表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/52

ガキゾミ帝国への懲罰作戦3

時間の前後をつじつまを合わせるため苦労しました。


 リネン人が操縦する戦闘艦リリネール(これは地球から譲渡したもので、元のはくうん型の戦闘艦で超光速飛行が可能、リネン語で“美しい花”の意味、このへんでリネン人の感覚はよくわからない)がガキゾミ帝国の首都惑星に3光年と近いライナメミ星系へ接近して呼びかける。


「こちらはターラン星のリネン人の宇宙艦である。極めて重要な知らせを持ってきたので貴国の軌道上の衛星への接舷を許可されたし、なおわがターラン星には貴ガキゾミ帝国より使者が来てガキゾミ帝国への帰属を提言されている」


 横柄な問い返しが地上からある。「野蛮な深宇宙から何の用だ。概要を述べよ」


「貴ガキゾミ帝国が破壊した惑星のアーマル人という種族の植民惑星に住んでいる者たちが、貴ガキゾミ帝国の最大の戦闘艦を、報復にすべて破壊すると言っている。その宣言の映像を持ってきている」リネン人の答えに、「何を馬鹿なことを言っている。わが帝国の大型戦闘艦は宇宙最強の艦だ。本拠惑星をあっさり破壊されたような種族の植民惑星がそれを破壊できるわけがない。いい加減なことを言うな!」とライナメミ星の管制官が言う。


「そういわれても、我々はそのアーマル人から頼まれただけです。そしてかれらは、その作戦をすぐ始めると言っていました。いいのですか、首都惑星に知らせなくても?」さらに言うリネン人に、


「ううむ、仕方がない。ではこちらの誘導に従え」とリリネールに誘導電波を送ってくる。


 リネン人が衛星に乗り込むと、ガキゾミ帝国人の衛星の司令官が出てくる。


「これが、映像の入った媒体です」リネン人のグギル船長がメモリーを渡す。

 司令官が再生すると、映像が映る。映像のアクラがしゃべり始める。言葉はアーマル語であるが、ガキゾミ後に翻訳されている。


「お前たちガキゾミ帝国は、わが美しいアーマル星に突然来襲して、爆弾の雨を降らせ、惑星の生命すべてを滅ぼした。我々は、アーマル人の植民惑星に住んでいるものであり、後にそれを知り、犯人への復讐を誓った。

 その犯人がガキゾミ帝国であることは判ったので、我々はまずその報復として、お前たちガキゾミ帝国の誇りである大型戦闘艦350機をすべて殲滅する。

 それをお前たちは確認して、自分たちの無力を知るがいい。さらにわれわれは、何もできず恐れるお前たちの惑星を一つ一つ破壊して、誰も住めないようにする。

 この宣言を帝都惑星に届け、皇帝に渡せ」映像はそういう。


「ばかな、お前たちのような軟弱なものが、わがガキゾミ帝国人の最強の艦を破壊できるわけがない」司令官が興奮していう。


「いや、それでこれも渡されたのですが」。グギル船長が別のメモリーを渡す。


 それを再生すると、これはアーマル星襲撃艦隊の破壊される様子である。


「これは、ガキゾミ帝国のアーマル星襲撃艦隊の102隻がわが方の戦闘艦2隻から一方的に破壊される様子を撮影したものだ。この中にガキゾミ帝国のスリンラ級戦闘艦10隻が加わっているが、見ての通り最初の攻撃でもろくも全滅している。

 このスリンラ級戦闘艦は、ガキゾミ帝国の最強の艦のであることになっているが、わが軍の艦にかかればこんなものだ。

 我々は慈悲深いので、お前たちの艦が破壊されたのち、生き残った乗り組み員をこのように収容して、わざわざこの艦隊の本部のある惑星ゾマクリズに届けた。生存者は約5200人だ。以下は、お前たちの艦隊の捕虜になった最高位の軍人の供述だ」


 その内容は、艦隊の司令官がどのように彼らの艦隊が破壊されたのを具体的に述べている。

「われわれは、全力を尽くして反撃したが、いかなる攻撃もわずか2隻の、しかもあのように小さな戦闘艦にまったく通じなかった。反対に彼らの攻撃は簡単に我々の無敵と信じていた防御を突破して我々の艦を廃墟にしてしまった。今回の結果は、皇帝陛下を始め、軍司令部他の皆さんにはまことに申し訳ないが、われわれとて全力を尽くした結果であるをご理解願いたい。

