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シリンク帝国への挑戦 2

強大なシリンク帝国とどう戦うか、実際の戦いの準備が始まります。

お伝えするのを忘れていましたが、X種族の探索1が第3章の開始になります。

従って、今はすでに3部に入っています。

単位を間違えました。ついコンピュータの用語で勘違いです。

メガの次はギガです。お詫びして訂正します。

 翌日、順平と牧村は麗奈と母親の朝比奈さよりを伴ってモノレスで地球に向かった。重力推進で軌道外にでて、空間に裂け目を作ることで地球の軌道付近に出現する。

 真珠市宇宙港から出発後8時間で牧原宇宙港に到着。


 特異な形状のモノリスの飛来に騒ぎになったが、着陸そのものは通常の通信を装って、順平が「重要な報告があって、訪問した」との申告にすんなり着陸許可は下りた。地球軌道にあるとき、すでに山戸理事長には連絡を取っていたので、順平一行が宇宙港のロビーに出たとき、山戸はやまと社の総監督の山科慎吾と一緒に待っていた。


「おお、順平君、やあ麗奈ちゃん。大きくなったね」山戸はにっこり笑う。


「山戸のおじちゃん。おひさしぶり」麗奈が山戸の前に行って頭を下げる。


 早速宇宙港のやまと社の会議室で協議に入る。

 まず、順平からリネン行きのいきさつ、及びラリムへの出会いさらにシリンク帝国の脅威が語られる。


「ふーむ、結局、大きな脅威であることは確かではあるが、実際の脅威、侵攻までの期間は不定ということだね。大地震みたいなもんだね」山戸理事長が言う。


「そうですね。言ってみれば、昔の人が自然災害に抱いていたような気持ちが我々の立場かもしれないですね」牧村が応じる。


「でも、ほおっておくとどんどん害がひどくなって、全く手に追えなくなる点は違っていると思うし。それにいま、このシリンク帝国のために苦しんでいる人たちを思うと」麗奈が言う。


「個人ベースでは気の毒とか、かわいそうとかは行動を起こす理由になりうるけれど、また自分にそうする力があればそうするけど、全体のことを考えるとね」と山戸がたしなめるように言う。


「実は、シリンク帝国が、地球と5つのいま見つかって植民を始めている植民惑星を発見して攻め寄せる確率を、ラリムの調査結果から計算したんですよ。

 その結果は、10年以内で2%、30年以内で25%、100年になると78%に跳ね上がります。しかも、我々の植民惑星も増えていくでしょうからさらに確率は上がります。そのうえ恐るべきことに、現状で彼らの5%の人口増加率で、100年後の現人口2000億のシリンク帝国のシリンク人の人口は131倍になるのですよ。30年後ですら4.3倍です。30年後では居住惑星も人口に比例するとすれば4倍として1200個です。戦闘宇宙艦も同じ割合で増えたとするともう手に負えないですね」


「それは―――――。うむ、地震より相当質が悪いな。しょうがないか」山戸がいうのを受けて、総監督の山科が聞く。

「それで、聞いた限りでは対策のしようがないように思うのですが、どういう策を考えているのですか?」


「基本的には“導くもの”ラリム頼りです。彼の持っている空間操作の技術によって、まず必要な情報、これは惑星の位置、諸元ですね。さらに戦闘艦のリアルな位置情報をデータベース化します。これによって爆弾を空間の壁を通して送り込んで破壊するというのが骨子です。また、問題なのはシリンク人が大部分居住している惑星として破壊対象の星のみでなく、それ以外の征服した惑星にいるシリンク人を排除するためには、現地人の抵抗組織がないと困るわけで、その情報も必要ですね。

 ハードとしては、そのリストにあるように、

 1)ラリムの助けでラーナを使って調査データベースシステムを構築する、

 2)惑星破壊用の100ギガトン爆弾を予備を入れて300個の惑星に対し400発、主力艦対象に1000メガトン爆弾を3万機の主力艦に4万発、100メガトン爆弾を小型戦闘艦その他3万機発に対し4万発の製作、

 3)爆弾の自動倉庫と一体化した移転装置テレポーター基地、

 これは出来ればの話ですが、

 4)残敵掃討用の艦隊、今のはくうん型の倍程度の大きさで1000機程度ほしいですね」


 順平が答えるが、山科が悲鳴をあげる。

「ええ!爆弾と艦艇の製造はやまと社の力を完全に超えていますよ」


「うーん、それは地球全体の力を合わせても大仕事だよ。不可能とは言えないが、何年かかるか。大体、艦艇だけでも1機200億としても20兆円、ちょっと無理だね。それに乗り組み員をどうするか」山戸も言う。


