結果、豊かな資源があることが明らかになっており、魚種、貝など底生種も地球とは微妙に異なるが、それなりに美味な魚貝類が多く発見されている。

 すでに、これらの図鑑が用意されて、日本にも広がり、かつ様々なスーパー等で新やまと産の魚や、貝、軟体動物による試食が行われて、食に適することをアピールされている。加えて、当然缶詰やすり身等の加工食品にも広く使われ始めて、新やまと産としてのブランドをすでに確立している。

 過去1年の日本への輸出は300万トンで、日本全体の輸入量500万トンの6割に当たる。むろん、人口が急速に増えている新やまとの住民へもアピールは十分で、毎朝、真珠市の市場では北海市、南海市でとれた魚貝類が並ぶ。


 また、寒冷な北海市には市内と近辺に温泉が発見されており、温暖な南海市には郊外に美しいビーチがある。両市はこれを観光資源にして、かつ新鮮な海鮮料理をたべさせる観光コースを作り上げて、多くの集客をしており、地球からも多くが訪れる。


 このように、日本の外国からの資源輸入量は急速に減少してきているので、そのことによる摩擦は当然ある。日本が外国からの輸入をやめて、新やまとからの輸入に切り替えた資源類の総額は12兆円に達する。


 しかし、日本にしてみれば、新やまとからの輸入はすべて日本人のネットワークで生産されるものであるためまず量、質の面で安定していいる。さらに、すべての原価、すなわち、開発費または生産費、償却を含めた機器費、輸送費、人件費、さらに資源の場合は国に収める資源費、土地代等に加えて適正利益を乗せた価格が今までの輸入品として買っていた場合より30-70%安くなる。実際に、今まで払っていた12兆円が7兆円になっている。これだけの差があれば、選択の余地はない。


 しかし、こうなると資源国の経済は当然悪化するので、政府のみならず一般国民の対日感情が悪化してくる。そこで、日本はODAの一環として以下の手法をとった。

 まず、輸入を止めたことによる影響を調査し、職を失う、商売ができなくなった等の影響を受けた人を把握する。次にその影響の度合いによって、移民船を格安で当該国に一定期間割り当てる。これらの国は惑星の割り当てを受けているので、そうした人々は優先的に移民することができ現地で生活の糧を得ることができるというものである。

 実際にこれらの国々にとっては、移民船の供給は十分でなく、こうした割り当ては非常にメリットが大きい。さらに、この割り当ては、目的とした人々の移民に必要な数よりはるかに大きく、さらに当該国が望めば相場に比べて非常に低い価格払い下げが可能である。

 こうして、日本に対する悪感情が広がるのを防ぐことができた。


 ちなみに、新やまとに入るには、日本人は同じ国内扱いであるが、外国人は観光目的を除き日本への入国のビザ等に加え別途のビザが必要になる。日本にいる外国籍の住民は、同様にビザが必要であり、入るのはそんなに簡単ではない。また、外国籍の日本国住民および外国人は特別な場合を除いて移住は許可されない。

 その意味で、順平一家も特別なセキュリティ無しに暮らせるわけである。

 しかし、この制度も正式に新やまとが自治区等として選挙して選ばれた政府ができれば変わる可能性が大きい。

 なお、日本から新やまとへ来る観光旅客機の料金は、片道1.5日ずつの往復で10万円程度である。


 中央広場で、北海市の漁業関係者が長さ1.5mもの巨大なマグロもどき(似ているが少し顔の配置が違う、マグロと呼ばれている)の解体ショーを行って、解体したものを刺身にして配っている。


 順平一家も、もらおうと列を作っている人々に参加している。順平は昨日久しぶりに日本から帰ってきて、皆で中央広場に出かけてきたものだ。麗奈、やまと、すみれ、亮介、さやかの5人の子供に母親としては西脇みのりおよび子守として順平の母親の吉川洋子さらに狭山章一が一緒だ。順平ももう19歳になって身長も178cmあるが、同年の章一は180cmある。

 麗華は5歳で、やまとももうすぐ5歳になる。すみれ、亮介は4歳、さやかが3歳である。

 また今、朝比奈さより及び西脇みのりとの子供が人工子宮に入っているので、まもなく順平の子供は7人なるわけだ。

 順平の子供は、明らかに皆そろって天才級で、父母とははっきりした言葉でコミュニケーションを交わす。しかし、順平のその才能は頭の回転もさることながら、周りの事象・事実を組み合わせて新しいものを作り出すということ、及び人との会話のなかで人々のもっているものを発揮させる触媒としてのものが貴重なのであるが、その点は皆まだわからない。