 さらに、アーマル人が、わがスリンラ級戦闘艦をすべて破壊すると宣言していることを大変憂いているが、残念なことに防ぐすべはないであろう。どうか、皇帝陛下に私のこの言葉を伝えて、なにか対抗する手段があれば講じるようにお願いしてほしい」


 司令官はガタガタ震えている。「しかし、帝都までの工程は600日(地球時間1年半)を要する。話が事実としてもそれまでに、すべて終わっている」


「ううーん、では私が連れて行きましょうか。私の船なら、3日で行けますよ」グギル船長が言う。


「なに、お前のような野蛮人が超光速を実現しているのか!その技術をよこせ。そうすればガキゾミ帝国に名誉ある地位を与えてやる」と司令官。


「いや、だからこの艦はアーマル人から預かっているもので、私はどうにもできないのです。しかし、一人で行くのがいやならこの知らせは必要ありませんか?」さらにグギル船長。


「ううむ、止むを得ん。連れて行ってくれ。私の兵を乗せる」司令官が言うが、グギル船長が返す。


 「いえ、もし一人以上が乗ったら、その人は即死ですよ。そういう風にセットされているのです。また、当然、あなたたちが強奪しようとしたら、大爆発です。この衛星もろともですね。さらにすぐさっきスリンラ級を葬った戦闘宇宙艦が駆けつけてきて、このライナメミ星を破壊します」


 結局司令官のみを連れて、ガキゾミ帝国の帝都のあるガキゾミ星の軌道要塞に近接すると、司令官に連絡させて1km程度の距離に接近したところで、司令官に宇宙服を着せて放り出し、さっさとグギル船長の戦闘艦リリネールは逃げ出す。


 ライナメミ星の衛星の司令官は、要塞に収容されるとその司令官(要塞の重要性に鑑み2階級格上)以下の幕僚に、持ってきたメモリーの映像を見せた。

 大騒ぎになり、宣言はともかく、スリンラ級の破壊が本当なのかが検証された。これは、戦いに破れた司令官の証言もあり、疑う余地はないということになった。この映像は皇帝まであがり、ガキゾミ帝国の少なくとも首脳級はアーマル星の破壊がどんな結果を招きつつあるかを理解した。

 しかし、かれらには打つ手がない。惑星ゾマクリズに引き渡された兵員からのヒアリングも遠い将来のことである。ガキゾミ帝国軍は、科学者、技術者を集めて映像を見せて、対抗策を命じたが、だれも対抗策は案出できなかった。わずか、それから30日 (地球時間1カ月と6日) 後のことである。たった12隻!ガキゾミ帝国の彼らすれば、中型の戦闘艦が現れた。それらは、攻撃することを宣言したあげく、軌道要塞5基にレールガンを浴びせ、また謎の電磁波を照射した結果軌道要塞は全く機能しなくなった。そこで、これらの戦闘艦は静止軌道に居座り、アーマル星襲撃艦隊と、スリンラ級でこの襲撃艦隊に含まれていなかった340隻、さらにドックで建造中の5隻を含めて破壊する様子の映像をガキゾミ帝国の帝都惑星に流した。

 合わせて、アーマル臨時共和国、臨時代表アクラ・ミン・フォンの名前で以下の内容がガキゾミ帝国に対して示され、5日を期限として回答を迫った。


 i) アーマル人に文書にてその惑星破壊の謝罪をし、その報復として戦闘艦が破壊されたことを認める

 ii)全ての被支配種族を解放する、ただし援助は続ける

 iii)今後酸素呼吸生物を襲わない

 以上を受け入れない場合、受け入れるまで惑星を順次破壊する、最初に破壊するのは帝都のある惑星になる。


 ガキゾミ帝国は、あらゆる有力者が集まり、議論がなされたが、これだけ力に差があり、かつ軌道上に彼らからすると考えもつかない力のある戦闘艦に居座られては、反抗の余地はないことは明らかであった。