「うーん、まあそうですよね。でも、データベースシステムはどっちにしろ必要だし、そんなに費用は要しない、たぶん20億円以下なのでかかりましょう。爆弾は自動工場を作れば行けそうですね。たぶん工場に1千億、材料1千億また自動倉庫一体のテレポーター基地は、1千億はいかないと思う。

 爆弾は日本で作らない方がよさそうですね。まだうるさいのがいるもんな。ちなみに、この際はシリンク人の膨張をとめて、その力を殺ぐという目的で、絶滅が目的ではありませんので、戦闘艦は無くてもいいでしょう。ただ、現地の被征服民族と接触したり、残敵と戦うこともあるでしょうからある程度の戦闘艦は要りますね」順平がとりあえずの結論を出す。


「それで、これほどの話は、日本政府のみならず各国政府にしないわけにはいかないだろう。すこし、説得力のある説明がいるが、順平君の説明だけではちょっと弱いように思う」山戸が言う。


「それは大丈夫ですよ、“導くもの”ラリムの念話で説明してもらえば一発です」順平の言葉に、


 山戸も「うん、それだったら。では、政府にアポを取ってみる。」と山科にアポの指示をする。


 さらに、「ちなみに、今日はどこへ泊るの?」という。


「折角だから、江南市に言って大学に顔を出します。」順平がいうのに、「ええ!折角だから東京に行きたい!」と麗奈が叫ぶ。


「だけど、日本じゃ護衛も要るし、今日では無理だよ。明日行こうよ。必ず2泊はするから」そう言う順平に、麗奈が渋々答える。「うーん、わかった。明日必ずね」


「麗奈ちゃん、大学からは東京の官庁街まで飛行コミュータが飛んでいるから、1時間で着くよ」山戸がいうと、「へえ!便利になりましね」牧村が驚くのに、「うん、行き来は相当あるからね。公社が運営している」山戸が満足そうに言う。


 その日は、順平たち、牧村は残したままの元の家に泊まったが、牧村は山戸の自宅で久しぶりにゆっくり、語り合ったのであった。


 翌日は、皆、古巣ということで旧友たちに会ったりで大忙しであったが、順平、さより及び麗奈は午後一番で、一緒に東京に向かった。


 なお、日本政府が主催する秘密のヒアリングは2日後に、政府関係者、G7として、日本のほか、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアおよびカナダに加えロシアの参加をもって内閣府で行われることになった。


 その前の2日、麗奈は母さよりと東京中を巡って、護衛をへとへとにさせ大量の買い物をした。

 順平は、泊まったホテルのスイートにこもって、データベースシステムと爆弾の自動工場の設計である。これはラーナ(モノレスに積まれているラーナとはデータ通信でつながっている)のデータ検索や作図等の支援があり、必要なデータはモノレスのデータベースから提供を受けるので非常に早く進む。


 東京では、昔のような排ガスを出すような車は走っておらず、多くが電気自動車になっていて、5%程度が重力エンジンを積んだものになっている。

 これに車輪は着いているが単に着地時のクッションと安全対策のためで、走行時は30cmほど浮いて走る。機能的には、空を飛べるが、道路上では30cm程度浮いた滑走しか許されていないし、リミッターが着いていて実際に浮かない、飛行をするのだ。

 すなわち、3次元運動をする運転にはライセンスが必要であり、また飛べる範囲が厳密に決められている。基本的な飛行は、街のいたるところに飛行ゾーンという広場が設けられており、コミュータと呼ばれる重力エンジン車は鉛直に上昇して、一定の高度に達して初めて水平飛行に入る。

 垂直上昇の速さは時速で30km程度、水平飛行は500kmが限度になっている。降りるときは、降りたい飛行ゾーンをパネルで選ぶとその上空で重力エンジンによるブレーキにより停止し自動で下降に入る。飛行ゾーンでの上昇・下降は基本的に自動操作である。


 こうして、東京の空気は排ガスがなく大変きれいになり、近年交通機関の発達、及び通信機能の発達により都心部への集中に意味がなくなってきた結果、渋滞もおおいに和らいでいる。

 また、さよりが東京にいたときより人の洪水も減ってきているようだ。新やまとの開発は行われているが、まだ移住者は50万人を越えた程度で東京の人口に影響を与えるほどではないのだが。

 しかし、東京の繁華街は相変わらず華やかで、麗奈は夢中でショーウインドーをみつめ、あらゆる店に入りたがる。また、おしゃれなカフェテリアに座って道行くひとを眺めながら、パフェを食べる。


『こういう町並みができるまで、真珠市はだいぶ時間がいるわね』さよりは思う。


 また、暗くなってあるく街並みもネオンがきれいだ。前に比べ空を行きかうコミュータが目立つので余計華やかに見える。


 内閣府で会議が開かれた。

 コの字にテーブルが並べられた大きな部屋で、日本政府、アメリカ合衆国、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、カナダの小さな旗が立って日本が5名の他は各2名出席している。

