シリンク帝国への挑戦 3
爆弾の威力をテラトンと書きましたがギガトンの間違いです。
お詫びして訂正します。
会議のあと、順平、山戸、牧村は阿山首相と山下官房長官に呼ばれた。日本の夜明け党の蓑田財務大臣も一緒である。
2026年夏、衆議院選挙があり、結局自由民主党はかろうじて第1党を守り232議席を確保し、230席の日本の夜明け党を退けた。健全な2大政党をうたう、日本の夜明け党であるが現状の所惑星開発が進み、異星人が見つかりかつその異星人の惑星を殲滅したX星人がいるという事態には、国として総力体制をとるということで、依然として連立を組んでいる。
蓑田大臣は、もし日本の夜明け党が政権をとれば首相になると目されている人格者である。
「お呼びだてしまして、申し訳ありません。今後の方針について、ご意見をうかがっておきたくお呼びしました」官房長官が言う。
「まず、吉川君が言っていた、いろんなシステムですが、具体的にはどのようなものを考えておられるのですか。あの席では、あまり出なかったようですが」
「じゃ僕が答えます。大体の基本設計は出来たので、イメージは説明できます。プロジェクターがあるとやりやすいのですが」順平が言う。
官房長官の合図で、秘書官が出ていくのを見ながら順平は続ける。
「じゃ、プロジェクターの準備ができるまで、概要をお話しします。
まず、システムとしては、情報調査データベースシステム、これはシリンク帝国の惑星のデータ、各戦闘艦のデータこれは追跡システムの一種のタグを含んで集めます。これらは、転送装置による核攻撃のターゲットですね。 さらにこのシステムは、シリンク帝国内の被征服種族また、圧迫を受けている種族のデータ、さらに銀河連合のデータを集めます。これは、前者はシリンク帝国の惑星と戦闘艦を破壊後に残ったシリンク族を駆逐するためですし、後者は我々のこのアクションのいわばお墨付きを得るためです。
次に、破壊システムですね。これは、各種核爆弾8万発以上を収め自動で転送装置に送りだす自動倉庫と転送装置からなります。基本的には一人の命令者がいればラリムの補助で自動で動きます。
このためには、惑星破壊用の100ギガトン爆弾400発、1ギガトンと100メガトン爆弾をそれぞれ4万発です。絶対必要なものはこの程度ですが、惑星、大型戦闘艦を破壊した後の被征服種族への接触、場合によってシリンク帝国生き残りとの戦闘にためには相当数の戦闘艦が欲しいですね」
そこで、秘書官が入って来て、「プロジェクターの準備ができました」という。
「ああ、ありがとうございます。じゃメモリーは使えますね」」順平が礼を言って尋ねる。
「はい」
メモリーを差し込んでファイルを開くと、図面が現れるのを見て順平は続ける。
「概念図はこれで、いま言ったシステムになっています。ただ、これはラーナを頭脳として組み込んでいますが、実際のところはラリムが実際の空間操作と情報収集をしてくれます。ラーナの役割りは高速で流れてくる情報を整理してデータベース化することです。
難しいのは、戦闘艦の現在位置を知ってもしょうがないことで、片っ端からいわゆるタグをつけていって、どこに行ってもの追跡できるようにすることなんですよ。数が約6万機と多いので、ラーナ一体じゃ無理だろうと思います。この点は、ラリムからラーナの性能アップの話もあるので、また今後の検討課題ですね。
さて、自動倉庫は当然現状の実際のもの程度の移動速度では困るので、スピードアップが目いっぱい必要です。転送装置自体はそんなに大きなものではないのですが、まあこの図にあるように20mの立方体程度であるものの、電力の消費がすごいので100万kWの発電機が3台要ります。
これも制御にラーナクラスの人工知能が必要です。また、これだけの電力をこんな小さい装置に集中するわけですから超電導の電線や接点が必要になります。これの技術はすでにありますからご心配なく。
さらに、問題は爆弾の製造です。これは自動工場を作って製造しますが、日本で8万発の核融合爆弾を作れます?」
順平の問いに首相以下たじろぐ。