 だれもしゃべらないのでついに皇帝が断を下した。

「明らかに、我らのアーマルという星を、我々が原初から恐れ戦ってきた恐るべき敵と同種と考え、わざわざ艦隊を送って滅ぼしたのは間違いであった。

 なぜなら、アーマル星人は我々の古くからの敵と違って、出会うものすべてを殺すわけではない。かれらは、破れた艦隊の乗組員を助け、破壊したスリンラ級の乗り組み員も多大な労力を注いで可能な限り助けている。


 また、諸卿らは注意を向けるべきである。

 リネン人の今回果たした役割と彼らのかっての姿を。彼らは我々より大きく技術的にも社会的にも劣っており、明らかにわが帝国の支配下にはいらなければ飢えつつあった。それがどうだ。今回使者の役割りのみならず、いつも間にやら超光速船を操って、スリンラ級の乗り組み員の救助に当たっている。おそらく、アーマル人のみではないはずだが、アーマル人およびその同盟種族から与えられたものだと思われる。当然、エネルギー及び食料も問題は解決しているものと思われる。

 余の言いたいのは、アーマル人およびその同盟種族は、恐ろしく寛大な種族であるということだ。余は今回の要求はすべて飲む。さらに、アーマル人に心からの謝罪をする」


 出席者にどよめきが起きた。


「陛下、そ、それはあまりに」宰相が立ち上がって言う。


「いずれにせよ、我々に選択の余地はない。このガキゾミ星をこうまともに人質に取られてはな。相手が極めて残虐で、支配下になるのよりは滅びた方がいいという場合は別だがな。

 この場合には、降伏以外の道があるというものは申せ」この皇帝の言葉に誰も何も言えない。


「誇りある、ガキゾミ帝国始まって以来の屈辱であるが、止むを得ん。

 しかし、これからが勝負だ。余は、どちらかというとその同盟種族と時間をかけて、同盟を結ぶべく動きたい。あの卓越した技術、その割に非常に寛大な姿勢。

 彼らは、我々より明らかに技術的に大きく進んでいるのみならず、社会的な面で大いに学ぶべき点があると思う。我々はやるべきでない失敗、アーマル星を滅ぼすという大失敗をしたが、これを真摯に反省し、今後我らガキゾミ族がさらなる発展を遂げるように皆で、さらに盛り立ててほしい」


 若き皇帝の情熱溢れる熱弁に、その大きな会議室にいた面々は思わず立ち上がり、

「リザム!リザム!」と皇帝の名前を熱狂的に叫ぶ。


 ガキゾミ帝国がアーマル人の要求をすべて飲み、放映された中でアーマル人に対して謝罪し、戦闘艦が破壊されたのでは当然の報いであると認めた。さらにそれを文章にもしてアーマル臨時共和国に対して提出した。さらに被支配種族もその支配を解いた。どのみち、その支配は赤字だったのだ。

 また、今後酸素呼吸生物を襲うことは自衛上やむを得ない場合を除き絶対にしないと放映中公言もし、文章にもしてアーマル人の同盟種族として姿を現した地球人に対しても提出した。


 数年後、地球人のなかでガキゾミ帝国のことが話題になることが多い。

「あいつら、結構調子がいいんだよな。結局、こっちの技術はなんとか、かんとか言ってほとんどせしめていったろ。超光速船を手に入れてから、偉い勢いであっちこっち開発をやっているな。大体、アンモニア呼吸生物は食料が不足気味ではあったからな。

 しかし、あの皇帝、クスリト3世は達者だよな。ふつうあれだけ、皇帝が外に向かって頭を下げていたら、体制が保たないはずだが、よほど支配体制がしっかりしているんだな」


 アーマル人も、最高の形で報復を果たせ、皆見違えるように明るくなっている。かれらは、主として新やまとに住んで、地球にもしばしば行き来して、こまごまとした種族の遺産である技術を売りながら、また彼らの特出した能力であるカタリシストスとして様々な活動に活躍している。

 最初の50人の新生児は無事に生まれ、すます活気が出てきた彼らは、新やまとのある島を手に入れた。

 これは、まだ未開発で、大体日本列島位の面積の島であり、自然がとりわけ豊かで美しい。先発開発隊として、10人ほどが住み着いてロボットを使って開発を進めている。この島には、新アーマルという意味でサナアーマル島と名付けられた。


次は新やまとの開発の進行状況です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