 各国の席の前にはマイクが置かれているので座ったまま話をするものであるようだ。おのおの紹介があるが、外国の出席者の1名は大使である。日本は総理大臣と官房長官が出席している。

 

「それでは、現地に行って実際にいまから報告のある案件の目撃者であり当事者である吉川順平氏に説明をお願いしたします」司会の官僚が順平に話を振る。

 順平はマイクのスイッチを入れ英語で話始める。


「吉川順平です。私は報道があった通り、リネン人の住む星系と思われる恒星系まで行きました。以降はまだ報道はされていませんが、現地でリネン人とコミュニケーションを取ることに成功しました。

 その結果として、アーマル人虐殺の犯人がガキゾミ帝国という小規模な帝国であることを知りました。そのガキゾミ帝国の件は重要でないので資料をご覧ください。そうしてリネン人と接触するうちに彼らの恒星系の第6惑星の衛星に不思議な塔が立っているということを知り、高度な文明のものと判断しまして、すぐに現地に行き、塔に入る際に少しテストなどを受けて結果的にはそれほど時間を要さず中に入ることができました。

 そして、出会った存在が、紹介します。”導くもの”ラリムです」


 老人の姿のラリムが突然、順平の前に現れ、彼の説明が念話で始まる。皆インチキなどと思う余地はない。出席者は皆話に集中している。

 ラリムの長い、といっても20分程度の説明が終わる。


「Dr.牧村です。今の話でご理解を得たと思いますが、シリンク帝国の脅威はその例をみないほどの残虐性でありますが、最大のものがその巨大な人口を含む国力であります。であればこそ、50万トン級の主力艦を3万機も運用できるわけです。また、さらなる脅威は彼らの年間5%という人口増加率です。

 しかしながら、皆さんは現在地球から230光年という彼らの版図の端からの距離からして、出会う確率は低いと思われると思います。しかし、かれらの版図はラグビーボールのような形ですがその長径は2500光年あるのですよ。従って、その距離は彼らの版図のわずか1/10なのです。


 さらに、ラリムのデータによる計算の結果、私ども地球人の植民しようとしている星も入れて、10年後に彼らが侵攻してくる確率は2%ですが、30年後は25%、100年後には78%になります。100年後に彼らが攻め寄せてくる確率は非常に高いと思いませんか?

 しかも、今のシリンクの人口増加率から言えば100年後は131倍、26兆の人口です。いまでもそうですが、こうなるともう手におえません」


 牧村の説明にアメリカ大使が反論する。

「しかし、それだけの軍備を備えている相手を打ち負かす方法はないだろう。見つからないように隠れるしかないのではないかな?」


 今度は順平が答える。

「言われることは方法の一つです。そのことで、今言った発見され攻め込んで来られる確率を下げることは出来ます。しかし、彼らの人口増加率からして発見され、攻め込まれるのは時間の問題です。この場合、いずれかの将来に地球人類は彼の帝国の奴隷になるでしょう。場合によっては食料になるかもしれませんね」


 今度は日本政府の官房長官が聞く「銀河連合なるものがあり、かれらの実力が今のシリンク帝国をはるかに超えるというなら、彼らを動かして懲罰してもらえればどうかな」


 順平が答える。「銀河連合は国際連合のようなものです。失礼ですが、国際連合が主導して決定的な何かを成したということを知りません。増して、連合がその範囲外の問題に、加盟もしていない地球が要求・請願したとしても動くとは思えません。これはラリムの判断でもあります」


 順平は皆を見て再度口を開く。

「実は方法はありますし、ラリムの力を借りれば可能です。単純に言えば私たちは、いやラリムは好きなところにものを送り込める技術を持っています。これで、シリンク人の惑星、戦闘艦すべてに大型爆弾を送り込むのです。すなわち彼らを滅ぼすのです。それでも多くのシリンク人は生き残るでしょうが、そのパワーは失われます」


「2000億人を殺すーーーー」フランスの女性大使が言う。


「いいじゃないか。シリンクというのは人間ではなく、害虫だ。害虫は叩き潰すのが当然だ。賛成だ」大きく拍手しながらアメリカ大使が言う。

 結局その意見が結論になった。


この小説は3部作でありまして、

第1部、科学の力による日本の変革

第2部、植民惑星の開発

第3部、星間帝国との闘い、そして人類は宇宙へ

となっております。昨日考えました。

従って、いま最終の3部目ということで、たぶん半月程度で完結に至ると考えています。

それまで、よろしくお付き合いください。

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