「うーん、そうでしょうね。一部の人の核アレルギーはキチガイの領域ですからね。核爆弾の製造はアメリカに頼みましょう。しかし、情報調査データベースシステムは牧原宇宙港で地球防衛軍司令部に置きたいのですよ。そうしたら当然、このいわばデストロイヤーは一体に働きますからその隣接地です。したがって、8万発の爆弾は牧原に持ちこみますよ。その時反対でデモをするような奴らは容赦しません。2年で日本人の意識を変えてください」順平は首相以下を厳しく見つめ言う。
「お断りしておきますが、僕は好き好んでこんな役割をしているわけではありません。2000億もの命を僕が、実質僕が奪うのです。ゴキブリだって、2000匹を殺せばいい気はしませんよ。横から、がたがたいう人に対して僕は容赦しませんからね。そのような人が僕に替われるならいいですが、そんな人はそういうことは言いません。
誰か替われる人がいればいつでも替わりますが、いないでしょう?」さらに問い詰める。
首相以下は頷くしかない。
「まあ、そういうことでアメリカをちゃんと抱き込んでおけば、システムとしては出来るのですが、問題はある程度の機動戦力がいるということです。これは、いま日本が世界に供給している程度のものでは全く足りません。今の”はくうん”型ではパワー不足なのです。
最低、貨物機程度の大きさが必要です。これは、胴体は造船所レベルでできますから、世界中に発注をかけて、日本では中身の重力エンジンほかの機関製作に集中するべきです。
そんな、こんなで日本だけでは当然手が足りませんし、金も足りませんので世界あげてやる仕事です。これは、もう植民惑星を質にいれて金を作るしかないでしょう。ちなみに、その後地球型惑星はもう分配した3つの他さらに3つ見つかったんですよね?」
順平の問いに官房長官が答える。
「そう、3つ見つかってどうするか協議中だ」
「その開発権で艦隊を作りましょう。財務大臣なんとか仕組みを考えてください」という順平に「ううむ、まあ何とかなるかな。考えて、何とかしよう」蓑田大臣は笑って答える。
「そして、銀河連合のことがあります。わが地球人もその連合に加わる必要があると思います。しかし、今の地球人はあまりにも井の中の蛙です。貧しい人は、今のこと、生活のことにきゅうきゅうとしている。富む人は、ただ贅沢をして遊び暮らすか、さらに富を得ようとするばかり。
人々は宇宙に無数の知的生物がいて、それぞれ切磋琢磨しているということを知らなくてはならないし、さらにシリンク人のような凶暴かつ残忍な知的生物もいるということを。不幸にして、地球がガキゾミ帝国の近くに位置していれば、今頃は核爆弾の雨を浴びて絶滅していたかもしれない。またシリンク人のテリトリーの近くにあれば、今頃地球人はその餌になっていたかもしれない。
そういうことを、地球の人々は知らなくてはならない。それも急速に。でないと、到底いまわれわれが直面していること、300個もの惑星に住み着いて、600もの他種族を残忍に支配している帝国があって、それに対抗する必要があることなど理解できるわけがない。それを、何とか近いうちにやり遂げなくてはならない。
そういう意味では、今の国連は無意味です。各国がわがままを言う場、きれいごとを言う場になりはてています。しかし、そういう存在はいずれにせよ必要なので、せっかく形としてはあるものは利用すべきだと思いますよ。これは、むしろアメリカ、ロシアあたりと相談すればいいと思います」
と言ったところで、順平も我に返ったように、「ああ、言いすぎました。すみません」と頭を下げる。
「いやいや、なかなかの名演説であった。その通りだ。人、特に政治家は本音を言わん。
今の話の数々は全く本音の話で、また絶対に必要なことばかりだ。たしかに、日本人も世界の人々も変わらなくてはいかん。いま、それも今日、我々は銀河宇宙で起きていることの一端を知ったわけだ。これをまず日本の人々、そして世界の人々に広げていかなくてはいかん。その手法とシステムを作るのが政治の仕事だ」蓑田大臣は大きく頷いて言って、さらに首相と官房長官に向かって続ける。