 麗華は特に語学に才能をみせる明らかに順平なみの天才で、どちらかというと人文科学の方が好きなタイプだ。

 やまとは、言葉もはやく理解力も極めて高いが、あまり麗奈のように発信はあまりしない方だが、知能はやはり天才級である。

 すみれ、亮介、さやかは明らかに常人と違い、知能も天才級であり、コミュニケーションもはっきりできるがどの程度かはまだよくわからない。


「ええ、いらっしゃい、いらっしゃい。北海市名物の新鮮マグロの刺身だよ。はい、お嬢ちゃん、はい、ぼく!」とねじり鉢巻き、法被の威勢のいい親父が皆に刺身を渡す。


 おばあちゃんにあたる洋子が確保した椅子に、皆座ってたべる。みな、割に刺身は普段から食べてはいるが今日のものは新鮮さが違う。

「おいしいね!」子供たちが叫ぶ。

 このあたりは天才少女・少年もただの子供だ。


 演壇に立った、西脇知事のあいさつが始まる。

「ご来場の皆さん、本日はこのわが新やまとの建国記念日に、ここ中央広場に来ていただいてありがとうございました。

 思えば2年前、私が降り立った真珠市宇宙港は、まだ大きな樹を伐採して取り除いた状態の荒地でしたし、真珠市もざっと道路の形がみえる中にプレハブの建物がポツリポツリと並ぶ、わびしいというかまあ、工事現場でした。

 それから2年、真珠市は今や70万人の都市ですよ!新やまと全体ではもう約800万人です。さらに、日本が輸入する原油、鉄鉱石をはじめとする鉱物類、小麦やトウモロコシ、木材、魚介類は過半がこの新やまとが生産して送り出しています。

 いまや、日本は新やまとの資源なしには成り立ちません。

 しかし、皆さんが一番ご存知のように、私たちがひっかいたのは、この新やまとのその3番目の広さであるのぞみ大陸のほんの片隅にすぎません。

 わたしは確信しています。近い将来、わが日本の中心はここ新やまとになります。大多数の日本人がこちらに住んで、この美しい景色ののぞみ大陸を自分の故郷と思うようになります。


 そこで、皆さんに図りたいことがあります。ここ新やまとの法律上の所属は日本国新やまと自治区です。自治区とはまあ、県とか市を地方自治体というのですが、その意味の自治区です。このことでは、立法措置はされて、例えば知事としての私の立場は書かれてはいますが、あくまで臨時として、と断ってあります。

 そこで、正式に新やまとを新やまと”星”として名乗って、知事を選挙で選ぼうということです。

 将来的には、国としての体裁を整えるべきだとおもいますが、現状では明らかに時期早々でしょう。 

 せいというのは日本には都、とか府とか道があるわけですよ。だったら星でいいじゃないかということです。どうでしょうか。皆さん」


「おお、いいぞ。新やまとせいいいじゃないか。賛成!」威勢のいい親父が叫ぶ。

 さっきの北海市の店で刺身を渡してくれたおっさんだ。


「ありがとうございます。それでは、新やまと星の知事、及び議員の選挙を行いたいと思います。概要については、お手元の端末に送りましたのでご覧ください。

 まず、知事と、星会議員の議員の選挙を行います」西脇知事が締める。


 選挙管理委員会が結成され、知事および星会議員が選出後改定または承認するものとして暫定規則が作られた。被選挙の資格は25歳以上の日本国民で、新やまと在住者星であること。また、星会議員は公務にあるものも兼務できるものとしている。選挙権は18歳以上となっているので順平も投票できる。

 知事および、星会議員として10人の立候補を受け付けたところ、知事については西脇現知事以外の立候補者はでず、信任投票となることになった。議員は西脇知事の説得で山村真珠大学学長、牧村副学長が加わり、先日広場で大声をあげていた北海市の威勢のいいおっさんも立候補している。かれは北海市の有力者らしい。


 10月1日選挙が行われ、西脇知事ほか山村、牧村ほか北海市のおっさんも加わり全部で10名の星会議員が決定された。真珠市の市長、市議会の選挙も年内には行われる予定だ。


いまいち、インターネットが信用できず、wordで打って貼り付けているのですが、このwordがおかしくて時々打った内容が消えるのです(泣)

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[気になる点] 時期早々ではなく時期尚早(じきしょうそう)ですよー
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