「順平君のいう通りですよ。まず、日本で主要国を集めて、シリンク帝国対策会議を開きましょう。
さらに、並行して今の国連事務総長を罷免してもらおう。中国が抜けて、常任理事国はすべてその対策会議に来るわけで、彼らもことの深刻さと、いま時代のはざまに立っていることがわかっているはずだから、ちゃんとした案を作っておけば話は通るだろう、いや通さなくてはいかん。
また、主要国、かれらほど、今の国連の活動の無意味さをわかっているものはいないと思う。国連の憲章および規則等の見直し案は、我が党のなかで実はできている。これは自民党とすぐ詰めて、シリンク帝国対策会議で提案しよう。なに、ぐずるものがいても順平君のさっきの勢いで怒鳴りつければ、収まるさ」と言った蓑田は笑う。
「しかし、アメリカとはすり合わせが要りますね」首相が平静にが言う。
「ええと、その会議は僕も出ます。事実上アメリカを説得すれば、話は大体のところはまとまるのでしょう?大体僕の印象では日本はアメリカには弱い。特にこわもてで来られると。しかし僕には通用しない。今回の話はアメリカが、日本が出てくるのを抑えにかかる可能性があります。また、かれらには爆弾つくりの場の提供を要求する必要がありますから」順平が言う。
それに、「うん、それはいいと思う。わしは大賛成だ」蓑田大臣が言い、結局そういうことに決まった。
諸国を集めての実務的な会議は1週間後に決まり、その準備に追われる中、大使を集めての会議から2日後にアメリカとのすり合わせの協議が行われた。
日本側は外務大臣及び外務官僚あわせて5人と順平で、アメリカ側は急きょ飛んできた国務長官と大使他5名である。
アメリカには日本案はすでに提示している。
アメリカ側女性国務長官が口を開く。
「国連を改革する必要は我々も感じており、検討しているところです。しかし、日本案はあまりにも過激すぎる。もっと時間をかけてやるべきだ。我々はこの案に賛成できない」
外務大臣の顔色が変わって口を開こうとするが、その前に「なにをいっているんだ。そういうのんきなことを言っているようでは、アメリカは全く事態を把握していないな」順平が冷静に過激なことを言う。
「何だ、君は、無礼な!」国務長官が怒りを見せる。日本側は明らかにビビッている。
「無礼とはなんだ。寝ぼけたことを言うためにわざわざアメリカから来たのか。事態を把握してないからしていないと言ったんだ。文句あるか。いつまでも、親分風を吹かすな」順平がなおも内容に比して極めて冷静に言い、さらに続ける。
「アメリカが協力するのが嫌ならいいよ。わかっているとおもうけど、アメリカがどうしようとも、僕がもっている知識がないと何もできないのだから。ほかの国はどうでるかな。僕がすべての技術を開示するといったら」
「はははは、アニー、君の負けだ。まさに彼はすべてのキー、オールマイティだから」アメリカ大使が無慈悲に笑う。
女性国務長官はがっくり肩を落として、下を向いて言う。「だから、この子が出てきているので嫌な予感がしたのよ。わかったわ、日本側の提案を飲みます。早速国連大使に命じて、すでに準備をしている工作を完結させるわ。それでいいのね?」
「もう一つ、アメリカで核爆弾を作ってほしい。自動工場の設計は粗方できている。400ギガトン400発、1ギガトン4万発、100メガトン4万発だ。自動工場で製作すれば大体費用は20億ドル程度だからそうたいしたものではない。費用も持ってほしい。何しろ世界一の経済大国だからね。情報データベースシステムおよび爆弾の自動倉庫と移送装置は地球防衛軍の管轄にするので牧原基地に設置する。
なお、今後日本、アメリカというような技術面の壁は作らないようにしたい。全地球として考えないと、銀河宇宙に伍していけない。さしあたって、宇宙船のジャンプ移動および超空間通信もまもなく実用化するが、その技術も供与する」順平は要求もするが、大盤振る舞いで報いる。
国務長官はにこにこして帰っていった。
後半に入りましたが、頑張って書いていきます。